少し前のことだが、接触事故を起こしたことがある。
私は片側3車線の国道で真ん中を走っていた。追い越し車線に速度を落として左にウインカーを出しているメルセデスがいるのはわかっていたのだが、まさか出てくるとは思わなかった。
普通、前方に合図を出している車がいれば譲るのだが、速度差がありすぎて通常の判断ではあえて減速してまで譲らないような状況だった、といえばなんとなくわかっていただけるだろうか。
先方のドライバーはかつて「くいしん坊万才!」に出ていた初老の俳優だった。
私の車はリヤバンパーに擦り傷が入っていたが、コンパウンドで目立たなくなると判断し、修理不要を申し出た。メルセデスはフロントパンパーがかなり変形していたが、私には関係ない。
しかし、結局俳優からは謝罪もなければ、私が自車の修理を不問にすることへの感謝の言葉もなかった。一般にはきわめて紳士的なイメージの強い俳優であり意外だったのだが、もしかしたら自分には過失がないと思っていたのかもしれない。
私は直進、先方は車線変更という状況で私の右リヤバンパーと先方の左フロントバンパーが接触したわけであり、どちらがどちらにぶつかったかは議論の余地がないのだが。
死角に入っていたのかもしれないが、やはり年齢に伴って状況判断に遅れがでることは否めないだろう。
最近、斜め後方に車両がいることをドライバーに伝えるブラインドスポット検知という装備が欧州車を中心に始まっている。
団塊世代の老齢化がこれから問題となるわが国でも、こうした安全装備の充実はきわめて重要だろう。
いつ完成するかわからない車車間通信よりも、レーダー・センサー技術によるスタンドアロンの運転支援を進めるのが先だと思う。
それ以上に最近疑問に思うのだけど、カーナビ表示がシニアドライバーにとって果たして安全なのか、ということだ。
センターパネルへの視線移動は結構大きい。そして、交差点略図などに対する理解速度は年齢とともに低下する。
理想をいえば、実際にみえている前方景色に薄くレイヤーをかぶせるように方向指示がでるのが最も安全だろう。
その前段階として、交差点略図のヘッドアップディスプレイ化があるとおもう。
運転視界にかかるヘッドアップディスプレイは現在の保安基準では認められていないが、法規制も含めて官民で検討するべきだ。