外国で一時的個人的無目的に暮らすということは

猫と酒とアルジャジーラな日々

埼玉のドバイレストランの未来

2017-05-30 16:22:03 | 日本における中東


まだ5月の終わりだというのに、やけに暑くてきびしいですね。
でも湾岸の砂漠の国ドバイは、もっともっと暑いはず。

ドバイと言えば・・・

先日、ドバイに行ってきた。
本物のほうじゃなくて、さいたま市浦和区のJR与野駅付近にひそやかに建っているハラールの中東料理店、「ドバイレストラン」のほうだ。

あのお店に行ったのはこれで2回目。
初めて行ったのは3月終わり頃で、2月の開店から1ヶ月くらい経った頃だった。

店主のユーセフ・ジュディさんはシリア系クルド人。反政府デモに参加したため命を狙われ、シリア北東部のカミシュリからはるばる日本に避難してきたそうだ。

(参考記事)「朝ごはんの現場 祖国シリアを離れて“平和”かみしめる朝ごはん」
https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2017/05/0510.html

私はこの店の存在を知った時から、「シリア難民が経営しているレストランの名前が、なぜドバイなのか」という疑問を抱いていた。そういう人は少なくないだろう。それで、前回訪れた時に彼に聞いてみたら、「ドバイが好きだから」と目を輝かせて教えてくれた。何もない砂漠から、大都会である現在のドバイをつくりあげたムハンマド首長を大変尊敬しているとのことで、料理に使用しているスパイスなどもドバイから取り寄せたものらしい。ドバイから取り寄せても、原材料はインド産なのでは・・・という指摘もあるが、それはさておき、彼のドバイ愛はよく伝わってきた。


ドバイLOVEのジュディ店長。UAE大使館がこれを知ったら、贔屓にしてくれないだろうか




今回は日曜の夜だったせいか、お店にいたのはジュディさんだけだったが、前回はトルコ出身の若い料理人、給仕担当のダマスカス出身の男性(2人ともクルド人)、そしてお手伝いをしているという日本人の女性もいた。みな感じが良くてにこやかだった。(料理人の彼とは顔を合わせていないが)

では、ここらでお店や料理の写真をご紹介しましょう。ボケボケのやつもあるが、軽く流して頂ければ幸いだ。


マイホームにお父さんが日曜大工で物置を建て増しした、というかんじのスペースが実は中東料理店という意表をついた設定




手作り感満載の内装。中東感は水タバコでさりげなくアピールか




メニューはこんなかんじだが、ファラーフェルが登場したり、イベントや母の日特別メニューを設定したりして、常に新しい工夫が見られる




カリッと揚がったファラーフェルの豪華プレート、テイクアウトしてから温め直しても美味しいそうだ。中国っぽい器がミスマッチでステキ




看板メニューのケバブドバイセット。薄いホブズ(アラブパン)に包まれたシリア風のシャワルマ(=ケバブ)サンドイッチで、ヨーグルトソースをつけて食べる




これがホブズ(アラブパン)。シリアのものは紙のように薄いので有名。お皿にしいたり、料理にかぶせたり、ちぎってディップ類やおかずをすくったりと、多方面で活躍している。主食であると同時に、料理の具であり、お皿であり、フタでもあり、スプーンでもあるという具合。




こっちはケバブライス。丼に入れたらケバブ丼か。そういえばトルコ人のケバブ屋さんでも、ケバブ丼は定番ですね




ひよこ豆のディップ、「ホンムス」(=フムス、ホンモス)。本場の味。ホブズですくって食べる。




日本人好みの焼きナスのディップ、「ムタッバル」。タヒーナ(ゴマペースト)がたっぷり入っていて濃厚




アラブ風の米入りロールキャベツ、「マルフーフ」。(メニューには「ヤブラ」と表記されている) 家庭の味



これはブルグル(砕いた小麦)をベースにした生地で羊のひき肉などを包んで揚げた「クッベ」



カルダモンの香り高いアラビックコーヒー。この日は自家製のココナツクッキー付き。他にも紅茶やジュース類が色々ある。ジュディさんは敬虔なムスリムなのでお酒は置かない。私としては心底残念だが、お酒を飲まない人には完全ハラールはありがたいかも。なにしろ、酔っ払いはうるさいからね・・・




ファラーフェルやケバブ、ディップ類がとても美味しく、しかも東京の中東料理店よりずっと値段が安い貴重なお店だ。

しかし、お店側がフェイスブックのページに書いていたところによると、経営状況が悪く、6月の終わりにはこのまま続けるか、あるいは閉店するかどうかを決断しなければいけない状況なのだそうだ。そのせいか、ジュディさんは2ヶ月前に会った時よりも元気がなく、お客様が少ないと寂しそうに言っていた。

やはり埼玉の住宅街の中というロケーションがいけないのだろうか。ラマダーン中にモスク周辺に屋台を出したらどうだろうとか、イベントに出店したら儲かるんじゃないかとか、ケータリングを始めたらどうかとか、友人たちの間では色々意見が出ているのだが、現実的に実行可能かどうかわからないので、お店側に提案するには至っていない。

クルド人コミュニティの支援が受けられたらいいのだが、ジュディさんはシリア出身のクルド人で、トルコ系のクルド人コミュニティとは集団レベルでの交流はない様子。知人によると、シリア出身のクルド人は埼玉県の浦和周辺に、トルコ出身のクルド人は同じ埼玉でも川口・蕨周辺に多く住んでいるとか。少し距離があるのだ。私は最近トルコ系クルド人の女性や子供たちと話す機会が多いのだが、中にはシリアにクルド人がいることすら知らない人もいるのだ。だいたい、クルド人のお母さんたちはパンでもヨーグルトでもチーズでも、何でも手作りしちゃうから、レストランに行ったり注文したりしなさそう。

そんなわけで、ドバイレストランの行く末は今のところ靄に包まれている。
潰れずに、何らかの形で存続して欲しいものだ。私のためにも・・・


食べログ情報
https://tabelog.com/saitama/A1101/A110102/11044302/



(おまけ)

夏のさわやかペコちゃん。ペコちゃんの写真を撮るのは、私のライフワークのひとつ(うそ)





















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多言語翻訳をやるということ~カオスのキーボード編

2017-05-28 05:19:30 | 多言語学習・翻訳関連


私は現在、いちおう多言語翻訳を生業としている。
専門はアラビア語、イタリア語、トルコ語の3つだ。
仕事の大半はアラビア語関係だが(だから「いちおう」とつけた)、イタリア語やトルコ語の仕事も、昔の恋の記憶のように、忘れた頃に不意にやってくるので侮れない。

外国語のスキルは、ほうっておくとすぐにへなへなとしぼみ、やがて使い物にならなくなる。
私のように、ハーフのバイリンガルでも帰国子女でも国際結婚したわけでも仕事で外国に定住したわけでも語学の才能に恵まれたわけでもなく、大人になってから好き好んで、じみじみと語学を身につけた人間の場合はなおさらである。その上私は、初めて会った人の顔も名前も、別れの挨拶をして背を向けた瞬間に失念するレベルの記憶力の持ち主なのだ。年齢的な問題もあるし、語学力を維持するには努力が必要だ。

そういうわけで、趣味と実益を兼ねて(実際には半分以上が趣味)、毎日ネットで各言語のニュースをざっとチェックしたりして、言語知識のリフレッシュに努めてるわけだが、ここでパソコンさんのキーボード問題が浮上する。


ニュースの中で意味が取れなかった単語や表現をオンライン辞書で確認したり、同じ内容を扱っている他の複数言語のメディアの報道を参照して詳しく調べたりする時、当然グーグルなどで検索するためキーワードを打ち込むわけだが、多言語でそれをやる場合、少し気を抜くとカオスが生じ、2倍3倍の手間・時間がかかることが多いのだ。

具体的に言うと、検索をかけるとき、ついツールバーの言語(日本語・英語・アラビア語・トルコ語)を切り替えるのを忘れて、英語を打っているつもりでアラビア語を打ち込んでいたり、アラビア語を書いているつもりで日本語を書いてしまったりするのだ。カオスだ。

私のパソコンさんは普通に日本で買ったものなので、キーボードに書かれている文字は、かなとローマ字だけだ。しかし、アラビア語を打つときにキーボードに文字表記がないと困るので、透明なシールのシートの上にアラビア語のアルファベットをプリントアウトしたものを切り抜いて、各キーの上に貼り付けている。イタリア語には、文字にアクセント記号がくっついている特殊文字もあることはあるが、普通のローマ字を打ったあとにアポストロフィーをつけて代用しても問題はないので楽だ。トルコ語も基本的にはローマ字でOKだが(ケマル・アタトゥルクの文字改革のおかげだ)、中にはOやUの上に点々がくっついていたり、CやSの下にヒゲがついていたり、Gの上にVサインがくっついていたり、iの上の点がなかったりするトルコ語特有の文字がいくつかある。これはキーボードの上にマジックで手書きして凌いでいる。

つまり、私のパソコンさんのキーボードの上には、もともと印字されている「かな」やローマ字に加えて、シールのアラビア語と手書きのトルコ語の文字が共存するわけだ。しかし、時が経つにつれてシールに印刷された文字の一部(よく使うやつ)が薄れて解読不能になり、なおかつ剥がれかけたりゴミがくっついたりして、見た目も大変むさくるしい。トルコ語の手書き文字も、もはやほとんど消えかけている。でも今さらシールを貼り直したり、書き直す気力もない・・・その結果、アラビア語を打つとき、ファーを出そうとしてアインを打ってしまい、あっ違った!と直そうとしてガインを打ってしまい、今度こそと思って気合を入れて打つと、勢い余ってカーフを出してしまい・・・という愉快な儀式をしょちゅうやる羽目になる。(マニアックな話ですみません)トルコ語に関しては、あえて特殊文字を使わず、ローマ字で代用して打つという横着なやり方を身につけてしまった。幸いなことに、SNSの普及に伴ってトルコ人でもそうする人は増えてきたので、公式な文書を書くとき以外、特に問題はない。

それぞれの言語のブラインドタッチができれば、キーボードの使用に関する問題は生じないはずだが、日本語のブラインドタッチができない人間が、アラビア語のブラインドタッチをしようと考えること自体、おこがましい気がする・・・最近のパッチパネル式のパソコンだと画面にキーボードが出るから、それを触ればいいのだろうが、ローテクな私にはよくわからない。

以上で述べたように、私のパソコン入力はカオスの王国なのだが、最近は手書き文字にもその傾向が出てきた。アラビア語や日本語でメモを取ろうとしても、気を抜くとローマ字が混ざったりするようになってきたのだ。脳みその切替機能が壊れてきたのかもしれない。イタリア人の多言語通訳者兼作家のエッセイに、「多言語を使用する人には精神分裂症の傾向がある」というようなことが書いてあったように思う(うろ覚え。私の場合は精神分裂ではなく認知症の傾向か)。私にも、脳に負担をかけて複数言語を使っているツケがいつか来るのかもしれない。っていうか、もうすでに来てるのかしら・・・?



(おまけ)

関係ない近所のネコ写真。しばらく前に撮ったやつ















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クルドの新年のお祭りネウロズ2017 in 川口

2017-05-26 17:19:06 | クルド

またまたご無沙汰していました。
時間が過ぎるのは、なぜこんなに早いのだろう。私の内なる世界と外界では時間の流れ方が違うかのよう・・・

というわけで、もう2ヶ月以上経ってしまったが、3月20日にJR川口駅東口のキュポ・ラ広場(なんでポとラの間に中黒があるんやろ)で開催されたクルドの新年のお祭り、「ネウロズ」のイベントの写真を載せます。Newroz pîroz be! ネウロズおめでとうございます!(遅いやつ)

2016年のネウロズについて書いた記事はこちら。去年の会場は蕨市民公園で、広くて緑豊かでよかったけれど、音がうるさいと近隣住民から苦情が出て会場を変えざるを得なかったらしい。まあ開催されただけでもよしとしよう・・・こちらは駅前なので移動に便利ではあった。


2017年のネウロズの様子は以下の通り。但し、私は終了時間の14時ぎりぎりに行ったので(それでも一生懸命早起きしたのだ。我ながらなんてエライんだろう)、特別のパフォーマンスなどは見られず、販売されたクルド料理も全て売り切れており、皆さんがひたすら踊っているのを撮ることしかできなかったので、ご了承くださいませ。


なんの変哲もない埼玉の駅前が、非日常的な異国の祝祭空間に早変わり。ほとんどシュールレアリズムの世界



片隅に設置された舞台。会場側の指示で、今回はクルドの政治的なスローガンや旗はなし



上には見物人がずらり



男性も踊る。ダボダボのズボンがかわいい。背後に咲いているのは安行寒桜



かわいい子供がいっぱいいた。みんなまつげが長くて目元ぱっちり



お姫様みたいな女性多し。この服は年一回しか着ないのだろうか、洗濯は手洗いだろうか、と去年と同じことを考える私



1台だけ止まっていたケバブワゴン。ケバブの屋台にカメラを向けると、お店の人が瞬時にそれを察知して、カメラ目線になる確率が非常に高いのはなぜなのか



終わった後に駅西口の公園を散歩していたら、小さなお姫様たちに出会ったので記念撮影。日本育ちで日本語ぺらぺら。この子達、アイドルグループを結成したら売れるのでは




(おまけ)

近所の駐車場の猫、たま2号。かつてはうちの裏の猫椿公園を根城にしていたが、最近はもっぱらこちら。野良なのに肥満が進み、そのせいで身づくろいが大変なのか、かなり薄汚れてきた・・・でもかわいい




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