石油と中東

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SF小説:「ナクバの東」(46)

2022-10-27 | 荒葉一也SF小説

(英語版)

(アラビア語版)

Part II:「エスニック・クレンザー(民族浄化剤)

 

46. ユダヤ国家の内なる敵(2)

 

そこでイスラエルの為政者は世界各地で今も貧困と差別に喘ぐユダヤ人たちを「祖国に呼び戻す」作戦を開始した。時には伝説上でユダヤ人の末裔とされる者をも対象とした。それが世に言う「ソロモン大作戦」である。

旧約聖書に名高いソロモン大王とシェバの女王の物語。紀元前980年、当時シェバと呼ばれていた現在のエチオピアを支配していた女王マケダははるばる三千キロ離れた古代イスラエル国王ソロモンのもとに朝貢した。マケダの美貌に魅かれたソロモンは策を弄して女王を籠絡し体を奪った。帰国した女王は一人の男の子を生んだ。その後シェバはエチオピア帝国と名前を変え帝国は20世紀末までアフリカの一角で生き永らえた。女王マケダの子孫はユダヤ人の末裔「失われた十二支族」の一つとして歴史の中でひっそりと暮らし続けたのである。

 

1974年にエチオピア革命が発生、最後の皇帝ハイレ・セラシェ一世が退位させられ軍事政権が権力を掌握した。しかし国情は安定せず1990年には地方軍閥が跋扈してエチオピアは四分五裂の状況となった。国民は貧困に喘ぎ、中でもユダヤの末裔たちは極貧状態に追い込まれた。

 

イスラエル政府にとってエチオピアのユダヤ人を救出することは神の意思であった。1991年5月、エチオピアの混乱に乗じイスラエルはジャンボジェット機をアジスアベバ空港に強行着陸させ、同朋をイスラエルに運んだ。作戦時間はわずか36時間。その間に救出した人数一万四千人。多数のジャンボジェット機を徴用し、イスラエルとエチオピアをピストン輸送する空前の大作戦であった。こうして今やイスラエルのアフリカ系ユダヤ人は六万人に増えたのである。

 

(続く)

 

荒葉一也

(From an ordinary citizen in the cloud)

前節まで:http://ocininitiative.maeda1.jp/EastOfNakbaJapanese.html

 


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