イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「釣魚雑筆」読了

2016年03月03日 | 2016読書
S.T. アクサーコフ / 貝沼 一郎 訳 「釣魚雑筆」読了

著者はロシアではかなり有名な作家でゴーゴリーやツルゲーネフとも交流があった貴族らしい。
本書はロシア語で書かれた本格的な釣りに関する書物だということなので、さしずめロシア版“釣魚大全”というところだろうか。

170年前の釣り具、ロシアの魚の話が中心で、表現力というのは訳者の訳し方にもよるのだろうが、僕は師の文章を基準にしてしまっているからなのかもしれないがそれほど文学的ではないように思う。むしろ情景や情報を忠実に伝えようと努力しているようだ。それほど釣りには精通しているようでもないようだが、釣りをとおして見る自然への愛情は序の章にあふれ出ている。
この本の圧巻はこの章にあるようだ。
「自然の美に無関心な人はまずないが、ある人(これは大多数の都市に住む人たちを指しているのであろう。)たちはそれをただの書き割りを愛でるような感情しか持たない。・・・・・彼らは何にもわからないのだ!」と切り捨てている。また、「彼らは、わが身の毎日の変わりばえのない仕事のことを考え、家路へと、おのが汚い淀みの中へと、填っほくて息苦しい都会の空気の中へと、自宅のバルコニーやテラスへと、その貧弱な庭の腐った池の彼らにとっては馥郁たる匂いをかぎに、また昼の太陽に焼かれた舗道の夕べのほてりを吸うべく急ぐのだ……」と手厳しい追い打ちをかける。ここの部分だけは文体が違うかのようなので相当な憤りと嘆きを表現していようだ。
170年前、すでにこんなに疲れ切った人々がたくさん居たいうのもなんとも悲しい。ロシア革命へと続いてゆく階級社会の閉塞感がそうさせるのか、産業革命への道を歩みつつあるヨーロッパが自然を蝕んでいく過程で人と自然の隔たりが増していったのか。

時代は繰り返し今の時代も同じようなものだ。釣りを通して朝焼けの美しさを美しいと素直に感じることができるこの身がありがたい。会社の不毛な指示やわけのわからないプレッシャー、やりがいのなさ、これは自分のモチベーションの低さが原因でもあるのだが、その低さと引き換えにこんな感受性を得られているのならそれはそれでいいのではないだろうか。特に貧弱な庭の腐った池の会社の社員にとってはこんな感受性が必要なのだ。


こんなことを愚痴っていても仕方がない。
せっかく釣りに関する本を読んだのだから当時の釣り具事情を抜粋しておこう。
竹が生育しないロシアでは胡桃や白樺の枝で竿を作っていたらしい。ロシア産の芦を繋いで穂先にクジラのひげを使った竿もあったらしい。170年前というと日本では漆を塗った工芸品のような和竿が普通に作られていた時代だからこんなものを当時のロシア人が見たら目を剥いてしまうだろう。サイズは大、中、小といたってシンプル。
糸は馬の毛やインド産の植物繊維というのでこれは当時の日本と変わらないようだが、輸入されたものは高価であると書いてあることろをみると本テグスなんかは国産では作れなかったのだろう。
オモリは銃弾や散弾を使っていたらしい。鉤についてはあまり触れられていない。当時の鉤とはどんなものだったのだろう。

どちらにしても自分で作れるものは作り、利用できるものは利用するというのが貴族であってもそれが普通だったようだ。そしてシンプルで種類も少ない。今のように専用タックルなんてものはほとんどなかったのだ。
“知ることの苦しみ”という言葉があるが、仕掛けが増えるたびにあれこれ迷ってしまう。最近、僕は釣具屋に行っても何を買っていいのかがわからないのだ。そして行き詰るところ、釣れる時というのはシンプル極まりない仕掛けが一番というのは今でも昔でも変わらないようだ。


僕もこの時代に倣っているわけではないが、作れるものは自分で作りたい主義だ。
今も新しい竿を作っている。同僚と釣りに行くために作り始めた竿であるが、残念ながらそれには間に合わなかった。まあ、いつかそんなチャンスもめぐってくるかもしれないのでゆっくり仕上げてゆきたいと思うのだ。

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加太沖釣行

2016年03月03日 | 2016釣り
場所:加太沖
条件:長潮 11:52干潮
潮流:6:25転流 9:15 下り1.5ノット最強
釣果:真鯛 1匹 ガシラ 2匹

今日は潮はあまりよくないがすごく天気がよくなるようだ。それに帝国軍宮殿では雛流しの神事が行われるらしくそれを沖から眺めてみようと考えての出撃だ。

朝、ゆっくりしていると出港が明るくなってしまっていた。夜明けがどんどん早くなってくる。
一文字を通過したときには朝日が昇ってしまっていた。



まあ、今日の潮ではこれくらいの時間で十分なのだが・・。

田倉崎を過ぎ、どこに行こうかと考えていると後ろから追い越していったマリーナシティから出ている乗合船がいつものテッパンポイントに停船した。ここでも釣れるのかと思いコバンザメ釣法を開始。
しかし釣れない。下りの定番、コイズキ方向を見てみるとたくさんの船が集合している。やはり下りの潮ではコイズキだと移動。しばらくここで釣りを続けているといくつかの帝国軍艦船がコマサキ方面に全速で移動してゆく。向こうにも船団ができつつあるので僕も移動。



しかし、こっちでも釣れない。何度か下っては上りを繰り返しているといつの間にか帝国軍の艦数が減っている。再びコイズキの船団が大きくなっている。今日の艦隊運動は忙しい。
島に近いところから徐々に沖に場所を移しながら釣りを続け、何回目かの移動後、停泊しようとしたときに僕とほぼ同じ経路でやってきた帝国軍がいた。これは近すぎると思いすこし移動をするとまた近づいてくる。それもかなりの至近距離だ。また移動をするとまた近づいてくる。多分、これは近づいて来ているのではなくて追いかけられているのだ。大きな声で怒鳴っている。白兵戦を仕掛けられてはこちらには勝ち目がない。しかし、前回といい、今回といい、一歩間違うと大きな事故を招いてしまいそうな行為には腹が立つ。今回もカメラを取り出してロックオン。敵はカメラが怖いのか、レンズを向けた瞬間、こっちをにらむのをやめてしまった。



これはひとつの戦法としてはちょっといい感じなのかもしれない。
これは勝ったのかもしれないと思いこの場所で仕掛けを下したが、連続して2艘の帝国軍に威嚇攻撃を受け残念ながら退散。このエリアは帝国軍にとってよほど重要な海域らしい。すなわち好ポイントということだろう。
そしてこの移動が幸運をもたらしてくれた。再び島のそばに移動して仕掛けを下している途中でアタリが出た。今日の唯一の獲物だ。毛糸に食ってきた。潮はそうとう緩るくなってしまった午前10時半ごろだった。

とりあえずボウズがなくなったので完全に潮が止まる前にガシラ釣りに変更。帝国軍の神事が始まるまでの約1時間の予定だ。しかし潮はほぼ止まっているような状態なのでこっちもアタリがない。それとも仕掛けの作り方が悪いのだろうか・・・。
正午になったので友ヶ島から神事の会場沖まで移動。人は集まっているがなかなかお雛様がやってこない。多分陸地での神事が行われていて海にやってくるのはかなり後になるのかもしれない。こっちも手持ち無沙汰で待っているのももどかしいので残念ながら撤退で今日の釣行を終了した。





人事異動があり、明日からは大阪に勤務となった。路線を4回乗り換えての約2時間の通勤時間となる。
地元での勤務はわずか1年10か月で終わってしまった。店長の小言を除けばかなり楽で楽しい職場であったが残念だ。人事異動というのは組織の活性化と個人の能力向上だと言われるが、通勤で疲れて目も見えなくなり腰も痛くて仕方がないこの身では行った先の活性化もできないだろうし能力向上といっても向上する伸びしろが残っていない。僕の人事異動はいつもこんない短く、管理職への昇格からは5回とも2年と持たずにどこかへ変わっている。今回も当たり前だが昇格もなく横滑りだけの異動なのだがどこへ行ってもよっぽど嫌われているらしい。なんだか主要な異動のあとの穴埋めのように思えて仕方がない。
発令を受けたあととりあえず元の職場に戻ると実質的な序列2位と目されている役員にどうしてだかばったり出くわしてしまった。まったく好感の持てない人だが一応挨拶をしてみるとスマホをいじりながら、「がんばれよ。」とひとことつぶやいてくれた。ああ、これが僕の今の立ち位置なのだと妙に納得した。

引継ぎを終え、荷物をすべて送り出した昨日、この事務所ではもう何もすることがない。
お昼を少し過ぎた時刻だがこれから大阪の事務所に行っても無駄なことなので発作的に墓の谷に行こうと思い立った。勤務時間内だがおとといは休みで夕方までなにやらいろいろやっていたのだから大目に見てもらおう。
(こんなことばかりやっているのだからあちこち飛ばされるのは無理はないが、こんなことしかできないのだから仕方がない。)

原チャリで行けるところまで行きあとは徒歩で行者堂に向かった。



スーツを着たおっさんがこんな山道を歩いていると妙に意味深だが汗をかくこともなく目的地に到着。なんとか逃げきれることを願った。



帰り道、なんともむなしい道標に出会った。



雛は流され、僕も流され、結局、神事だなんだってきれいな言葉で言い換えているが、いらないものを捨てる口実ではないかとふと気が付いてしまったこの3日間であった。



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