短髪がここ数年の石沢雅史のトレードマークになっている。
長いところでも2.5cmほどで、中途半端な角刈りといったありさま。
短髪に変えた当時、会社の上司や仲のいい同僚、友人などには
「職人」「板前」などと呼ばれた。
石沢はそんな他者の反応を面白がっていたし、
鏡で眺める自分の姿にも満足していた。
少しでも髪が伸びると、ムチでおわれた競走馬のように急いで床屋へ赴くくらいだった。
なぜ、そんなに気に入っているかというと、
それは、その髪型が、内に宿すかわいた欲望とは対照的な、
地味でストイックな印象を見る者に与えたからだった。
いわば、仮面の役割をその髪型は果たしていたのだ。
だが、その仮面の地味さゆえなのか、
親戚の3歳になる男の子には軽く見られてしまっている。
彼には「まさし」と名前を呼び捨てにされている。
それどころか、その子のとってほしいものが石沢の近くにあるときには、
石沢に向かって「とってください」「とって」ではなく、
「ウー!」と手を前に伸ばし、どすのきいた声でうながすのだった。
そのあたり、石沢はちょっとはがゆく思っている。
「なんだその言い方は。なんなら自分でとればいいじゃないか」
だが、親戚の子だし簡単に叱っていいものか彼は迷い続けるのであった。
そのような石沢雅史は少しかわゆく見える。
長いところでも2.5cmほどで、中途半端な角刈りといったありさま。
短髪に変えた当時、会社の上司や仲のいい同僚、友人などには
「職人」「板前」などと呼ばれた。
石沢はそんな他者の反応を面白がっていたし、
鏡で眺める自分の姿にも満足していた。
少しでも髪が伸びると、ムチでおわれた競走馬のように急いで床屋へ赴くくらいだった。
なぜ、そんなに気に入っているかというと、
それは、その髪型が、内に宿すかわいた欲望とは対照的な、
地味でストイックな印象を見る者に与えたからだった。
いわば、仮面の役割をその髪型は果たしていたのだ。
だが、その仮面の地味さゆえなのか、
親戚の3歳になる男の子には軽く見られてしまっている。
彼には「まさし」と名前を呼び捨てにされている。
それどころか、その子のとってほしいものが石沢の近くにあるときには、
石沢に向かって「とってください」「とって」ではなく、
「ウー!」と手を前に伸ばし、どすのきいた声でうながすのだった。
そのあたり、石沢はちょっとはがゆく思っている。
「なんだその言い方は。なんなら自分でとればいいじゃないか」
だが、親戚の子だし簡単に叱っていいものか彼は迷い続けるのであった。
そのような石沢雅史は少しかわゆく見える。