今回は1月の終わりに神楽坂のアラブ料理店「アラビックカフェ&デリ アブ・イサーム」(Arabic Cafe & Deli Abu Essam)に行った時の話。
最寄りは飯田橋駅で、徒歩5分かそこらで着くと思うが、私たちは道に迷った。通りかかったお店で道を聞いたら、いかにも地元住民といった風情のご夫婦が地図を出してきて、行き方を丁寧に教えてくれた。神楽坂、良いところなんじゃなかろうか。
途中で見かけた「チャイハネ」という名前のエスニック衣料・雑貨店
「チャイハネ」はトルコ語で「喫茶店」という意味だ。入って行って「チャイ(紅茶)を1杯、薄めでお願いします」と言ってみたい!という衝動に駆られたが、大人なので我慢した。
「アブ・イサーム」にたどり着いてみたら、店の前にはテイクアウトの品物を待つ人が何人か立っていた。繁盛しているようだ。
私と友人は店内で食べたが、その間にもテイクアウトを頼む人たちがちょくちょくやって来ていた。コロニャ(コロナ)感染拡大の第3波のまっただ中で、緊急事態宣言が発令されていることもあり、店内で飲食するお客よりテイクアウトの人の方が多いようだった。
この店は、昨年4月9日にオープンしたということなので、コロニャの第1波と、それを受けて4月7日に発令された1回目の緊急事態宣言の影響をモロに受けたことになる。日本海の荒波にザッパーン!!!とやられたイメージだ。それでもこれまで生き残ってきたということは、地元住民や在日アラブ人、アラブ好きの日本人がリピーターになる実力派のお店だということだろう。隣のテーブルに座った店長と関係者らしき女性の会話を聞くともなく聞いていたところ、店内の改装計画も進んでいるようなので、経営は順調だとみられる。
オーナーシェフである店長のイブラーヒーム・アブー・イサームさんはエジプト人。しばらく前に店を訪れた友人は、日本語が苦手そうだったと言っていたが、私たちが行ったときはかなり上達したようで、普通に会話できていた。
(お店のインスタから借用した写真)
店長は左(当たり前や)。アラブ人の通称「アブー○○」は、通常「○○(長男の名前)のお父さん」という意味なので(日本語では「アブ」と表記されることが多い)、アブー・イサームは「イサームのお父さん」という意味だ。ちなみに私の通称(自称)は「ウンム・キタト」(猫たちのお母さん)だ。あ、誰も聞いてない?
というわけで、店長の隣にいる男の子が長男のイサーム(勇)君。HPのスタッフ紹介によると、店長の奥さんは日本人だ。イサームって、日本語でもアラビア語でも通用するから、便利な名前だな。
カウンターの中で忙しく働いていたのは、ローラさんという若い女性。(HPから拝借した写真)
国籍は聞かなかったが、色白でスラブ系のイメージ(全然違うかも)。日本生まれだそうなので、当然普通に日本語を話せる。店のショーケースには、パティシエの彼女が焼いた美味しそうなバクラワが並んでいた。私は甘いものに興味がないので食べなかったが。彼女はお菓子を焼いたり、料理や飲み物をサーブしたりしつつ、頃合いを見て入口のドアを開けて換気するなど、感染対策にも気を遣っていた。この店になくてはならない存在だろう。
店内の様子
細長い空間にテーブル席が3つというこじんまりした店だったが、明るくて清潔感があった。外からガラス越しに中が見えるので入りやすく、開放感がある。
私が注文したのは、エジプトの国民食と言われる「コシャリ」。調理した米・パスタ・ひよこ豆やレンズ豆にトマトソースをかけてオニオンフライをトッピングした料理だ。 これにチキンケバブを添えたものを注文。コシャリだけだと600円、ケバブ添えは750円。
食べかけで見苦しいけど、拡大図
ケバブと一緒にポテトフライものっていて、白いソースがかかっていた。ヨーグルト系かな?
料理は全てハラールだ。メニューにアルコール類はないが、持ち込みは可能だとローラさんが教えてくれたので、いざという時(こういう時)のために常に持ち歩いているペットボトルに詰めたワインを飲みながら食べた。ふふふ、備えあれば憂いなしだ。持ち込み料はなし。但し、そもそも小さな店だし、コロニャのこともあるので、宴会をしている場合ではないだろう。私は「人畜無害な気のいいアル中」を目指しているので、手持ちのワインをちびちび飲むに留めておいた。
ちなみに、上のエビアンのボトルは330mlのこぶりなもので、ワインを詰め替えて持ち歩くのに重宝している。街中でエビアンのミネラルウォーターのペットボトルから謎の赤い液体を飲んでいる女を見かけたら、それは私でございます。見なかったふりをしてやって下さいませ・・・
友人はコフタサンドを選んだ。850円。コフタは羊のミンチの肉団子のグリルだ。大量のポテトフライ添え。
レモンミントジュースも飲んだ。ビタミンが摂れるのでサラダ代わりになる。350円。
この店のコシャリは、私が今まで食べた中で一番美味しかった。半年間カイロに住んだ時、時々道端で売られいるものを買ったり、コシャリ専門の安食堂にたまに行ったりした程度で、有名店を食べ歩きしたわけではないのだが、ここのはクミンがよく効いていて、味付けも温度も申し分なく、上にかかったタアレイヤ(オニオンフライ)もサクサクで絶品だった。添えられたチキンケバブは、自家製ソースに浸けて作られているそうで、これまた他の大抵の店のものより美味しく感じられた。私はコシャリばかり食べると途中で飽きるので、味に変化があって良かった。
店長に「こんなに美味しいコシャリ、カイロでも食べたことないです!」と告げると、嬉しそうに笑いながら「ホテルで修業したんですよ」と教えてくれた。なるほど、ホテルの味か、なっとく~
友人のコフタを少しもらったら、こちらも非常に美味しかった。東京の中東料理店の一般的な水準より低価格に設定してあるのだが(だから行った)、クオリティーは高い。レモンミントジュースも手作りで、レモンの酸味にミントの風味が混ざり合って爽やかで健康的。シリアやヨルダンで時々飲んでいたジュースだ。
友人が頼んだババガンヌージュ(焼きナスに野菜を混ぜたペースト)
これは酸味が強くて、初めて食べる味だった。
テイクアウトして家で食べたフムスとタアメイヤ
タアメイヤは、中東全般でお馴染みのひよこ豆のコロッケ「ファラーフェル」のエジプト版で、ひよこ豆ではなくそら豆で作られており、緑色をしている。味の方は、豆の種類が違ってもほぼ同じだ。店のメニューでは、わかりやすいように「ファラーフェル」と表記されている。
フムス(ホンムス、ひよこ豆のペースト)は塩気が強くて、タヒーナ(ゴマペースト)が少なめのようだった。シリアやヨルダンなどのシャーム地方で食べ慣れているものとは違う味だ。そもそも、エジプトでホンムスが売られているのを見かけた記憶がない。シャーム地方ではファラーフェル屋にホンムスもあるわけだが(材料が同じだから)、タアメイヤはそら豆が材料だから事情が違うのだろう。
ちなみに、アブ・イサームのロゴマークはタアメイヤサンドだ。かわいい。
次に行ったら、他のメニューも色々試してみたいものだ。ラムごはんやバゲットサンド類、スープ類が気になる・・・
店を出て、駅に向かって歩いている時に出会ったかわいこちゃん。
猫は見かけなかったが、神楽坂は猫の街として有名らしい。また、「日本のパリ」「東京のパリ」とも呼ばれているそうだ。そう言われたら、それっぽかったかな? 次回はもっと早い時間に行って、ゆっくり散策したいものだ。
(参考)
アブ・イサームのHP
https://abu-essam.com/menu
インスタ
https://www.instagram.com/abuessam136/
食べログ
https://tabelog.com/tokyo/A1309/A130905/13246346/
「猫の街」神楽坂で見つけた猫好き必見スポット5選【現地ルポ】
https://tabizine.jp/2019/08/25/281874/
東京の“小さなPARIS” 神楽坂へ「おいしい」と「素敵」を探しに
https://kinarino.jp/cat8-%E6%97%85%E8%A1%8C%E3%83%BB%E3%81%8A%E5%87%BA%E3%81%8B%E3%81%91/8347-%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E3%81%AE%E2%80%9C%E5%B0%8F%E3%81%95%E3%81%AAparis%E2%80%9D%E7%A5%9E%E6%A5%BD%E5%9D%82%E3%81%B8%E3%80%8C%E3%81%8A%E3%81%84%E3%81%97%E3%81%84%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%80%8C%E7%B4%A0%E6%95%B5%E3%80%8D%E3%82%92%E6%8E%A2%E3%81%97%E3%81%AB
(終わり)