先日、しみちゃんを獣医さんに連れて行った。
しみちゃんは幼い頃から、よく目の上や耳の後ろ、アゴなどをしきりに引っ掻いてハゲを作っていた。
最近は治ってきたようだと安心していたら、
ある日思いっきりアゴを引っ掻いて、皮膚がズルむけになってしまった。
ピンク色のお肉が露出して、周りの毛は血まみれ。
かなりオソロシイ状態だ。
2、3日しても、治るどころか悪化していくばかり。
さすがに、これを放っておくわけにはいくまいよ。
というわけで、私はようやく重い腰をあげ、ペットショップで猫用のカバンを買ってきて準備を整えたのだ。
参考(アンマンのペットショップで猫用カバンを買う)
猫を獣医さんに連れて行くのは、今回が初めて。
どこがいいかネットで調べ、評判がよかったアブドゥーン地区の「PetCharm Clinic」を選んだ。
ここはムアイイドさんという、英語が話せる穏やかな青年獣医師が一人でやっていて、電話予約に応じて診療所を開ける形を取っている。
11日の土曜日の午後、まず「今から行きます」と電話で予告した。
それから、しみちゃんをとっ捕まえて、おニューの猫カバンにいれる。
はずだったのだが。
ぜんっぜん入ってくれない。
しみちゃんたら…カバンのデザインがダサいのがお気に召さなかったのか。
中にエサを入れておびき寄せようとしても、絶対に入ろうとせず、
首を伸ばして顔だけ突っ込んで食べる。
無理やり抱きかかえて突っ込んでも、一瞬で飛び出る。
こういうのは2人がかりでやったほうがいいんよね、一人暮らしって大変だわあ…
などとぼやきつつ、何回試したがダメだった。
結局連れて行くのは諦めて、一人で診療所を訪問した。
診療所はビルの2階にあり、予想よりも広くて清潔でピカピカしている。
さすがお金持ち地区アブドゥーンのペットクリニックという印象だ。
待っていてくれた先生に、しみちゃんの傷の写真を見せて事情を説明したら、
小さな白い錠剤をひとつ渡してくれた。
「これはトランキライザーです。
エサに混ぜて猫に食べさせたらぐったりおとなしくなるから、
簡単に運べますよ。明日の午後にでも来てください」
家に帰ったら、しみちゃんはひとりでベッドにだらだら寝そべっていた。
邪魔をしそうな母猫ふぁーちゃんは留守。
「明日の午後連れてきてください」と言われたが、今が毒を盛る(薬だろう)チャンスかも!
善は急げとばかりに、再度先生に電話をかけて予約した。
そしてしみちゃんを寝室に隔離し、缶フードに薬を埋め込んで、ドキドキしながら差し出した。
しみちゃんはあっさりそれを食べた。
10分ほどして、ややだるそうな様子を見せたが、
眠り込むことはなく、捕まえてカバンに入れようとしたら、ピョンと逃げるのだった。
…あかん。
これもう、薬の効果をあてにせず、無理やり連行するしかないと私は覚悟を決めた。
しばし思考した結果、今回はカバンではなく、ダンボールを利用することにした。
ダンボールの方が大きいし、フタを閉めやすいのだ。
そもそもあのカバンは、どう考えてもしみちゃんには小さすぎる。
「役に立たなさそうだな~、役に立たないかもな~」と思いつつ買ったが、やっぱり役に立たなかった。
あのペットショップの呪いにかかったのか、それとも私の安物買いの性分が災いしたのか…(後者だろう)
しみちゃんにエサを追加してあげ、満腹になって油断しているところを背後からはがいじめにして、
最終的に、ダンボールに閉じ込めることに成功した。
なんと、人間やればできるものだ。
私はダンボールを縦に抱え込み、フタ部分をお腹でブロックした状態で家を出て、
再びタクシーに乗ってペットクリニックへ向かった。
暗闇に閉じ込められた気の毒なしみちゃんは、「ああ~ん、あお~ん」と盛大に泣き叫んでいる。
タクシーの運ちゃんは、「猫をダンボールに入れるなんて…ちゃんとケージで運べば」といらぬおせっかいを焼く。
ああ私、心労で老けるかも…
診療所に足を踏み入れて扉を閉め、しみちゃんを解放してから、
私はカメラを家に忘れたことに気づいた。
痛恨である。
ムアイイド先生は、診療所内で逃げまくるしみちゃんを見て、
「なぜこの猫はこんなに元気なんだろう。薬を飲ませなかったんですか?」と不審な顔をした。
飲ませたのに効かなかったんです~
窓辺の隅っこで怯えているしみちゃんに、先生は忍者のようにしのび寄り、サクッと麻酔注射を打った。
15分ほども経過した後、しみちゃんはようやく意識を失った。
しみちゃんとアゴの傷
痛々しいけど微笑んでいるところがシュールでしょ