Fish On The Boat

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『イチロー・インタヴューズ』

2010-10-20 23:26:34 | 読書。
読書。
『イチロー・インタヴューズ』 石田雄太
を読んだ。

2000年10月13日のオリックスでの最終戦から始まる、
野球選手・イチローの、メジャーリーグを歩んだ10年の記録を
本人の言葉を軸として綴られた本です。
ほぼ、雑誌『Number』から、ときどき『文芸春秋』からの記事を
編集して作られています。

面白い本でした。
メジャーに行っても、つねに三割を打ち、200本安打を越えるイチロー選手。
そんな成績の中でも、波があります。262本安打の世界新記録を達成したシーズンもあれば、
200本をやっと達成したシーズンもある。
数字からだと、その成績はただの揺らぎにしか見えないのですが、
この本を読むと、そこに血の通ったイチロー選手の向上と苦悩と戦いが見えてきます。
常に向上していきながら、壁にぶち当たっているのです。自分をUpdateしながら、
さらにまた不具合がみつかったりする。
だから、同じことをし続けて、成績に揺らぎがあるというわけではないことがわかります。
日本で7年連続首位打者を達成し、メジャーに行ってから10年連続でさらに記録を更新中の年間200安打という
記録を成し遂げているということで、「イチローは変わらない」という印象を持ちがちですが、
「イチローは変わり続けている」のが本当のところなんですねぇ。
そういうのを知っておくことで、たとえば何か数字を見た時に、その裏には何かがあるのだという思考が
働く契機になるかもしれないですし、そういうイメージ力って大切な気もします。

そして、「期待」というものに、
僕は少しネガティブなイメージを持っていたのですけれど、
イチローさんのようなスポーツ選手になると、
そういう他人からの期待に応えることもいとわないところがありますね。
僕なんかだと、「えぇい、期待するな、萎える」という気持ちも少しあるんですよね。
だけど、そういうのがないですよねぇ、実はあるのかもしれないけど。

期待の種類にもよるのかもしれません。
「ホームランを打って欲しい」「年間200安打を達成してほしい」
「大臣になって欲しい」「地区大会で優勝してほしい」などなど
こういった種類の期待は、大きな目標と重なっていたりします。
「私のことを好きになって欲しい」「もう少し身体を鍛えて筋肉質になってほしい」
「髪を伸ばしてほしい」「無口でいて欲しい」
こういうのは価値観の押しつけの範囲内で終わってしまう期待です。
期待される側と利害が一致しません。
「一塁を蹴って二塁へ向かう時に手をぐるぐる回してほしい」「打席に立つときにカメラ目線を送って欲しい」
とか野球に例えるとそんな感じの、どうしようもない「期待」になるでしょうね。
でも、人はこういう種類の期待を求めるものなんです。
例えば「KY」なんていう「空気を読めない」という悪口も、
空気を読めという一方的な期待を裏切られたことによる愚痴を正当化したような程度のもの
なんじゃないでしょうか。
話が逸れました。

また、満足感についての発言には興味深いものがありました。
イチロー選手は、満足感を否定しないそうです。
一方で、作家の村上龍さんや中田英寿さんは、満足しないことを一流の条件に掲げていたと思います。
こうやって、意見が割れると、「こちら立てればあちらが立たぬ」ことになります。
ただ、僕が思うに、満足感を持つことが大事なのは、勝負師の心のあり方に通じるんですよね。
より勝負師に近いのが、中田英寿さんや村上龍さんではなくてイチローさんなんじゃないでしょうか。
なぜ、勝負師という名前がでてきたかといえば、ギャンブルをするときに、満足感が必要なのを思い出したからです。
いつまでも満足せずに、賭け続けるのは野暮です。それは、負けるまでやるっていうことで、
最終的に必ず負けます。勝ったところで満足してきりあげることが、勝負師には必要になるのです。
イチローさんの発言には、この他にも、ギャンブルに通じるものがあったように、僕なんかには読めました。
まぁ、ずっと満足し続けるとバカをみますから、一時的に満足することは良いことだ、と
イチロー選手的には解釈できます。

それと、チームのためにプレーするか、自分のためにプレーするかという二者択一の
どちらをイチロー選手は選んでいるかというところも興味深い所でしたし、
僕も真似しようと思いましたね。真似するというか、それでいいんですよねーという感じ。
どっちをイチロー選手が選んでいるかは、この本を読んで回答を得てください。
とかって、Webで検索すればでてくるかなー、ははは。

ほんと、こんなすごい選手が同時代に活躍しているのって、ものすごいことですよ。
イチローさんとは友達になってみたいけど、僕がもっとしっかりしないと話にならないな
なんて空想しました。
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