(解説)欧州の天然ガス輸入が来年以降激減する恐れがある。一つはウクライナを経由するロシアー欧州間の天然ガスパイプラインの契約が今年末で期限を迎えるが、ウクライナが更新を拒否しており、もしそうなればロシアから欧州向けのパイプラインはトルコ経由のみとなり(3本目のロシア―ドイツの北海ノルドラインは爆発事故で送ガス停止中)、ロシアからの輸入ガスの半量が無くなることになる。
また、ロシア産天然ガスの代替輸入先としてカタールのLNG輸入を拡大しているが、EU側が人権や環境への対策としてデューデリジェンス指令(CSDDD)を制定、対象企業に巨額の罰金を課そうとしており、これに対してカタールが猛反発していることである。
ここではこの二つの問題を取り上げたニュース2件を紹介する。
その1:露ノヴァク副首相(兼エネルギー相)の発言
(原題) Russian pipeline gas and LNG exports to Europe up 18-20% in 2024, Novak says
2024/12/26 Khaleej Times (ロイター電)
ロシアのアレクサンダー・ノヴァク副首相(エネルギー相兼任)は水曜日、天然ガスの今年の欧州諸国への総輸出量が昨年より18~20%増加しており、1月から11月までのパイプラインガスと液化天然ガス(LNG)の供給量は500億立方メートルを超えたと述べている。さらに「ガスは環境に優しい製品であるため、あらゆる声明や制裁圧力にもかかわらず需要がある。そして、ロシアのガスは、物流と価格の両面で最もコスト効率が高い」と、国営テレビ局ロシア24で述べた。
因みに、ウクライナ紛争によりロシアと西側諸国の関係が急激に悪化したため、2023年のロシアのパイプラインガスの欧州への供給量は55.6%減少し283億立方メートルであった。ロイター通信が国営ガス大手ガスプロムの1日当たりの輸出量と欧州のガスパイプライン事業者の統計を基に算出したところ、供給量は今年320億立方メートル前後に回復すると見込まれている。
しかし、ロシアのパイプラインによる欧州へのガス輸出は深刻な課題に直面している。ロシア-ウクライナ間の5年間のガス輸送契約が今年末に期限切れとなり、ウクライナは契約を更新しないと表明しているためである。ロシアから欧州へのガスの約半分はウクライナルート経由で流れている。残りは黒海底のトルコストリームパイプラインを通じて供給されている。
ノヴァク副首相は、ロシアは複数のルートで欧州にガスを供給する用意があり、ウクライナと欧州はロシアのガス輸送について合意すべきだと改めて述べた。「欧州諸国はウクライナのガスルートに関心を持っているが、これまでのところ問題は解決していない。しかし、これは主に欧州連合とウクライナの間でそのような供給の可能性について合意するかどうかにかかっている」とノヴァク氏は述べた。一方、ロシが海上輸送するLNGの供給は増加しており、その輸出量の約半分を欧州が引き受けている。
EUはロシア産LNGの購入をすぐに停止する予定はないが、ノルウェー、米国、カタールからの輸入増加を受け、2027年までにロシア産ガスからの離脱を目指すとしている。ノヴァク氏は、ロシアの2024年のLNG輸出量は約3300万トンと、昨年の供給量3290万トンと同程度になるとみている。
(続く)
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