ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

DSRC/ETC問題のサマリー

2005年01月12日 | ITS
このブログも過去ログが膨大になってきており、所々でサマリーを入れた方が読みやすいと思い、まずはDSRC/ETC問題についてまとめてみたい。

そもそも我が国のETCは、構想段階で問題があったと思う。
セキュリティーを厳しくするため、車載器と車両情報のマッチングを行い、さらに料金収受を確実にするため、入金忘れの恐れがあるICキャッシュカードではなくクレジットカードを採用した。そして、信頼性と拡張性を考えて高速大容量であるDSRC技術を導入した。

その結果、装着にはセットアップが必要で、かつ専用クレジットカードを作らなくてはならない。さらに立ち上がりは車載器の価格が高く、まさに普及の三重苦状態であった。
それもあり、なかなか立ち上がらないETC市場に対して国交省は継続的にインセンティブを打たなくてはならず、これはいまだにやめることが出来ない。

まあ、そうはいっても、一旦その仕様で始めてしまったことは仕方がない。最近は車載器の価格もこなれ、インセンティブの効果もあって普及は加速してきている。

しかし、ここから先に闇がある。
国交省は拡張性を考えてオーバースペックとも言われているDSRCを採用した。だから、拡張することが彼らの命題になっている。マーケットが必要としているか否かではなく、あたかも、全国に新幹線を敷設するということが目的となっているかのように。
そこには、ここまで一緒にやってきたETC関連メーカーとの関係もあると思う。

その拡張とは大きく分けて二つ。路車間通信と、商業サービス利用である。

路車間通信はITS・AHSと絡んで、安全性向上を目指している。もっとも一般的に言われているアプリケーションはカーブの先の事故・渋滞をその直前のトラフィックに通知する機能だ。これを実現するためには、路側に高価なDSRC通信機を設置する必要がある。
しかし、筆者はなぜそれをわざわざ通信で伝えなくてはいけないか、理解できない。電光警告板なら全員とコミュニケーション出来る。通信技術をつかわなくても、今すぐ出来る安全向上策のはずだ。

また、商業サービスは駐車場のノンストップ通過、ガソリンスタンドやドライブスルーのキャッシュレス決済であるが、筆者は駐車場以外全く可能性がないこと、駐車場も事業性という意味では結構ハードルが高いことを指摘している。

前者は公共投資であり、税金・通行料でまかなわれる。当然、世論の目は厳しい。それをかわしながら計画を進めるため、国交省は「ITSは巨大なマーケットを形成し、経済活性化に貢献する」と言い続けている。それが12兆円とか40兆円とか、資料を見るたびに数値が異なるが何故か必ず「兆」という単位が使われている経済波及効果に現れている。
この経済波及効果を提示し、民間企業の商業サービス参入を促進しようとしている。

しかし、12兆円ということは国民一人あたり10万円。一家4人家族なら、家計に対して40万円である。そんな金額がITSで消費、もしくは税負担されるのかと考えると、この金額がいかに非現実的かよくわかる。

そして実はこの試算金額の殆どはETCによる高速料金収受額が占めており、全く経済波及効果と無縁なものであることを過去ログで指摘している。