Fish On The Boat

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『世界一役に立たない発明集』

2014-08-30 00:06:14 | 読書。
読書。
『世界一役に立たない発明集』 アダム・ハート=デイヴィス
を読んだ。

イギリスのヴィクトリア朝時代(1837~1901年頃を言うらしい)を中心に、
欧米の失敗発明を集めた本。

無名の発明家ばかりが出てくるのかと思いきや、
リリエンタールやダンロップやウィルキンソンという、
名前ならなんとなく聞いたことがあるような人々もたまに出てきます。
しかし、製鉄王ウィルキンソンの名前なんか、
僕はどうして知っているんだろう、謎です…。

面白いのは、数々の失敗作を通して感じられる、
当時の人々の情熱ですね。
名誉欲なのか、金銭欲なのか、趣味なのか、生きがいなのか、
それぞれの人によって違うとは思いますが、
とにかく、奇天烈でもなんでも、懸命に夢想したようなものがあったり、
目の付けどころと発想は良さげなのに、あとひと押しが足りないだとか、
ちょっと抜けてる部分があるだとか、あるんですよね。
その頃の時代に比べると現代って洗練されていて、
失敗してもその理由には納得させられるものがある、
というパターンが多いですが、
当時の失敗には、まだ科学の水準だとかが低いために自由だったこともあり、
そんな方向へ考えや発想をすすめるのかい!と
今の人ならツッコミたくなるような発明(特許取得)をしている。
ただ、そこが、豊かさとも言えます。
現代人はツッコミを恐れていて不自由な時代を過ごしているのかもしれない。
それに比べて、この失敗の人間臭さ、そしてその人間臭さの中から生まれた
いろいろな成功が現代の礎になっていたりもするでしょう。

縛られていない情熱と発想というものが、
自由に翼を広げていた時代の可笑しさを知れるのがこの本。
いやいや、可笑しさとともに、いとおしさも感じた方がいいのかもしれない。
こういう、ときに昔の人々のマヌケさを売りにする本だからこそ、
冷笑的には読むべきではないです。
まぁ、冷笑的に本を読まない、というのは村上春樹さんも言っていましたし、
どんな本にも当てはまるものですが、特にこの本はそういう感覚では
読んではいけないです。

けっこう、淡々とした文章なので、
その淡々とした文体ばかりを気にしていると面白くないかもしれないですが、
内容に目を向けて、発明家の人々の気持ちを想像しながら読むと
面白いと思います。



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