イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「半島を出よ 上/下」 読了

2011年10月11日 | Weblog
村上龍 「半島を出よ 上/下」 読了

初版は2005年、北朝鮮の拉致家族が帰国して、その子供達が帰国した翌年だったから日本中が北の帝国に対して恐怖し、注目していた頃だったと思う。
面白そうな本だと思っていたが値段が値段だし、特に村上龍が好きなわけでもないし、文庫本が出たときも買ってみようかと思いつつ買わないままになっていた。
しかし、とうとう、古本屋さんで、なんと1冊180円という破格の値段で手に入れた。


物語の始まりは2011年4月1日。エイプリールフールのつもりなのか、4月1日だ。
福岡に北朝鮮のコマンド9人が上陸する。前代未聞の事件に右往左往する政府はくしくも2011年の日本政府と重なる。未曾有の大天災に何もすることができずに右往左往。偶然にも2011年にこの本を読んで危機管理という言葉はこの国には本当になかったと空想が現実になってしまったとまずは驚いてしまった。それを看破していた村上龍は天才だ。

危機管理能力がないのは政府だけではなくって、JRもそうだし、どこかの電力会社もそうだし、わが社もそうだ。顧客第一主義なんて言っておきながら本当に顧客の姿が見えている人は何人いるのだろう。「君らはお互いの考えていることがちょっとずれているのと違うか?」という上司は会議やミーティングという言葉を持ち合わせていないようで、人が集まって話すことを極端に嫌う。そんなことではコンセンサスが得られないのは当然だと思わないのか。会議が機能しないのは専制政治だ。それでは北の帝国と同じではないのだろうか。第三者割当増資と言いながら000億円も借金をしてもどうも社内には危機感がない。という僕も危機感を募らせることがなく、差し迫った困難や危機から逃れるための安直な言い訳を探しているのだ。

対してこの物語のヒーロー達は世間から蔑まれたアウトローでありながら自分が納得した生き方の集大成として大作戦を決行する。
村上龍は「13歳のハローワーク」というベストセラーを書いたが、最終的にはこの物語も、人は自分の矜持は何なのかということを探すために生きてゆかなければならないと訴えているのだろうなと思うのである。

しかし、福岡ドームというのはガメラがやってきては壊され、コマンドがやってきては壊され、なんとも不遇な建物だ。
それでもフランチャイズのホークスは2011年もリーグ優勝と無敵の球団で、大阪ドームがフランチャイズの球団とは大違いなのだ。
コメント (5)
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