外国で一時的個人的無目的に暮らすということは

猫と酒とアルジャジーラな日々

ヨルダンの軍事・戦略専門家がみるイスラエル・ガザ情勢の行方とガザの猫動画

2023-10-14 11:01:00 | 中東ニュース

 

 

今回は珍しく中東ニュースがテーマ。現在のイスラエルとガザをめぐる情勢について書く。

 

10月7日、イスラエルの封鎖下のガザから、ハマースの軍事部門「カッサーム部隊」が境界を突破して周辺のイスラエル南部地域を襲撃し、100人を超える人質を取るという、前代未聞の事態が発生した。これに対する報復として、イスラエルはガザ地区を完全封鎖して水も食料も燃料も入らないようにすると宣言し、市街地の地区が丸ごと瓦礫の山になるような、かつてない激しさの空爆を続けている。13日の段階で、イスラエル側の死者は約1300人、ガザの死者は約1900人に達した。なお、ガザの人口は230万人を超えており、その約半数が子供である。

 

 

空爆で多くの建物が完全に倒壊

 

 

ガザの保健省によると、空爆の被害者の約6割が女性や子供(アラビア語の関連記事

 

 

 

この情勢に関しては、日本のメディアでも大きく取り上げられているようなので(うちにはテレビがないから観ていないが)、皆さんもよくご存じだと思うが、よく知らないという方は、NHKの解説記事がわかりやすいので、参考にしていただくといいと思う。

 

イスラエルにイスラム組織「ハマス」が大規模攻撃 何が起きた?

https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/qa/2023/10/10/35010.html

 

 

そもそも「パレスチナ問題」がよくわからない、という方もおられるかもしれないが、それを説明し出すと長くなるし、書く根性がないので、そちらもNHKの記事を参考にしていただければ幸いだ。

 

パレスチナ問題がわかる イスラエルとパレスチナ 対立のわけ

https://www.nhk.or.jp/minplus/0121/topic015.html

 

 

2006年にハマースが選挙で勝利し、その後ガザ地区を支配するに至り、イスラエルが封鎖を開始した時、私はイタリアのフィレンツェの下宿にいて、毎日テレビのニュースでガザの人々が苦しむ様子を観ていた。このイスラエルによるガザ封鎖開始、そしてレバノン侵攻のニュースの影響で、私の中でアラブ世界への関心が育ち、やがてフィレンツェ大学でアラビア語を勉強し、そこでシリア人の先生に出会い、やがてイタリアからシリアに移動することに決めたのだ。

 

2008年12月から2009年1月にかけてのイスラエルのガザ攻撃の時、私はシリアのダマスカスにいて、下宿の中庭にあるテレビでそのニュースをみていた。旧市街の路上にはイスラエルの国旗が描かれ、人々はそこを踏んで行き来していた。例年なら新年を祝う花火が上がるところだったが、ガザで多くの人々が犠牲になっていることを鑑み、祝賀イベントは自粛された。政治の道具として「パレスチナ支援」を前面に押し出すシリア政府をよく思っていない人々も、ガザの情勢に心を痛めていた。

 

シリアを2011年初めに出て、トルコとエジプトで数か月過ごした後、ターバ国境の検問所でイスラエルのセキュリティを突破して(8時間かかって)入国し、東エルサレムのパレスチナ人一家の住宅の一階を借りて3か月滞在した。その間、西岸地区の各地を訪れ、入植地建設に対する抗議デモに多少参加したりもした(一番後ろでビビりながら)。あの時に占領下で暮らすということはどういうことかを少しだけ学ぶことができたと思う。ガザには行ったことがないので、封鎖下の暮らしの苦しみを知ることはできなかったが。

 

2014年の夏、イスラエルがガザに地上侵攻した時、私はヨルダンのアンマンにいて、アパートのテレビでそのニュースをみていた。近所の商店などでも、テレビがあるところではずっとアルジャジーラを流していて、お店の人達が悲しそうに画面を見つめていた。ガザ地区からのロケット弾がエルサレムあたりに到達した時、それを遠くから見たヨルダンの人々は花火を打ち上げ、嬉しそうに祝っていた。私には彼らの気持ちがわかるような気がした。

 

ヨルダンから帰国した後も、仕事でアルジャジーラを視聴し続け、2021年のイスラエル・ガザ紛争の様子は自宅でインターネットのライブ中継をパソコンで見ていた。今はほぼ無職状態で時間があるので、ニュースの視聴だけではなく、SNSでも情勢を追っている。

 

 

(参考)2008~2020年のイスラエル・パレスチナ紛争での死傷者数の推移

 

 

 

長々と書いたが、これは前置きである(ええ~なが~)。本題は、アルジャジーラによく出演しているヨルダンの軍事・戦略専門家、ファーイズ・ドゥウェイリー氏(私の推し)によるイスラエルとガザをめぐる情勢についての分析の翻訳だ。2回分の話を1つにまとめ、要旨を箇条書きにした形で以下に載せる。

 

 

<ヨルダンの軍事・戦略専門家ファーイズ・ドゥウェイリー氏によるイスラエルとガザの情勢に関する分析>(要旨)

(イスラエルのガザへの地上侵攻関連)

イスラエルが激しい空爆を続け、未だ地上侵攻を始めていないのには、様々な理由が考えられるが、ガザに侵攻するだろうことは、あらゆるデータが示している。しかし、そのタイミングはわからないし、規模も不明だ。イスラエルの多くの研究機関は、3つのシナリオを想定している。1つ目はガザの再占領、2つ目はガザをいくつかの地域に分割することだ。3つ目は、ガザのイスラエルとの境界から一定の距離の範囲の農地を支配することだ。1と2はイスラエルによって非常に困難なので除外されるが、3は可能性がある。その際、境界からの距離は、捕虜交換の交渉に関係してくるだろう。

 

ガザの地下にはトンネルが張り巡らされており、地上の街の下に地下都市があるような状態だ。イスラエルはガザの境界付近の地域を支配することにより、中心部から境界の外に繋がるトンネルを遮断することを狙っているかもしれない。

 

 

(イスラエルの北方にあるレバノン南部のヒズボラ関連)

レバノンのヒズボラ(イランの支援を受けるシーア派組織)の戦力は、ガザの全武装勢力の戦力の合計の数倍あるが、イスラエルがレッドラインを超えない限り、全面戦争には入らないだろう。レッドラインは、衝突がカフル・シューバーからシェバ農場にかけての地域の外に広がることだ。同地域はイスラエルの占領下にあるが、レバノンもシリアも領有権を主張しているため、ヒズボラにとってグレーゾーンとなっている。しかし、イスラエルがなんらかの過ちを犯して、戦闘がレバノン南部の奥深くに至れば、ヒズボラは全面衝突に向かうだろう。

 

ヒズボラは、これまでのガザのイスラエルとの度重なる戦いに参加してこなかったし、今参加するとは思えない。イスラエルがガザへの地上侵攻を開始しても慎重な態度を維持し、レバノン南部が被害を受けた場合も、在レバノンのパレスチナ人の武装集団を通じて限定的に衝突する程度だろう。イランの決定があった場合を除いて。

 

ヒズボラのイスラエルとの対戦に関する決定権はイランの手にある。イランは状況を操る糸を完全掌握しようとしており、傘下のヒズボラ、イラクの武装集団、シリア、イエメンの武装集団の戦線の統一は目指さないだろう。イランの核合意に関わる場合や、イランが軍事的に攻撃された場合を除いて。

 

イランの支援を受けるイエメンのホウシー(フーシ)派は、イスラエル南部に届くミサイルや無人機を所有しているが、イスラエルに対してこれらを使用しないだろう。イランが直接攻撃を受けた時以外は。

 

イスラエルはパレスチナ内部やガザ・ヒズボラが統一戦線を張ることを恐れている。一方、レバノンは経済危機や社会的問題、(2022年10月末から)大統領の座が不在である等の政治問題で苦しんでおり、余裕がない状態だ。ヒズボラはそれを承知している。

 

米国は東地中海に空母を派遣したが、それはガザやヒズボラに対して使われることはないだろう。あれはイランをけん制するためのメッセージでしかない。(了)

 

 

(資料)

خبير عسكري وإستراتيجي: في هذه الحالات سيدخل حزب الله الحرب ضد إسرائيل

https://www.aljazeera.net/programs/2023/10/11/%D8%A7%D9%84%D9%84%D9%88%D8%A7%D8%A1-%D9%81%D8%A7%D9%8A%D8%B2-%D8%A7%D9%84%D8%AF%D9%88%D9%8A%D8%B1%D9%8A-%D9%81%D9%8A-%D9%87%D8%B0%D9%87-%D8%A7%D9%84%D8%AD%D8%A7%D9%84%D8%A7%D8%AA

 

محلل عسكري: إسرائيل تسعى لإخلاء غزة والاجتياح البري سيدخل حزب الله بالحرب

https://www.aljazeera.net/news/2023/10/12/%D9%85%D8%AD%D9%84%D9%84-%D8%B9%D8%B3%D9%83%D8%B1%D9%8A-%D8%A5%D8%B3%D8%B1%D8%A7%D8%A6%D9%8A%D9%84-%D8%AA%D8%B3%D8%B9%D9%89-%D9%84%D8%A5%D8%AE%D9%84%D8%A7%D8%A1-%D8%BA%D8%B2%D8%A9

 

 

(おまけの猫動画)

ガザ初の猫カフェ

 

今どうなっているのか心配だ…

 

 

 

空爆で損壊した建物で動けなくなっていた猫を救出したガザの少年

 

 

(終わり)

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トルコで長年防災の啓発活動を続ける森脇義則氏のトルコメディアでの発言和訳(要約)

2023-02-20 21:03:22 | 中東ニュース

 

 

今回は、準大手ゼネコン「安藤ハザマ」のトルコ代表で、現地で防災の啓発活動を続ける一級建築士の森脇義則氏がトルコメディア(TV100)に出演した際の発言内容を和訳してみた。23分31秒と長めだったので、かなり取捨選択して要約させてもらった。

 

 

スクショ。どうしても美人アナウンサーの方に目が行ってしまうのは私だけ?(トルコ人女性は美人が多いと思う)

 

 

彼女は美人な上に優秀で、森脇氏の話を要領よくまとめ、要所要所で分かりやすく要約してくれていたので、森脇氏の話にその要約を加味した形で訳した。

 

 

アナウンサーはまず最初に、彼が以前出演した際に「行政処分免除」(トルコで安全基準に満たない建築物について、手数料を払うことで行政処分を免れることができる「恩赦」の措置)の問題について以下のように指摘したことを「忘れられない発言」として引用していた。その発言は以下の通り:


「人間に対する『恩赦』は、その人が反省して態度を変える結果を生むかもしれないが、建物はそうではない。違法建築に『恩赦』を与えてはいけない。そんなことしたら、その建物は我々の墓場になってしまう」

 

 

今回の出演での彼の発言の要旨は以下の通り:

 

(今回の地震でこれほど大きな被害が出た原因について)

今回の地震は規模が大きくて震源が浅かったから、当然大きな被害が発生しうる。しかし、しっかりした地盤に正しく建てられた建物は、どんなに大きな地震が来てもなんともない。ところが、トルコでは日本と違って、企業が建設業者になるのは非常に容易であり、建物のチェックもきちんとできないからこのような結果になる。建築エンジニア、建築士も4年学んだだけでなれる。トルコでも医者になるためには、大学卒業後2年間病院で研修する必要がある。医者が手術でミスを犯したら、その患者が亡くなるかもしれないが、建築エンジニア、建築士がミスをしたら、数百人が命を落とすことになりかねない。

 

(今後地震発生が想定される地域)

トルコには東アナトリア断層、ビンギョルから伸びる北アナトリア断層、イズミル方面の西アナトリア断層がある。北アナトリア断層は、1939年のエルジンジャン地震から始まって、次々に地震が起こり、1999年にマルマラ地方に地震をもたらした。マルマラ地方には、この時に断層が壊れなかった地域が3~4か所あるため、いつかは特定できないが、近々地震が発生することが想定される。ブルサ、ヤロヴァ、チュナルジュク、そしてシリウリの先にもいくつか小さい断層がある。別々に地震が起こればM7くらいの規模だろう。なお、イスタンブールに関しては、1999年の地震後、円借款で第1・第2ボスポラス橋とこれに関連して市内17か所でM7.5の地震を想定した耐震補強工事が行われている。

 

ハタイには今回の地震で被害が出たが、東アナトリア断層はカフラマンマラシュまで壊れたものの、ハタイではまだ壊れていない。断層はハタイから南方にいくものと、北キプロスに伸びているものがある。このため、ハタイとその周辺地域、そして、北キプロスで地震が起こりうる。北キプロスはそもそも、トルコより地震が多い。また、ビンギョルからムシュ、ビトリス、ワンにかけても地震が起こることが想定される。2011年のトルコ東部地震でワンから向こう側(東方面)の断層は壊れたが、壊れなかったこの地域で地震が想定される。イズミル方面では、地震があったとしてもM6より小さい規模だろう。

 

(最近3年間にトルコで地震が増えたことについて)

私はトルコに32年間住んでいるが、以前はそれほど地震が多くなかった。しかし、約3年前から増えた。全体的に言って、アナトリアプレート、アラビアプレート、アフリカプレート、これらにエネルギーが集まって、それを発散しようとしている感じがする。これに関して、地震の1か月前にカフラマンマラシュを訪れた時も、「アッラーが皆さんに警告している。大地震に備えよと」と伝えた。

 

(将来の地震への対策)

地震のリスクを減らすため、対策を講じる必要がある。政府も地方自治体も、学校でも会社でも家でも、皆が一緒になって対策を行えば、被害が7割減らせる。例えば、家では家具等を壁に固定する、非常用袋に飲料水や非常食を用意することなどができる。また、家屋の地盤がしっかりしているかどうかチェックする必要がある。地盤がしっかりしていれば、建物に問題があっても大丈夫だ。地盤が弱ければ、建物が無許可の違法建築でないかどうか調べる等が必要になってくる。(以上)

 

 

 

 

視聴回数が3日間で28万回に達している。「日本人の建築家・地震の専門家」に対する信頼もあるだろうが、動画へのトルコ人からのコメントに「彼はトルコ人よりもトルコを愛してくれている」「貴重な話をありがとう」といった賞賛や感謝の言葉が並んでいることから、トルコでの森脇氏への信頼が厚く、その発言が重視されていることが伝わってくる。今後ますますのご活躍を期待したいものである。トルコの人々のためにも。

 

私も森脇氏を見習って、ちょっと酒を控えてみようかな…(関係ない)

 

 

(参考)

森脇氏のコメントが記載された記事

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230215/k10013980751000.html

 

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR106WS0Q3A210C2000000/

 

 

(終わり)

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1999年のトルコ北西部地震で1人も死傷者を出さなかった町

2023-02-17 11:56:43 | 中東ニュース

 

 

回の記事で、今月6日のトルコ南東部を震源とする地震で被害がひどかったハタイ県にありながら、建物が1軒も倒壊せず、死傷者が1人もいなかったエルジン郡の郡長のインタビューを和訳(要約)した。

 

このエルジン郡長のインタビューをネットで見た時、私はすぐにタヴシャンジュル(Tavşancıl)を連想した。

 

トルコでは1999年にも北西部でM7.6の大地震(トルコ北西部地震、イズミット地震、トルコ・コジャエリ地震等と呼ばれる)があり、多くの犠牲を出したが、震源地に近かったのに一切被害が出なかった地域があったのだ。今回のエルジンのように。それがタヴシャンジュルだ。

 

今回は、私がタヴシャンジュルのことを知るきっかけとなった動画の内容を以下に和訳(要約)する。BBCトルコ語版が2022年8月17日に公開したものだ。

 

 

「タヴシャンジュル:1999年8月17日の地震で破壊されなかった町」

1999年8月17日の地震により、イズミット湾岸地域で多数の死者が出て建物が倒壊した。しかし、震源地に非常に近かったにもかかわらず、イズミット湾岸のある町は、ほぼ地震の影響を受けなかった。後に注目を集めることになったこの町は、タヴシャンジュルである。

 

タヴシャンジュルはなぜ地震の影響を受けなかったのか?

 

タヴシャンジュルは周辺の多くの地域とは違い、緑豊かで閑静な町だ。建物の階数が少なく、互いに距離があることが目を引く。この町が地震の影響を受けなかった理由は、これに直接関係している。これについて、よりよく理解するためには、1980年代に遡る必要がある。

 

 

 

 

1989年の地方選挙で、サーリヒ・ギュン氏がタヴシャンジュルの町長に選ばれた。ギュン氏は町の都市計画を準備するにあたって、コジャエリ大学の地質学の研究者らに調査を依頼した。彼らが作成した地質調査報告書は、地震のリスクに焦点を当てた内容だった。この町は北アナトリア断層上に位置しており、都市計画を策定するにあたって、地震のリスクを無視することはできなかった。

 

 

 

 

報告書の作成に参加したコジャエリ大学地球物理学科の元教授によると、この町が地震の影響を受けなかった理由は、地盤の堅固さと町で取られた措置だった。

 

 

 

 

ギュン氏は報告書を重視して都市計画を策定した。この計画に基づき、高層建築(4階以上)の規制を始めとする、様々な決定が実行された。

 

しかし当時、この計画に対する住民の意見は、賛否両論に分かれた。反発する人も多かった。しかし、町長は一歩も引かず、自身の親戚や町会議員にも手加減せず、高層住宅は建てさせなかった。自身の父親が家を一階分建て増ししたいと言い出した時も許可しなかった。ギュル氏の娘さんの証言によると、彼は「人命が失われるよりは、票を失う方がいい」といつも言っていたという。

 

1999年8月17日のトルコ北西部(イズミット)地震では、公式発表によると1万8,373人が亡くなり、36万4,905棟の建物が被害を受けた。イズミット湾の多くの場所で被害が出たが、タヴシャンジュルでは大きく揺れたものの、一切被害がなかった。死傷者も1人も出ず、損壊した建物は1軒もなかった。

 

住民たちによると、2000年代以降、建築に関する検査は以前ほど厳しくなくなった。ギュン氏は建築を厳しく制限していたが、彼の後を継いだ新しい町長は、基本的に違法建築を放置して、住民の好きなようにやらせた。ギュン氏の取った措置を評価している住民たちは、次に地震が起こったらどうなるかを恐れている。

 

(注:サーリヒ・ギュン氏は1989年5月~2002年11月までタヴシャンジュルの町長を務めた。2002年に共和人民党(CHP)から総選挙に出馬して、コジャエリの国会議員に当選。2022年1月、新型コロナの治療中に76歳で死去)

 

 

 

 

(参考)

Tavşancıl: 17 Ağustos 1999 depreminde yıkılmayan yer(動画が掲載されたBBCトルコ語版の記事)

https://www.bbc.com/turkce/haberler-turkiye-62570328?at_campaign=Social_Flow&at_custom1=%5Bpost+type%5D&at_custom3=BBC+Turkce&at_custom4=BDCD1732-2148-11ED-BE3B-311B933C408C&at_custom2=twitter&at_medium=social&at_campaign_type=owned&at_bbc_team=editorial&at_link_id=CB1F3818-A7D8-11ED-B325-9B3B16F31EAE&at_ptr_name=twitter&at_format=link&at_link_origin=bbcturkce&at_link_type=web_link

 

 

(終わり)

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トルコの地震で1人も死傷者を出さなかったハタイ県エルジンの郡長インタビュー和訳(要約)

2023-02-16 07:00:30 | 中東ニュース

 

ご存じのように、今月6日にトルコ南東部のシリア国境に近いカフラマンマラシュで発生したM7.8とM7.5の地震により、両国で多大な犠牲者が出ている。残念ながら、死者数はまだまだ増え続けることだろう。

 

トルコで最も被害が大きかったのはハタイ県だと言われ、建物の約半数が倒壊したという話も聞くが、そのハタイ県にあって、1軒も建物が倒れず、死傷者が1人もいなかった地域がある。それがエルジン郡だ。(Erzin İlçesi、トルコ語では「エルズィン」と発音されるが、ここでは「エルジン」と表記する。また、İlçeは郡または区と訳されるが、ここでは郡、その首長は郡長としておく)

 

ハタイ県でエルジン郡だけが無傷だったことがトルコで話題になり、メディア(FOX のトルコ版)で郡長のオッケシュ・エルマスオール氏がインタビューされたのをたまたま見て、控えめに淡々と話すその謙虚な姿に心を打たれた。「自分はメディアに次々と出演して自己アピールする必要はないが、これが人の役に立つかもしれないからと思って、インタビューに応じている」と前置きし、職務に早く戻らないといけないからとして、スタジオには行かずにエルジンから中継で出演し、椅子を用意すると言われても断って、ずっと立って話していた。

 

 

スクショ

 

 

 

ユーロニュース(欧州主要放送局の報道を伝えるニュース専門放送局)のトルコ語版のウェブサイトにこの郡長のインタビュー記事があったので、それを以下に要約して翻訳してみた:

 

「ハタイのエルジン郡はいかにして地震に持ちこたえたのか?エルマスオール郡長がその問いに答えた」

 

(郡長の話)

エルジンは人口4万2000人の郡。オスマニエからは15㎞で、アダナに非常に近い。(注:アダナも死者が多かった地域。オスマニエも被害が大きかった)それにもかかわらず、建物倒壊による死者は1人も出なかった。負傷者もいない。倒れた建物はないが、被害がなかったわけではない。しかし、重要なのは、ここでは死者が出なかったということだ。

 

私は自分がエルジンの郡長に就任してからの話だけをする。もちろん全ての建物が私の任期中に建てられたわけではないが、私の任期中には、違法建築を許さないことにかけては、出来る限りのことをしてきた。人々は、違法建築を政治家が見逃すことに慣れていて、それを期待している。私にも、選挙に当選するやいなや、それを求められたが、そんなことは決して出来ないと答えてきた。そういった要求に立ち向かっても、彼らはなんとかして違法建築をやろうと試みる。十分な数の職員がいなければ、それを100%監視することは出来ない。

 

しかし、私は「自分の任期中には出来る限り違法建築は建てさせない」と決意し、それをやった者には必要な罰金を科し、記録を残して検察庁にしかるべき通知を行った。そういう意味では、私にはやましいところはない。

 

都市開発に関しては、規則を文字通り適用する必要がある。国民が国家と一体となって、意識を変革する必要がある。国民側には、違法建築の行政処分免除への多大な期待がある。そういう期待を作り出してはいけない。規則を効果的に適用して、検査システムを見直さなければならない。国を統治する全ての人間がこの点において決意を示し、国民にそれを見せる必要がある。そうでなければ、誰が上に立っても、死者は出続けるだろう。今回の地震から教訓を得て、このような大惨事を繰り返さないようにしたい。

 

地方自治体の長が単独でそれを行うことは非常に難しい。政治家が違法建築を見逃すことへの人々の期待が残念ながら大きいからだ。全ての公的組織が一体となって行うことが肝要だ。

 

私のところでも、地震に対して100%準備が整っていたわけではなく、不十分なところ、やるべきことはあった。私たちは地質学上の調査に懸命に取り組んできたが、不備なところもあった。それは自己批判している。これも大きな教訓となった。この件に関して、今後も取り組みを続けていくつもりだ。

 

 

(地質学者の意見)

・地震学者のナージ・ギョルル氏(注:今回の地震を事前に予測した人物):

地震の絶えないこの国に住むからには、地震に耐える街づくりが必要であり、エルジンはそのお手本だ。そういう意味で、郡長の言っていることは正しい。但し、エルジンで建物倒壊がなかったことを、それだけに結びつけるわけにはいかない。地質学的な位置、テクトニクスの位置等も関係してくる。

 

・イスタンブール工科大学の元教授オカン・トゥイスズ氏(注:彼も今回の地震を事前に想定):

エルジンの近くの断層は動いていない。エルジンから30~40㎞のところに断層があるが、間に山塊が挟まっている。

 

 

(オッケシュ・エルマスオール氏の略歴)

1979年エルジン生まれ。マルマラ大学法学部卒。イスタンブールで弁護士業に従事した後、帰郷してエルジン議会議長、ハタイ弁護士会監査理事会委員等歴任。2019年3月31日の地方選挙に最大野党の共和人民党(CHP)から出馬して、エルジン郡長に当選。妻と娘2人がいる。英語がよく話せる。同氏の前任者は与党の公正発展党(AKP)所属のカスム・シムシェック氏で、2期務めた。(注:本人によると、エルマスオール氏の父親も郡長を務めた経歴がある)

 

 

 

 

(参考)

Hatay'ın Erzin ilçesi depreme nasıl dayandı? Belediye Başkanı Elmasoğlu yanıtladı (インタビューの元のトルコ語記事)

https://tr.euronews.com/2023/02/11/hatayin-erzin-ilcesi-depreme-nasil-dayandi-belediye-baskani-elmasoglu-yanitladi?fbclid=IwAR32Ror3IvBM34KJ1RvZG3co2I4EzaNN7VQF7HBhjOKwNjZuvF0hQkxb61c

 

トルコでなぜあれほど多くの建物が倒壊したのか 耐震対策は

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-64592346

 

「パンケーキクラッシュか」トルコ・シリア地震 犠牲者3.3万人超 なぜ被害がここまで大きくなったのか?【解説】

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/326527?display=1

 

 

(終わり)

 

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シリア南部スウェイダーの悲劇とドルーズの孤立(その2)

2018-10-06 02:33:54 | 中東ニュース

 

以前、このブログの「シリア南部スウェイダーの悲劇とドルーズの孤立」という記事(これ)に、「7月25日にISがスウェイダーを襲撃し、250人近い死者が出た。東郊のシブキー村では約30人の女性や子供が拉致された」と書いた。拉致されたうちの1人の若者が8月に殺害され、9月にはISが動画を出して(11日付)、その中で人質代表の女性が助けを求めていたことにも言及した。

 

その後も解放交渉は進まず(シリア政府は誰がどのような交渉を行っていたか発表していない)、国際組織・人権団体等がこの件に注目して人質解放に向けて働きかける気配もなかった。

 

10月3日の朝、スウェイダーの地元メディア「スウェイダー24」がフェイスブックに載せた記事で、ISがシブキー村で拉致した人々の「処刑」を警告する新たな動画を発信したことを知った。10月2日付の動画で、人質解放交渉を担当する委員会に送られてきたとのことだった。その中には覆面をして武装した男2人が登場して、人質の女性のうち1人をその場で射殺し、要求が受け入れられなければ3日後に残りの全員を殺害すると予告したとある。ISの要求は、スウェイダー東方のサファーで行われている政府軍の軍事作戦の停止と、政府側に収監されているIS関係者らの釈放。

 

上記の「スウェイダー24」の記事に添えられた写真。後藤さんや湯川さんの事件を含め、数年前はこういった写真を見る機会が多かったが、ISが衰退の一途をたどり、最近は目にすることはなかった。しかし、ISの脅威が終わったわけではないのは明らかだ。

 

10月3日、拉致被害者の家族たちがスウェイダー市内の県庁前で無期限の座り込みを開始した。彼らは動画の中で女性が殺されたことへの怒りを表明するとともに、人質の解放に向けて真剣に動くよう政府に求めている。スウェイダーの住民の大半が属する宗教マイノリティ「ドルーズ」の長老は、国連とシリア政府の後ろ盾であるロシアに助力を求めている。彼は今回の動画が出される以前、この件でモスクワを訪問している。そもそもシリア政府がロシアの了解の下で、ダマスカス南郊のヤルムーク・キャンプからIS戦闘員の一団をスウェイダー砂漠に移送したことが7月25日の事件に繋がったとスウェイダーでは見られており、シリア政府とロシアの責任を問う風潮が強い。

シリア政府は、動画公開後もISの要求に応じて軍事作戦を止める姿勢を示してはいない。IS側の収監者を刑務所から釈放する様子もみられない。

ISが動画で宣言した10月2日から3日間の猶予期間が終わったからといって、全員ただちに殺害されるわけではないにしても、楽観視する要素はどこにもない。

 

10月3日、フェイスブックで上記の「スウェイダー24」の記事を読んだ直後、スウェイダー関係の別の暗いニュースが目に入った。

スウェイダー出身のシリア難民の男性、ハサン・クンタール氏がマレーシア警察に拘束されたという内容だった。文頭で挙げたブログ記事にも書いたが、彼は徴兵を逃れてシリアを出国し、数か国を彷徨った末にクアラルンプール国際空港で足止めを食らって、空港内の狭いエリアで生活しながらツイッターで日々自分の置かれた状況を訴えかけていた。しかし、10月1日に「空港内の禁じられたエリアに滞在している」として拘束されたという。

 

彼が空港で暮らすのを半年も放置していたマレーシアが、なぜ突然拘束に動いたのかは定かではないが、同国警察は「しかるべき調査を行った後、身柄を送還する手順を円滑にするため、シリア大使館と連絡を取る」と発表している。徴兵回避をして出国し、ツイッターで有名人になったクンタール氏がシリアに送り返されたら、悪名高い政府の刑務所が彼を待っていることは想像に難くない。現在彼は、これも悪名高いマレーシア移民局の収容施設に勾留されているそうだ。カナダの有志が彼を難民として呼び寄せるためのプロジェクトを進めていたということなので、カナダ政府がマレーシアに働きかけてくれないだろうか・・・

 

(参考)

英語

Syria families demand regime action to free ISIS hostages

http://www.rudaw.net/english/middleeast/syria/05102018

 

Malaysia detains Hassan Al Kontar after removing him from airport

https://www.aljazeera.com/news/2018/10/malaysia-detains-syrian-refugee-removing-airport-181002135142642.html

 

アラビア語

تنظيم داعش يهدد بإعدام بقية الرهائن لديه خلال ثلاثة أيام

https://suwayda24.com/2018/10/02/%D8%AA%D9%86%D8%B8%D9%8A%D9%85-%D8%AF%D8%A7%D8%B9%D8%B4-%D9%8A%D9%87%D8%AF%D8%AF-%D8%A8%D8%A5%D8%B9%D8%AF%D8%A7%D9%85-%D8%A8%D9%82%D9%8A%D8%A9-%D8%A7%D9%84%D8%B1%D9%87%D8%A7%D8%A6%D9%86-%D9%84%D8%AF/

 

كواليس إعدام 'داعش' لرهينة من السويداء.. ما الذي جرى؟

https://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/syria/2018/10/03/%D9%83%D9%88%D8%A7%D9%84%D9%8A%D8%B3-%D8%A5%D8%B9%D8%AF%D8%A7%D9%85-%D8%AF%D8%A7%D8%B9%D8%B4-%D9%84%D8%B1%D9%87%D9%8A%D9%86%D8%A9-%D9%85%D9%86-%D8%A7%D9%84%D8%B3%D9%88%D9%8A%D8%AF%D8%A7%D8%A1-%D9%85%D8%A7-%D8%A7%D9%84%D9%91%D8%B0%D9%8A-%D8%AC%D8%B1%D9%89%D8%9F.html

 

(おまけの猫写真)

 

ここで取り上げた子猫とその母猫・兄弟だと思われる。猫は心の安らぎ。

 

(終わり)

 

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