今回は、トルコのイスタンブールからイラク北部のクルド人自治区アルビールに移動した日の話(その前振りはこちら)。
夕方16時50分の便に乗る予定だったので、朝はゆっくり10時頃に起きた(おそ)。チェックアウトの時間(11時)の少し前にフロントに行ったら猫がいた。
私が猫おばさんだと瞬時に察知したらしい。おりこうさん
ぐいぐい来た~(ちゅ~るあげた)
チェックアウトをしてスーツケースを預け、ホテルに近くにあるSIMとデジカメのバッテリー充電器を買った店に、充電のやり方をもう一度教えてもらいにいったら(ホテルでやってみたら出来なかったので)、前日の店員が教えてくれ、ついでに充電しておいてくれるというので、その間、付近のチャイハネでチャイを飲んだり、シリア人のファーストフード店でチキンシャワルマサンドをテイクアウトしたりした。
チャイハネのテーブルの周りを巡回する猫さん
小一時間してから、充電が済んだデジカメを受け取って、ホテルからスーツケースを引きとり、12時半にアクサライのメトロ駅前から空港バスに乗った。一時間足らずでイスタンブール空港に到着。早く着き過ぎた。
空港の入口にナザルボンジュウ(魔除け)がある
壁画風のかわいい装飾の店
私が乗るフライバグダードのカウンターは、フロアの一番端っこだった。さすがイラクのLCC、辺境っぽい。いや、イラクは文明発祥の地なんだが。古代文明が栄えた地域で、今大変そうな国って多いよね。
チェックインして出国審査をすませ、搭乗ゲート付近で待機しつつ、サンドイッチを食べ、ワインをちびちび飲んだ。ゆうべの飲み残しのワイン(残るように調整して飲んだ)を小さいペットボトルに詰め、100ml以下になるようにして持ち込んだのだ。備えあれば憂いなし。
フライバグダードのアルビール行きは、予定通りに離陸した。
フライバグダードの機体のデザイン、けっこうカッコイイよね
(↑これはネットから拝借した写真)
窓際の席だった
機内は満席に近かったが、私の隣りには誰も座らなかった。外国人枠?
聞こえてくる会話で判断するに、他の乗客はクルド人とアラブ人ばかりだったが、1人だけベビーシッターらしきアジア人のヒジャーブを被った女性がいて、家族連れの小さい男の子の世話をしていた。アラブ諸国では、よくインドネシア人やフィリピン人などのアジア人女性が、家政婦やベビーシッターとして住み込みで働いているのだ。虐待のケースも多いと聞くし、そうでなくても、住み込みで働くのは苦労が多そうだ。
機内誌
読んでみたら、冒頭にフライバグダード社の誕生の経緯や抱負などが書かれていて(民間航空会社、2017年2月営業開始)、イラクが2003年の米軍侵攻に始まる破壊と荒廃から再生して、輝かしい未来に向かって進んで行けるよう、同国初のLCCとして貢献するぞ!という意気込みと自負が感じられた。
しかし、旅の準備編でも書いたように、フライバグダードは2024年1月、イラン革命防衛隊および親イラン武装組織を支援したとの名目で米国に制裁を科されてしまい(会社側は全面的に否定しているが)、今は営業を一時停止しているようだ(参考)。米国に制裁を科されると、資産が凍結されたり、クレジットカード決済が出来なくなったりするから、致命傷なのでは…営業再開出来るのか?
機内での安全説明
軽食
パサパサの味のないチキンのほぐしたやつとピクルスを挟んだコッペパン、トルコ製のカップケーキ的な袋菓子、アルビール製の甘ったるい桃のジュース、水。カップケーキ以外は美味しくないが、LCCなのに機内食を出してくれるわけだから、文句を言う筋合いでもない。預入荷物も1個25キロまで無料だった。フライトの時間帯もいいし、トルコのLCCペガサス航空よりずっとお得だった。
食後のコーヒー
アルビールには約2時間半後、予定通り19時半頃に到着した。
アルビール空港の表示はクルド語(ソラニー方言)がメインで、英語・アラビア語併記
入国審査場
外国人の列に並んで、係員にパスポートを差し出したら、背後のブースでアライバルビザを買って来なさいと言われたので、戻ってそちらに行く。窓口にパスポートを出して、ビザ料金として用意したドル現金を取り出そうとしていたら、地位の高そうな気配の年配の女性に、ビザの手数料は現金不可で、VISAカードでしか支払えないと告げられる。
ええ~ネットで調べた情報では、ビザ料金はドル現金で払うはずだったのに~
私がそうぼやいたら、その女性は「去年までは現金で払えたけど、今年はVISAカードのみの取り扱いになったのよ」と説明し、早くVISAカードを出せと言いたげな顔で私を見た。そういうこともあるのか…幸い私のカードはVISAだったので問題はなかったが、マスターだったら入国できなかったかもしれない。運が良かったというべきか。
支払いを済まして、ビザのスタンプをしてもらい、再度入国審査の列に並ぶ。入国審査では、どこから来たかとは聞かれたが、アルビールでの滞在先は聞かれなかった。スタンプを押してもらって、あっさり終わり。
スーツケースを引き取ってから、2台並んでいたATMのひとつでイラクディナールを引き出そうとしたら、出来なかった。もう1台でも同じ結果だ。
ええ~、カード会社にブロックされたの~?イラクの銀行だから?それとも、別のATMだったら引き出せるのか?
とりあえず、1つだけあった銀行の窓口で50ドルを両替する。レシート下さいと言ったら、ないと言われた。ああ、イラク…
建物から出て、シャトルバスで空港の敷地の入口のチェックポイントと呼ばれるところに移動し、そこから空港タクシーに乗って市内に出た。空港タクシー以外の選択肢はないようだった。ネットで得た情報によると、アルビールの安宿街は旧市街のバザール近辺にあるとのことなので、空港タクシーの係員のおっちゃんにバザール方面に行くと告げると、25ドルだと言われた。高すぎるんじゃないだろうか。ぼられたかと思ったが、おっちゃんが持っていた料金表には、確かにそう書かれていた。
空港内のシャトルバスは無料
運転手の若者に、バザール周辺で安ホテルを探すから、その辺りに行ってほしいと告げたら、彼はグーグルマップを見ながら危なげに運転し、後ろの車にぶつかりそうになったりしつつ、無事にバザールの近くで下ろしてくれた。やれやれ…
バザールの周辺には、確かに小規模なホテルが多かった。とりあえず目に付いたところに入って値段を聞いて回り、3軒目の素泊まり1泊2万ディナールのところにした(現在のレートで2300円弱)。シャワー・トイレ、TV、エアコン、扇風機付き、Wi-Fiありだったが、トイレがトルコ式のしゃがんで使ってバケツの水で流すタイプで、紙もカゴもなかった。Wi-Fiもあって無きが如しだ。翌日には別のホテルに移ろうと思い、1泊分のみ払う。
この「ズフール・ホテル」(فندق الزهور)ズフール=flowersだから、フラワーホテルね。
ベッドがいくつか並んでいた。シングルルームはおそらく存在しない
シャワー・トイレルームは、ある意味で潔い空間
すでに21時半過ぎだったが、私にはもうひとつ、やらなければならない任務が残っていた。酒屋探しだ。
まずホテルの近くの屋台で、夕食用のハンバーガーを買う。
ハンバーガーをテイクアウトしてから、近辺を歩いて酒屋を探したが、酒の気配は全くなかった。イスラム圏の国で酒屋の場所を聞くのは、なるべく避けたいのだが、自力では見つけられそうもない。
それで、翌日移るためのホテルを探しつつ、そこのフロントで酒屋の場所を聞くという作戦に出た。何軒か聞いて回ったところ、良さげなホテルが1泊2万5千ディナールだったが、今は部屋がふさがってるから、明日また見に来てと言われた。明日の朝また訪れて、空きがなかったら別のホテルを探さねばならない。ざっと回った印象では、バザール近辺には一見安そうなホテルが多いが、実際にはそれほど安くなく、値段の割に設備がひどいようだった。やれやれ…
酒屋については、あるホテルで、8km離れたアイカワ地区にしかないと言われたが、別のホテルでも聞いてみたら、さほど遠くないところに一軒あって、フロントにいた若者がいつもそこでビールを買っているということだったので、場所を教えてもらった。歩いていけない距離ではないが、タクシーに乗った方がいい、2千ディナールしかしないと言われ、そうする。アルビールでの移動手段は主にタクシーだと聞いていたが、実際そんな感じだ。
若者に言われた通りに、第30ストリートのハワラト(?)モール付近でタクシーを降り、近くのお店の人や通行人に(信心深くなさそうな人相の人を選んで)質問しながら歩き回り、最終的に「文学者クラブ」(نادي الأدباء)の建物に辿り着いた。そこに酒があると近くの商店で言われたのだ。
文学者クラブの入口を警備していた軍人(にしか見えなかった)に、「ここでお酒が買えますか?」とおそるおそる聞いてみたら、彼は笑顔になって、「この奥で買えるよ!」と教えてくれた。同志か?
奥に進んでみたら、右手に緑の中庭みたいなところがあって、灯りのない薄闇の中で、男たちが飲食していた。これはきっと、居酒屋に違いない。
光り輝く空間を目指してさらに奥に進んだら、見覚えのある光景が…
おお~酒屋だ~
よかった、無事にたどり着けて…疲れているのにがんばって歩き回った甲斐があったというものだわい。
一番安いビールを下さいと頼むと(いつになったら逆のセリフが言えるのか)、イラク産の缶ビールが出てきた。1本2千ディナール。ハンバーガーと同じ値段だ(230円弱)、2本買った。
このアルビールの「文学者クラブ」でお酒を買いたい同志のために、名刺の写真を載せておこう。我ながら親切だ、ふふっ
(表)「文学者クラブにようこそ」って書いてある
(裏)例の中庭の居酒屋(たぶん)の宣伝と住所
ネット上の情報は見当たらなかったので、悪しからず…
帰りのタクシーを捕まえるのに手こずり、ホテルに戻ったら、もう夜中の12時近かった。ビールとワインの残りを飲んで、寝ることにする。
イラクビール「REEM」、普通に美味しかった。
なお、REEM(رِيم リーム)とは、アラビア語→アラビア語の辞書によると、「純白の羚羊(レイヨウ)」(الظَّبْيُ الخالِصُ البياض)だ。イラストでは黒いが。羚羊ビール、かわいいな~
エアコンが22度設定で寒かったが、リモコンがなかったので、毛布をかぶって寝た。夜中に停電があって、エアコンが止まったが、乾燥しているせいか、それほど暑くはならなかった。
(続く)