奈良ホテルに一泊した翌朝、前夜の酒がまだ体内に残っている半眠りの状態で、朝食ルームに出かけた。私たちが利用したワクチン接種プランは朝食付きなのだ。朝食の時間はチェックインの時に8時半に予約してあった。
朝食の場は創業以来のメインダイニングルーム「三笠」(ここ)だった。
和洋折衷の奈良ホテルらしい空間。
庭に面した席に案内された。曇っていたが、電気が煌々とついていて、キラキラしていた。
私は洋定食にするとあらかじめ決めていた。
メニューは以下の通り:
「■ジュース ※お選びください オレンジ / トマト / グレープフルーツ / ミルク
■プレート サラダ / ヨーグルト / フルーツ
■メイン料理 ※お選びください
奈良県産「大和なでしこ卵」使用
・プレーンオムレツ ハム、ベーコン、郷ポークソーセージ付
・フレンチトースト ハム、ベーコン、郷ポークソーセージ付
・エッグベネディクト 奈良ホテルスタイル イングリッシュマフィン、ベーコン、奈良漬けタルタル付
・野菜の煮込みとポーチドエッグのココット
■パン
■コーヒー 又は 紅茶 ※お選びください」
私はグレープフルーツジュース、エッグベネディクト、コーヒーをチョイスした。
まずナイフとフォークなどのカトラリーがセッティングがされ、次にジュース、サラダ、パンなどが並べられて、最後に主役のエッグベネディクトが登場する。和食はお盆の上に全て乗った状態で運ばれて来るが、洋食は段階的にやってくるので、ちょっと楽しい。
メインが来る前の状態
柿ジャムがあるのがポイント
全部揃った状態
エッグベネディクト様、近影
食べてみたら、味は見た目ほどではなかった。パンはホテルチェーン用の量産品だと思われ、エッグベネディクトの奈良漬け入りタルタルソースは酸味が強すぎ、コーヒーは薄かった。
まあ、そもそも私は朝は食欲がないので、ほんの少しだけ食べて、後は近くの席に座っている若いカップルを観察して時間を潰した。彼らはグラスでシャンパンを飲んでおり、丁寧語で話していた。丁寧語で話しているということは、まだ結婚前の可能性が高い。結婚前のカップルだとして、奈良ホテルに泊まって朝食にシャンパンを飲んだということは、ちょっと特別な雰囲気を醸し出したかったのか。もしや結婚は間近なのか。(余計なお世話)
両親と妹は和定食と茶粥定食を選んだ。父は肉が食べられないので、予約の時に妹がホテル側にそれを伝えたら、肉を全く使わない料理にしてくれた。黒服のおじ様が丁寧に接客してくれ、気配りが行き届いていた。
和定食のメニュー:
「奈良ホテル自家製の胡麻豆腐
サラダや佃煮や葛きりなど月替りの取り肴五種盛り
日替わりの焚き合せ
日替わりの焼き魚
本日の蒸物
白ごはん
奈良漬け 梅干し」
茶粥定食は、和定食の白ごはんが奈良名物の茶粥に変わっただけである。こうしてみると、洋食に比べて和食のメニューには選択肢が明らかに少ない。和食は一品一品に手がかかっているので、多くの選択肢を用意する余地がないのだろうか。あるいは、日本では伝統的に欧米と比べて、飲食店のコース料理などで客に多くの選択肢を与える習慣があまりない(つまり個人の好みを重視しない)ということなのか。(朝っぱらからむつかしい問題だ)
茶粥定食
こういう構成になっている。
和食の味はどうかと聞くと、「全体に味付けが薄い」とのことで、皆なんだか不本意そうな顔で、黙って食べていた。
奈良ホテルの朝食は、宿泊費に含まれていない場合、3,872円かかる。父はそれを知って、「昨日の鰻と同じくらいするじゃないか!」と驚いていた。
しかし、私はもはや確信していた。奈良のホテルの宿泊費や食事代には、この歴史ある老舗ホテルで特別な時間を過ごすための「入場料」が含まれているのだと。たぶん、払っている代金の半分くらいが入場料なんじゃないかな(偏見です)
なんだかんだいいながら、皆食事を終えて、部屋に戻った。このプランではチェックアウトは通常より1時間遅く、12時でいいとのことだったので、荷物をホテルに置いたまま近くの奈良町に観光に出かけ、間に合うように戻ってきてチェックアウトすることにした。私と妹は荷物を部屋に残し、両親は車に積み込んだ。
出かける時、玄関の前で記念撮影をしている和服の新郎新婦がいた。新婦さんは晴れがましい表情で全身からキラキラのオーラを発していて、新郎も嬉しそうだった。しかし、窮屈な和装の姿で何度もポーズをとって、場所を変えたりして延々と撮影するのはいかにも大変そうだ。私の時はやめておこう。(いつやねん)
ちなみに、この新郎新婦は1時間以上経ってから私たちが奈良町観光を終えて戻ってきた時も、まだ写真撮影を続けていた。
前日散歩した時と同じ道を通って、奈良町の方に向かう。
世界遺産の元興寺に通りかかった。
この鬼瓦と木がステキ
世界遺産だけあって、寺の中には色々お宝があるようだったが、入場料が500円かかるのでスルーして先へ行く。こういう時、「入場料を払ってもいいから入ろうよ」と言い出す人が1人もいなくて、全員が申し合わせたようにスルーしたあたり、血のつながりを感じる。
道端のふくろうさん
奈良町には風情のある建物が並んでいるので、歩いているだけでも楽しいのだ。
無料で入れる町屋があったので、入ってみた。「奈良町にぎわいの家」というところで、約100年前に美術商が建築した屋敷だということだ。
知り合いの家のような懐かしい雰囲気
庭も風情がある。寒いけど
奥の蔵ではSFファンタジーの舞台衣装のような謎のドレスが展示されていた。この辺も奈良っぽい。
奈良町資料館にも入った。ここは奈良町に来た時は、ほぼ毎回入っている。
屋根の上のサルたちがかわいい。
サルたち、庚申さんを釣りながら宇宙と交信中
奈良町資料館も入場は無料だ。
しかし、ここはとても世知辛いところだ。お手ふれ料百円って、あなた。
そもそも資料館というよりは、土産物屋に近い気がする。
小さな5連の庚申さんがこのお値段。
様々なサイズの庚申さんが売られているが、どれも結構なお値段だ。
誰も何も買わずに見学だけして、近くのからくりおもちゃ館に移動する。前回私と妹が行った時に気に入ったので、皆で行こうという話になったのだ。
もちろんここも入場無料
まず検温と手の消毒を済ましてから左手の和室に上がる。
机が並べられ、その上にからくりおもちゃが配置されているので、順番に見ていく。
係の人たちがおもちゃの仕組みや遊び方、作られた当時の歴史的背景なども丁寧に説明してくれるので、とても興味深い。定期的におもちゃを入れ替えているということで、前回来た時にはなかったものもあった。今は新型コロナの感染対策として、複数の人でやる遊びは避けて、1人でも楽しめるおもちゃを置くようにしているとのことだった。
ネズミを追いかける猫のおもちゃ
かわいい
カラス天狗?
引っ張ると顔が変わるやつ
んべ~
キツネのお面をかぶったサル
ぱっ! ちょっと剥がれてて気の毒
他にも色々あった。両親は童心に帰ったようにはしゃいでいた。私と妹も、もちろん楽しんだ。大人も子供も楽しめるところなのだ。
ここは建物自体もなかなか面白いので、行った時には注意して観察してみるといいだろう。
スペース節約の階段とか
高いところにある窓の覆いを紐を引っ張って開ける仕組みとか
昔の人は色々工夫して暮らしていたんだな~
というわけで、私の奈良町での一番のおススメは、「からくりおもちゃ館」だ。(テストに出るよ~)
外に出たら、もう良い時間になっていたので、少し急いでホテルに戻った。今回は近道を見つけて、スムーズに帰ることが出来た。
両親にはロビーで待ってもらって、私と妹は荷物をまとめ、チェックアウトの手続きをして宿泊費を清算した。今回の旅は両親へのサプライズプレゼントという趣向なので、費用は私と妹が負担した。こういうことやったの、初めてだな・・・
ホテルを出る前、皇族の女性を玄関で見かけた。奈良ホテルは皇室御用達なのだ。
ホテルを出た時はまだ昼過ぎだったが、私は用事があるので、父の車で近鉄奈良駅に送ってもらい、新幹線に乗り継いで早めに帰った。両親と妹は、写真展を見に行ってから帰宅したようだ。
1泊だけの短い旅ではあったが、なんだか盛りだくさんだったような気もする。奈良は大好きなので、遠からずまた行きたいものだ。でも、オミクロン君次第かな・・・
というわけで、これにて奈良旅行記は終わり。年内に終われてよかった・・・ここまで読んで下さった辛抱強い方、ありがとうございました~
(おまけの猫写真)
心頭滅却
(終わり)