外国で一時的個人的無目的に暮らすということは

猫と酒とアルジャジーラな日々

シリアでビールを飲む(6)~バラダ缶~

2009-11-09 22:20:47 | シリア
しつこいようですが、ビールの話の続きでございます。今住んでいる家はムスリム色が濃厚なルクナッディーン地区にあるので近所に酒屋が見つからない、と以前書きましたが、家からさほど遠くないところ(徒歩20分くらい)に一軒見つかりました。以前この地区に住んでいたイタリア人の友達に教えてもらったのです。さすがイタリア人ね。これで夜ビールが切れたとき、はるばるマルジェまでバスに乗って買いに行かずにすむと思うと、嬉しくて思わず踊りだしてしまいます(うそ)。

このお店は、ルクナッディーンの顔とも言えるアブー・ヌール・モスク(ジャーミア・アブー・ヌール)の脇のバス通りを新市街のほうへ下っていって2つ目のサークル(私はススキ広場と呼んでいる。真ん中に見事なススキが一株生えているから)のわき道を入ってすぐのところにあります。看板には「DRINKS KINDA」と英語で書かれており、シリアには珍しく、あか抜けた綺麗な内装です。小さなお店だけど、店員は5人くらいいました。お客より店員のほうが多いお店は沢山あります。シリアだけでなく、他のアラブ諸国でもよく見られる現象らしいです。こうして無理やり失業率を下げているのでしょうか。

マイスター(エジプトのビール)が65リラ、エフェス(トルコのビール)が60リラと言われたので、エフェスを4本購入。店員が袋に入れてくれるのを待つ間、店内をじっくり眺め回していると、珍しいものが目に入りました。缶入りのバラダ・ビール(悪名高いシリアのビール)です。暗緑色と金色の2色使いの缶に、「BARADA」と赤いロゴが入っています。バラダの缶ビールはずっと以前にマアルーラ(ダマスカス近郊の街)で見かけたことがあるけど、飲んだことはなかったのです。ここで会ったが百年目、何事も試してみるのが大事だし、と1本購入することにしました。これは50リラ。

家に帰ってエフェスを冷蔵庫にしまい、バラダの缶を仔細に検分します。金色や赤の派手な色が使ってがんばってるけど、やっぱりなんとなく田舎っぽい、地味で大味な外観です。私の偏見かもしれませんけどね。脇のほうに英語で、「BARADABeer is a genuine, nourishing and tasteful beer with well balanced flavors. It is considered as one of the world’s best beers」と小さく書いてありました。まっ、世界最高級のビールのひとつとは大きく出たわね、JAROに言いつけちゃうから。「nourishing(滋養がある)」と言われても、栄養を摂るためにビールを飲む人もいないだろうに、とひとしきり突っ込みを入れました。

いよいよ缶を開けて飲んでみます。・・・うーん、やっぱりスッパイ。強力に酸っぱい。どうやったらこんなに酸っぱいビールを造れるのだろう。やはり日なたにしばらく置いておくのでしょうか。缶入りのバラダは比較的飲みやすいと聞いたことがありますが、私にはそうは思えませんでした。その日の体調が悪かったせいもありますが、結局最後まで飲めず、半分以上捨ててしまいました。ビールを捨てるなんて罰当たりなことですが、しょうがない。 
・・・味覚は相対的なものなので、この味に慣れてしまえば案外おいしく感じるのかもしれないけれど、慣れるまでこれを飲み続けるのは拷問にも等しい行為に違いない。しかもその行為になんら意義を見いだせそうもないので、やめておこう・・・そんなことを考えながら、エフェス・ビールで口直しをしました。エフェス、ありがとう。

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ダマスカスで滞在許可の更新手続きをする~バラムケ・デビュー編・下の巻~

2009-10-26 01:00:13 | シリア
バラムケ事務所での手続きの手順は以下の通りです。幾分記憶違いがあるかもしれませんがご了承ください。

(バラムケの移民・パスポート管理事務所での滞在許可更新手続きマニュアル)

*用意するもの:パスポート、証明写真3枚、大家さんとその身分証明書(または家の契約書か、滞在証明書)。身分証明書はオリジナルとコピーの両方が必要。

*下準備:バラムケ事務所の脇に何軒かあるコピー屋さんのうち、「マアリファ(‘知識’の意)」という名前の店に入って、申請用紙と収入印紙を購入する。申請用紙3枚(全て同じ用紙)プラス収入印紙1枚で25リラ。別の申請用紙も1枚購入する(私の場合はマルジェで購入済)。これは100リラ。パスポートの写真のページと、直近のシリア入国ヴィザのコピーもここで済ませておくとよい。家に帰って(その場で書いても良いけど)申請用紙に必要事項を記入し、証明写真、収入印紙を貼り付ける。記入は適当でいいんです。ここはシリアですもの。

1. 大家さんと連れ立って事務所に入り、階段を2階分上がって左手奥の担当窓口の前の列に並ぶ。そんなに混んでないけど、横入りする人たちが多いので常時けん制する必要あり。順番が回ってきたら書類を差し出し、窓口の係員の指示に従って、大家さんに必要事項を記入・拇印押印をしてもらう。賃貸契約等がある場合はそれを提出すればよく、大家さんの参加は不要。

2. 次に同じ階の別の部屋(階段を上ってきて右手)に行って、書類にサインをもらい、もとの窓口に戻る。

3. さらに、さっきの部屋の隣の部屋の、そのまた奥の小部屋に足を運び、担当官に書類を渡す。記入に少々時間がかかるらしく、私は「5分後に戻ってきて」と言われた。その後、その部屋から出て右手の窓口に行き、コンピューターに登録してもらう。

4. 最初の窓口にまた戻って、担当係員にパスポート・書類一式を預ける。「1時間 したらまた来て」と言われたので困った顔をしたら、「30分後でいい」と言い直された。私は近所の学生用食堂でザクロジュースを飲み(秋の味覚。酸っぱくて美味しい)、本を読んで時間をつぶした。

5. 30分後に戻ってパスポート・書類一式を受け取り、階段を1つ分上って、広い部屋にいる偉そうなおじ様にサインをもらう。

6. 階段を降りて元の窓口に戻り、書類を提出してパスポートを受け取ったら、あがり。本当にご苦労様でした。

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ダマスカスで滞在許可の更新手続きをする~バラムケ・デビュー編・中の巻~

2009-10-26 00:58:44 | シリア
バラムケの移民・パスポート管理事務所は、シリア・アラブ報道局(SANA)の青い建物のすぐ近所にあります。建物に入ってから、例によってあちこち迷った末に担当窓口にたどり着き、「滞在許可の更新手続きをしに来ました。賃貸契約書がないけれど、どうすればいいですか」、と単刀直入に質問すると、係員は(彼も比較的温厚そうな顔であった)「大家さんを一緒に連れてきなさい、身分証明書(ハウィーヤ)携帯で」と言って、その旨一筆書いてくれました。家に帰って大家さんにその紙を見せたら、翌日一緒に事務所に行ってくれることになりました。この大家さんはとても良い人なのです。普通は一緒に行ってくれないと思います。移民管理事務所って一応警察の管轄だし、あまり近づきたい場所ではないですから。大家さんに拒否された場合はどうすればいいんでしょうね。なにか逃げ道があるはずだと思うのですが。
   
朝10時に事務所の前で大家さんと待ち合わせ、3階の担当窓口に並びました。そんなに混んでいません。自分の番になったので書類一式を差し出すと、シリア入国ヴィザのコピーが抜けている、と言われたので、建物の外のコピー屋でコピーして、列に並び直し。順番が回ってきたので係員に再度書類を渡します。大家さんは、自分のアパートに外国人の私を住ませている旨一筆書き、拇印を押しました。これで大家さんのお役目は終了、僕は仕事があるからもう行かなきゃ、なにかあったら電話して、と風のように去っていきました。大家さんを見送った後も、私は事務所内の色んな部屋を巡り続け、12時近くになって、ようやく滞在許可を手に入れることが出来たのでした。見ると、滞在期限は来年の1月上旬と記載されています。つまり3ヶ月近く更新されていたのです。やっほう。喜びと疲労を抱えて家に帰り、3時間以上昼寝しました。
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ダマスカスで滞在許可の更新手続きをする~バラムケ・デビュー編・上の巻~

2009-10-26 00:56:28 | シリア
先ごろ、例によって滞在許可の2ヶ月更新をするため、マルジェの移民・パスポート管理事務所に行きましたが、なぜか気配がいつもと違いました。いつも最初に行く部屋には見たこともない人が座っており、お隣のジェネラルの部屋は電気が消えていて、がらんどうです。不吉な予感がする。不吉な夜に不吉な風が吹いている。途方にくれていると、何の用か、とその新しい役人が聞いてくれたので、「あの、滞在許可を更新しにきたんですけど」と答えると、「ああ」とうなずいて、そばにいた部下に何か指示しました。その部下が連れて行ってくれたのは1階下の、毎回コンピューターに登録してもらったり、スタンプを押してもらったりする部屋でしたが、ここでも見慣れない風景が私を待っていました。いつもの係員の姿はなく、見知らぬ人が座っているのです。不吉な夜に不吉な風が吹き、さらに不吉な雨まで降り出た感じです。
   
気を取り直してその係員に用向きを告げると、このマルジェ事務所では1~2週間分しか滞在許可を出せないので、2か月分ほしければバラムケ事務所のほうに出向くしかない、と言われました。「でも私はいつもここで2ヶ月分更新してたんですけど」と食い下がると、「法律が変わったんだ」とあっさり片付け、肩をすくめるのでした。法律が変わったと言われたらもうしょうがないので、バラムケでの必要書類を尋ねると、「アクド・ル・イージャール(賃貸契約書)、またはサナドゥ・イカーマ(‘滞在証明書’と訳しておきます)」とのこと。心の中で、不吉な犬の鳴き声まで聞こえてきました。賃貸契約なんてしてないし(シリアではアパートを借りるのに正式に契約することは少ない。結構な額のお金を役所に払わないといけないから)、滞在証明書ってなんだかよくわからないけど、きっともらえないであろう。
   
2日後に気合を出して大家さんに相談すると、とりあえずバラムケの事務所に行って、家の契約書なしで済ませられるか聞いて来なさい、もしだめだったらそのとき考えよう、と言われました。そんなわけで今回、生まれて初めてバラムケ事務所に赴くことになったのです(大げさ)。
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ダマスカスで滞在許可の更新手続きをする~マルジェの想い出編~

2009-10-25 00:53:17 | シリア
どの国についても言えることですが、外国人にとって滞在許可の更新手続きは悩みの種であり、定期的に痛む親知らずみたいなものです。とくに入国後初めて行うときは、言葉も全然通じず、勝手も分からないので、檻に入れられたウサギのようにびくびく怯えながら出頭し、訳のわからないまま、クルクルたらい回しにされて疲労困憊することになります。まあでも、何事も経験ですものね。

シリアでは入国2週間後にこの手続きをすることになっています(実際には1ヶ月以内であれば問題ない)。1回の手続きにつき通常2ヶ月まで更新できますが、入国後6ヶ月を経過したら一度シリアを出国しないといけません。6ヶ月以上滞在したい場合は、ヨルダンやレバノン、トルコなどの近隣国(イスラエルは論外ですね。イラクもやめておきましょう)に出向き、そこでシリア入国ヴィザを購入して戻ってくることになります。語学学校に長期で登録している場合は、学校が代行して滞在許可を取ってくれるようですが、わたしはいつも2ヶ月更新を自分で行っていました。
   
いままで私はマルジェ広場のそばにある移民・パスポート管理事務所(警察の管轄)で手続きしていました。バラムケ地区にも事務所はあるけど、手続きに必要な書類が多く煩雑だと聞いていたので避けていたのです。マルジェでの手続きは簡単でした。持って行くものはパスポートとそのコピー(写真とヴィザのページ)だけ。証明写真もいらない。初めて手続きしたときに書いた覚書によると、こんな具合です。

(マルジェの移民・パスポート管理事務所での滞在許可更新手続きマニュアル)

1. 事務所脇にあるお店で5リラ(約10円)払って収入印紙{注:値上がりしたかも しれない}を買う。ここでパスポートのコピーも出来る。

2. 事務所に入り、受付で申請用紙を買って必要事項を記入する。この用紙は25リラ{注・最近100リラに値上がりした。一気に4倍とは、豪気な値上げですね}。

3. 階段を2階分上ってすぐ左の部屋に入り、奥に座っているおじ様に用向きを言って、用紙にサインしてもらう。

4. 階段を1つ分降りて、正面にある、外国人で混雑した部屋にもぐりこんで一番奥の小部屋まで行き、サインをもらい、コンピューターでチェックしてもらう。

5. その部屋の手前にある広いほうの部屋へ出て(といってもやっぱり狭い)外国人の海の中をクロールし、すみっこのコンピューターの前に陣取っている係員のところにたどり着いたら、書類を渡してデータ入力してもらう。

6. コンピューターが済めば、そのすぐ脇のデスクに座っている、温和そうな顔(主観だが)をした係員に書類を渡す。彼がこの業務の中心人物である。申請書の上にいろんなことを手書きしてくれるが、達筆なので私には読めない。この係員の周りには常に大勢の人たち(イラク人とか)が群がっているので、なかなか順番が回ってこない。そばにいる太ったおじちゃんのお腹を眺めたり、汗のにおいを嗅いだりして暇つぶしをするべし。

7. その後再び階段を上がって最初の部屋のお隣の広い部屋に入り、ジェネラルと呼ばれる、やや威厳のあるおじ様にサインをもらう。

8. また階段を降りて、さっき色々記入してくれた温和そうな係員のところに戻る。今回彼はパスポートにスタンプを押し、日付や更新期間を記入してくれる。

9. 同じ階のつきあたり、右から2番目の部屋にいるムディール(所長)に書類を渡し、パスポートにサインをもらったら、あがり。

いつもこの手順かというとそうでもなくて、その時々によってディテールが違うのがなかなか心憎い感じでした。シリアってあなどれない。午前中は混むけど、1時過ぎくらい行くとすいていました。色々たらい回しにされるものの、結局30分ほども辛抱すればその場で更新許可が下りるので、それほど悪くない状況だと思いました。イタリアの滞在許可更新に比べたら、「へ」でもないです、ホント。イタリアだと何度も出頭しないといけないし、お金もかかるうえ、申請してから許可が下りるのに1年以上かかったりしますからね。受け取ったときにはもう期限が切れてたりなんかして。ありえない国です。こちらの忍耐力を試すために、わざとこんな仕打ちをしているのかしら?と、私はいつも思っていました。

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