外国で一時的個人的無目的に暮らすということは

猫と酒とアルジャジーラな日々

ヨルダン名物「自家製ワイン」とは

2014-04-14 00:41:10 | ヨルダン(猫中心)


ヨルダンのワインが美味しいことは、以前の記事に書いた。
そして、他のお酒と同様、ここではワインがお高いことも書いたように思う。
しかも最近酒税が上がったので、一番安い「MOUNT NEBO」でも、1本11JDするようになってしまった・・・。
とっても、かなしいことである。

しかし、あまり知られていないことだが、ヨルダンには全国規模で販売される工場生産のワインとは別に、
「自家製ワイン(ナビーズ・バイティー)」と称される、ワイン風のアルコール飲料が存在するのだ。

私がその存在に気がついたのは、たしかマダバの酒屋だった。
当時、まだヨルダン滞在歴が浅かった私は、ヨルダン各地にその土地特有の地ワインがあるに違いない、という幻想を抱いていた。
キリスト教徒が多いといえばマダバだろう、と考えた私は、マダバ観光に行った帰りに酒屋に寄って、「地ワインありますか」と聞いてみたのだ。
そしたらお店のおっちゃんは、「ああ、自家製ワインのこと?あるよ」と無造作に言い、店の奥からそれを出してきたのだ。

その「自家製ワイン」は、工業規格品と外見からして違っていた。
コルク栓付きのワインの瓶ではなく、ウイスキーやブランデーやアラクなどの空き瓶に入っていたのだ。
つまり、栓は開封されていて、ワイン以外の酒のラベルが貼ったままの状態。
ワインの製造日や製造地や原材料などは一切不明だ。
瓶の中の液体は透明度の高い暗赤色で、普通のワインよりぶどう液の濃度が薄そう。
底の方には、オリのようなものがじわっと沈殿している。


私が買った自家製ワイン アラク(アニス風味の無色透明な強い酒)の空き瓶に詰められている。



「甘口と辛口があるけど、どうする?」と聞かれたので、辛口をお願いした。
なにしろ瓶に表示がないので、おっちゃんがハイ、と渡してくれたものが辛口の自家製ワインだと信じるしかない。
内容表示のラベルがなく、すでに開栓してある瓶入りの液体を買うのって、けっこう勇気が要るものですね・・・。

お値段は1本6JDと、通常のワインよりずっと割安だった。
その理由は材料費・加工費の安さと、酒税がかかっていないことだと、私は推測する。
使用済みの空き瓶に詰めて売られているお酒が、食品・飲料関係の法律(ヨルダンにもあるにちがいない)に適合するとも思えないから、おそらく非合法なのだろう。

家に帰ってグラスに注ぎ、一口飲んでみると、辛口というだけあって、甘味の一切感じられない尖った味だった。
通常のワインよりアルコール度が強めで、少量で身体が暖まる心地がする。
美味しいとも不味いともいいがたい、独特の味だ。

これは、本当にワインなのか。
イタリアでよく飲んでいたあのワインと、同じ名前で呼んでいいものだろうか。

その後のさらなる研究(=各地の酒屋めぐり)の結果、カラクとフヘイスでも入手できることがわかった(ただし、どちらも甘口のみ)。
マダバもカラクもフヘイスも、ムスリムが圧倒的多数派のヨルダンにありながら、キリスト教徒が比較的多い地域ですね。
特にフヘイスは、ヨルダンでキリスト教徒が住民の過半数を占める、唯一の町という話だ。
やはりキリスト教徒が比較的多い町、サルトでも売られていたという情報もある。
私が行った酒屋には置いてなかったが、探したらサルトでも見つかるのかもしれない。
そういえばマダバでも、この商品を置いているお店と、そうでないお店があった。
1軒の酒屋で、「自家製ワイン?そんなものはこの世界には存在しない。法律違反だ!」と断言されても、
次の店であっさり見つかることが往々にしてあるので、ヨルダンはあなどれない。
ちなみに、どこで買っても味は同じだった。
原材料と製造法が同じなのだろう。
値段もどこでも同じで6JD、他のお酒の空き瓶を使うところまで一緒だ。

この「自家製ワイン」、特に美味しいとはいえないが、何しろ安くてアルコール度が高い(たぶん)のが取り柄である。
そんなわけで、私はときどきマダバかフヘイスまで、わざわざこれを買い出しに行ったりしている。
でも移動に時間がかかるし、帰りが重いのが難だ。
ああ、アンマンでも誰かこれを売り出してくれないだろうか?

しかし、考えてみたら、これは実は自分で簡単に作れるのかもしれない。
アルコールが自作できたら、家計が随分楽になるに違いないのだが・・・。


関係ないけど、最近よく飲んでるアラクはこれ。アラクの瓶ラベルは、なぜか風情のあるものが多い。
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「スリランカ産モルジブフィッシュ」でかつおダシをとる

2014-04-05 00:29:39 | ヨルダン(猫中心)


しばらく前、スリランカ内戦や、同地のムスリムの状況について興味を持ち、ネットで少々調べたてみたことがある。
その際、ついつい調査対象が脇道にそれて、スリランカ料理のサイトをハシゴし、うっとり眺めたりしたものだ。
だって、なんだか美味しそうなんですもの…。

その時ですよ、モルジブフィッシュに関する説明が目に入ったのは。

なんでも、スリランカ産のモルジブフィッシュ(MALDIVE FISH)の乾物は、日本の鰹節の代用品として使え、和風ダシが取れるそうなのだ。
「スリランカ産モルジブフィッシュMALDIVE FISH(かつお節/荒節)」をネット上で販売しているショップもある。(ここ
ウィキペディアの鰹節の項目を見ると、「鰹節・モルジブ起源説」まであるらしい。

私は現在ヨルダンの首都アンマン在住だが、ここで和食材を手に入れるのはそれほど容易ではない。
キッコーマンの醤油だけは、大抵のスーパーや食料品店で気軽に手に入るが(余談だが、このキッコーマン醤油の世界的普及ぶりは、一体どういうわけだろう?寿司人気のせいか、それともアジア移民のおかげか…)、それ以外の食材は種類が少ないし、かなり割高なので手が出ないのだ。

しかし考えてみると、醤油と鰹節さえあれば、炒め物・煮物・汁物(味噌汁を除く)などの基本的な和食はクリアーできる気がするのだ。
大抵のものは、現地の食材で代用可能なんじゃなかろうか。
例えばみりんや酒は砂糖で、そうめんは極細スパゲッティ(カペッリーニ)で代用、といった具合に。
うどんは小麦粉から手作りできるし(面倒だからやらないけど)。
海苔とか豆腐、納豆なんかはちょっとハードルが高いですけどね…。

そんなわけで、モルジブフィッシュの乾燥物を購入して、それがどの程度鰹節に近いのか、確かめてみることにした。

私が住んでいる地域には、フィリピン移民が大勢住んでいて、その辺の食料品店にフィリピン食材がずらりと並んでいる。
そして、ここにはスリランカ移民も少なからず存在し、スリランカ食材も豊富に手に入るのだ。
日本人は私くらいのようだが…。

アジア食材の品揃えでは一番と思われる、近所のミニスーパーへ行ってみたら、「モルジブフィッシュ・チップス(MALDIVE FISH CHIPS)」なるものが、あっさり手に入った。
焦げ茶色の乾燥魚のチップが小袋に入っていて、ラベルにスリランカの言語のものと思しき、謎の丸文字が書かれている。
これとキッコーマンの醤油を買ったら(うちにはフィリピン製フィッシュソースしかなかった)、準備OKだ。


モルジブフィッシュ・チップ



家に帰って猫に見せたら、匂いを多少嗅いでいたが、あまり興味を示さなかった。
何しろうちの猫はヨルダン猫だからねえ…。
夕食のメニューとして、これでだし汁を作り、麺を投入して煮ることにした。

鍋にお湯を沸かし、モルジブフィッシュ・チップをバラバラ投入すると(目分量っていうか、てきとう)、少し経ってから、お湯がうっすら茶色に染まり、いい匂いが漂い始めた。
うどんや蕎麦の出し汁の、あの懐かしい匂いだ。
おお、鰹節の仲間だという情報は、やはり本当だったのか!と気分が高揚する。
本当はここで一度、ザルで漉したほうがいいだろうとは思ったが、面倒なので省略し、ダシをとったあとのチップはそのまま鍋底に放置した。
出し汁の味付けは醤油と砂糖でやる。
もちろん配分はてきとうだ。


チップをお湯に投入



野菜を入れたほうがいいだろうと思い、ズッキーニの千切り(限りなく乱切りに近いけど)と、コリアンダーの葉っぱをちぎったものを具にした。
本当はもっと和風の野菜を使うべきなのだろうが、こっちのほうが、「外国人が作った間違った和食」ぽくて楽しいかなと思ったのだ。
さらに、うちにあったカルフール製の極細スパゲッティを投入して、混ぜながらぐつぐつ煮る。
最後に卵を落として、画竜点睛といこう。


完成品



見た目はあまり優雅ではない、というか、どちらかというと見苦しい仕上がりだが、食べてみると意外にいける。
確かにかつお風味の出し汁で、全体としては「にゅうめん」に近いかんじだった。
これを食べた日本人の大半が、「これは確かにかつおダシの味ですよ!」と言ってくれること間違いなしね!
(いや、少なくとも半分くらいの人が言ってくれると思うんだけど…ちょっと自信なくなってきた)
出し殻のモルジ節(鰹節の代用品のモルジブフィッシュだから、こう命名しました)のチップは固くてなかなか噛みきれず、味がなかった。
これは食べない方が無難だろう。

ちなみに、モルジ節を買ったお店には、「茶色く粉を吹いた煮干」のようなものや、「茶色いチリメンジャコ」風の乾物も売られていた(どちらもフィリピン製)。

そのうち気が向いたら、これらも試してみたいと思います。
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アンマンのダウンタウンの安食堂「ヤー・ハラー」

2014-04-02 15:45:55 | ヨルダン(猫中心)


アンマンで安食堂を見つけるのは、私の使命(または趣味)のひとつだ。

ヨルダンで安食堂というと、ファラーフェル・ホンムス専門店や、焼肉専門店(鶏の丸焼き、羊肉の串焼きなど)、シャワルマ・肉系サンドイッチ屋さん等が主流だ。
これはこれでもちろん美味しいのだが、外食するときいつもファラーフェルかホンムスかシャワルマか串焼き、というのは飽きるし、胃にも負担がかかる。
やっぱり野菜のたっぷり入った優しい味の煮物が食べたい時って、あるじゃないですか。
でも、野菜料理・煮物を出す安食堂は、ここでは貴重な存在で、そうおいそれとはお目にかかれないのだ。
だからといって、中級以上のちゃんとしたレストランで食べる経済的余裕は、私にはない。
それに、こぎれいでお洒落なレストランとかって、なんだか体質に合わなくて居心地が悪いし。
結局、外食を避けて、いつも自炊することになりがちだ。

しかしこの世界においては、腰を入れて本気で探せば大抵のものは見つけられると、私は知っている。

というわけで、街を歩くとき常にキョロキョロと周りに目を配り、煮物系安食堂の探求を怠らなかった。
(というのは誇張で、なんとなく目を配っていただけですが)

そうして見つかったのが、ダウンタウンの市場周辺にある、「アンワール・アル・クドゥス」。
ここは安食堂のお手本みたいなお店である。
どれも安価なうえに、味も抜群によく、メニューもファラーフェル・シャワルマ等のアラブ共通ファーストフードから、マンサフ・マクルーベといったヨルダン郷土料理、オクラやインゲンのトマト煮などの家庭的野菜料理まで、非常に幅広い。
この店は地球の歩き方に「アンワール・アル・コッズ」という名称で載っているので、参照していただいたらよろしいかと思います。

「アンワール・アル・クドゥス」があれば、もはや外食に困ることはないので、その後、私の安食堂探求熱はとろ火になっていたのだが、最近、別の安食堂を偶然発見した。

それは「ヤー・ハラー」(アラビア語の口語で“ウェルカム”の意)という名前の、こじんまりした(=狭苦しい)食堂で、野菜・果物市場付近にある。
アンマンのダウンタウンの中心ともいえるフセインモスクを正面に見て、左脇の路地を入ってまっすぐ進み、突き当たりの手前の右側にある(私の記憶が正しければ・・・)。

この店は、以前から何度も目にしたことがあるのだが、店の佇まいからなんとなく、「どうせよくあるファラーフェル・ホンムス食堂だろう」だと勝手に決めつけ、入ってみたことがなかったのだ。

しかし先日市場帰りに、この店でホンムスを買っていこうと思いついて、初めて足を踏み入れたとき、ガス台のフライパンの中でトマトがグツグツ煮えているのを目にして、激しい衝撃を受けた(大げさ)。

こ、ここはもしや、私が思い込んでいたような、ただのホンムス食堂ではないのでは?

カウンター内のおじちゃんに聞いてみたら、ホンムスもあったので、とりあえずホンムスをテイクアウトでお願いしてから、ガラスの仕切りの向こうに並んでいる料理を観察した。
米料理2種、インゲンのトマト煮、コフタとジャガイモとトマトのオーブン焼き、鶏の丸やき、ジャガイモの入ったトマト色の野菜煮込み、そして先述のトマトのオリーブオイル煮らしきもの・・・。
トマトの活躍ぶりが目立つ。
ううむ、これは間違いなく煮物食堂だ(煮物じゃないものもいっぱいあるけど)。
こんなところに探していたものがあったなんて・・・灯台下暗しとはこのことね。
いや盲点だった、私としたことが。
はんせい、はんせい。

トマトのオリーブオイル煮も追加で注文し、テイクアウトすることにした。
1食分1JD(140円~150円)、けっこう分量が多い。
うふふ~

私は浮かれ気分で店を後にし、せかせかと家に帰った。
そして冷めないうちに、さっそくトマト煮を食べてみたのだが、予想を遥かに超えて美味しかったので驚いた。
(つまりそれほど期待はしていなかった。おじちゃんに失礼だったか)
完熟トマトをたっぷりのオリーブオイルでじっくり炒め煮した感じの、まろやかなお味。
こういう食べ物、イタリアで食べたことがある。
パスタソースにしても合いそうだ。
けっこう唐辛子が効いていて辛いけど、私は辛いものが好きなので問題ない。

ホンムスもうちの近所の店より美味しかった。
次回はぜひ他の料理にもトライしてみたいものである。
そして、テイクアウトじゃなくて、お店に座って味わいたい。

私が行ったのは夕方7時近くで、他にお客はおらず、料理はだいぶ残り少なくなっていた。
ロケーションから察するに、あの食堂は市場関係の労働者御用達で、市場や周辺のお店が締まる頃には、閉店してしまうのだろう。
ということは、狙い目はお昼ご飯かしら?
よく見たら、お店の看板にも小さく、「毎日のお昼ご飯各種」って書いてあるし。

今回の発見で、ダウンタウンの市場付近では安食堂がみつかりやすいことを再確認した。
他にもきっとあるに違いない。
そんなわけで、今後も探求を怠ってはいけないと、志を新たにした次第でございます。
・・・もうちょっと役に立つことに、エネルギーを使うべきなんだろうが・・・。









コメント (2)
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