Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『陽気なギャングが地球を回す』

2010-10-13 22:56:55 | 読書。
読書。
『陽気なギャングが地球を回す』 伊坂幸太郎
を読んだ。

伊坂さんの作品を読むのはこれで3つ目です。
面白いし読みやすい。

会話が洒脱。文章がこなれている。
展開がよどみない。ストーリー・伏線を計算されつくしている。

今はどうなのかはわかりませんが、解説を読むと、この初期の頃の伊坂さんは
すごく時間をかけて、練って練って、
書き直して書き直して、一つの作品を仕上げるそうです。

天才が努力したらかなわない…というのは、
漫画『YAWARA!』の主人公に対する誰かのセリフでしたが、
この伊坂さんの姿勢っていうものは、どうなんだろう、
自分は大したことが無いから出来うる限りのことをし尽くさねば
及第点をもらえる作品は産みだせない、って考えてらっしゃるのだろうかなぁ、
なんて、相当に失礼ながらも想像してみました。

これまでに読んだ『ラッシュライフ』『オーデュボンの祈り』もそうでしたが、
やるだけことをやっているなぁっていう印象を強く感じるんです。
考えて、考え直して、構築し直して、みたいなことを鉄の意思でやっている。
なのに、軽妙な文体、会話文は損なわれず、機知にとんだ一文はキラリと光っている。
石頭じゃないなーこの人はってわかりますよね。
石頭じゃなくても、ゲルマン民族のごときプッシュ力は発揮できるものなのだなぁ。

作品の面白さはそれこそ、拍手を送りたいくらい素晴らしいものなのですが、
この全霊を傾けるスタンスってものが、また気持ち良いじゃないですか。
伊坂さんの作品が多く読まれる理由の一つに、この愚直さってあると思いますよ。
すっきりとした完成の仕方に特にその愚直さを感じますね。
とはいえ、まだ初期の作品しか知りませんので、これからいろいろ読んでいって
どう感じ方が変わるか、どういった作品に出会えるかがすごく楽しみです。

さて、まるでおまけになってしまった今作の感想です。
銀行強盗をする4人組が主人公です。
いわゆる「ギャング」と違って、しゃれっ気があってユーモアがあって
けんかっ早くなくて、それなりに真剣なのが彼らでした。
こういう友達がいたら楽しいだろうな、そんな気持ちにもなりました。
また、説得力のあるアフォリズムが各所に出現します。
寸言っていうんですかね、そういうのが読んでいて考えさせられますね。
この本にも引用されたりネタにされたりしていますが、
ドストエフスキーもその作品に格言めいたアフォリズムがそこかしこに
見受けられますよね。なかなかそういう言葉を生産し続けるのは容易じゃないと思います。
いや、言葉のプロだから、簡単にでてくるものなのかなぁ。
謎っていえば謎かな。そのへんのところ、何かの小説の解説で開示されていないかな。

とにかく、面白かった、と。
娯楽中の娯楽っていう感じの作品だったかな。

Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする