外国で一時的個人的無目的に暮らすということは

猫と酒とアルジャジーラな日々

2022年イタリア・ヨルダン・トルコ周遊記(19)~ヨルダン6日目・ザルカ日帰り~

2023-09-27 19:55:37 | ヨルダン(猫中心)

 

 

ヨルダン6日目は、日帰りでザルカに出かけた。特に目的はなかった。

 

 

ザルカはアンマンの右斜め上(Az Zarqa'ってやつ)

 

 

ザルカはザルカ県の県都。アンマンに次いで人口の多いヨルダン第2の都市で、国内の工業の中心地だ。ヨルダン最古のパレスチナ難民キャンプがあり、西岸地区から避難してきた等のパレスチナ人の人口が多いことで知られている。

 

観光名所がほとんどない(ちょっとはあるらしいが見たことない)、ごく普通の街なので、ザルカを訪れる観光客はまずいないと思う。私のような、ヒマで物好きな人以外は…

 

ちなみにザルカは、ISの礎となるサラフィー・ジハード主義のイスラム過激派組織を創設した国際的に有名なテロリスト、アブー・ムスアブ・アッザルカ―ウィー(أبو مصعب الزرقاوي)の出身地だ。

 

 

 

 

 

この写真を見たことある人、けっこういるのではなかろうか。2004年のイラクでの邦人人質殺害事件の犯行声明を出した武装集団が彼の率いるグループだったから、当時ニュースによく出ていたのではないかと思う。私はその頃イタリアにいたので、日本のニュースは見てないのだが。

 

 

あ、でもザルカの街自体はごく平和で、住民がフレンドリーで良いところなのだと強調しておきたい。ほんとよ~

 

 

閑話休題…

 

 

私は以前ヨルダンに住んでいた頃にも、一度台湾人の友人とザルカを訪れたのだが(彼女が行こうと言い出した)、2人でスーク(市場)をウロウロして店を冷やかし、どこかの食堂でご飯を食べただけで終わったような気がする(もうよく覚えてない)。ただその時、市場が大きくて(というか細長くて)、人々がフレンドリーで楽しかった記憶があるので、今回また訪れてみようと思いついたのだ。

 

この日は比較的早起きしたが(と言っても9時)、出かけたのは12時近かった。洗濯してツイッターをしていただけなのに、時を駆けたのか?

 

まずラガダン・バスターミナルに出て、ザルカ行きのミニバス(الزرقاءと書いてある車体)を探す。

 

 

ラガダン・バスターミナルには、今回毎日通っている気がする。

 

 

敷地内のジューススタンドで、人参の生絞りジュースを飲んでからミニバスに乗った。生ジュースはビタミンが取れるので、旅行中は一日2杯ほど飲んでいる。私はヘルペス持ちで、ビタミンが不足すると口の周りに出るのでいつも気を付けているのだ。人参ジュースは0.55ディナール(約115円)、ザルカまでのバス代は0.5ディナール(約105円)と、ほぼ同じ値段だ。アンマンとザルカは約25㎞しか離れていないから、運賃も安い。

 

 

道中には特に何もなく、砂漠気候の埃っぽい土地が広がっているばかりだ。

 

 

30分くらいでザルカに着いたと思う(うろ覚え)。バスターミナルからスークの方に歩いている途中に、「新型コロナワクチン接種会場」という垂れ幕のある学校っぽい建物があった。ザルカ・パレスチナ難民キャンプの施設らしい。

 

 

ザルカのスーク(市場)へはバスターミナルから歩いて数分だ。

 

 

手作り感満載の質素なスークだが、店が多くて賑わっている。

 

 

ここはザルカ・パレスチナ難民キャンプの人達が運営しているスークらしい。知らずに歩いていたが、お店の人が教えてくれた。この地域一帯が難民キャンプで、スークはその中にあるのだ。難民キャンプと言っても、ここは年季が入っているのでテントなどはなく、ごく普通のアパートがや商店が立ち並んでいる住宅街で、一見難民キャンプだとは分からない。キャンプ外との境目もない。出来てからまだ十年余りしか経っていないシリア難民キャンプとは違う。

 

 

伝統的な装束でジュースを売るおじいさん

 

 

暑いので、冷たいジュースが飲みたくなる。

 

 

物欲しそうに見ていたら、通りすがりの人がタマルヒンディ(タマリンドのジュース)をおごってくれた。ザルカ、いい所だな…

 

 

婦人服店

 

山積みで売られているので、古着の店だろう。きっと激安だ。ぶら下がっているアバヤ(黒い上着)、お葬式や法事用に一着買っておけばよかったかな?でも、日本のお葬式にアバヤで現れたら、浮くかな…

 

生きた鶏を売る店

 

 

自分たちの運命を予感してそうな鶏さんたち…

 

 

インゲンと葡萄の葉 葡萄の葉巻き料理はみんな大好き

 

 

せんべいっぽいスナック

 

 

ひしゃげ桃(蟠桃)の屋台

 

 

デジカメを構えて写真を撮っていると、子供やお店の人たちに「僕を撮って!」「僕も!」「俺たちも!」と頼まれ、撮影大会になった。ヨルダンあるあるだ。(後で送った)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話しかけてくるのは大半が男性陣だったが、中には女の子もいた。微笑みかけてくれる主婦らしき買い物客の女性たちもいた。アンマンではそういうことはあまりない。全体的に、ザルカの女性はアンマンよりもフレンドリーな人が多い印象だった。

 

 

難民キャンプのスークを抜けて、周辺を散策する。日差しが強くて、溶けそうになりながら…

 

 

 

 

またも寄ってきた子供たちの「写真撮って」攻撃にあう。かわいい。

 

 

教会もあった。

 

 

ヨルダン国民はムスリム(大半がスンニー派)が9割以上で、キリスト教徒は2%程度。特にザルカの住民は殆どがムスリムのはずだが、キリスト教徒も少数派ながら存在しているらしい。

 

 

線路の遺跡らしきもの

 

 

オスマン帝国時代に建設され、シリアのダマスカスからサウジアラビアのマディーナまで伸びていたヒジャーズ鉄道の遺構かもしれない。ヒジャーズ鉄道はたまに期間限定でアンマン・マフラク間を走っているらしい。ということは、この線路は現役なのか?とてもそうは見えないが…

 

 

建物が簡素で間隔が狭い。

 

 

本来のパレスチナの形がくっきり浮き出た壁

ドアのところも穴もパレスチナっぽい形だった。

 

 

(参考)イスラエル建国(1948年)前後のパレスチナの領土の変遷

 

 

 

存在感のある街角の壁画

 

 

こういった壁画はアンマンを中心にヨルダンで近年増えており、殺風景な街の風景の中で奇妙な輝きを放っている。

 

 

私を見てエサを催促した猫さん

影もかわいい。

 

 

行ったのが暑い昼間だったので、ザルカではあまり猫を見かけなかったが、この猫は日差しの中をエサを探して歩き回いていたようだったので、手持ちのカリカリをあげた。水もあげたかったが、入れ物がなかった。

 

 

歩いているうちに、ペットショップを発見。

 

 

入ってみたら、タイ製のちゅ~る類似品があった。

 

 

4本入り1袋で3JD(約600円)。ヨルダンでは、類似品であってもちゅ~るは高級品なのだ。ばら売りもあって、1本0.75JD(約150円)と袋入りの1本単価と同じだったので、ばらで色々なフレーバーのを買う。

 

 

商店街の方に向かって坂を登ったら、やっと食堂が見つかった。

 

 

2階に座って、ムタッバル(焼き茄子のペースト)とペプシを注文する。パンとピクルスがセットで付いて来るし、私は昼はあまり食べないので、この位でちょうどいい。時間が遅いので他に客はおらず、静かでクーラーの利いた室内でゆっくり休むことが出来てありがたかった。

 

 

ムタッバル、美味しかった。

 

 

食べ終わったら少し元気が出たので、またその辺の商店街などを見て回ったが、しばらく歩くとまた疲れてきたので(すぐ疲れる)、もうアンマンに帰ることにして、バスターミナルに向かった。

 

 

途中で「鳥スーク」と書かれた建物に遭遇。

 

 

覗いてみたら、各種の鳩が檻に入れられていた。観賞用?

 

 

ウサギもいた。そういえば、ウサギは「1羽、2羽」と数えるな…

 

 

これはモルモットかな?

 

 

鳥スークからバスターミナルはすぐだった。またミニバスに乗ってアンマンに帰る。

 

 

 

 

ヨルダンのこういう風景が好き

 

 

ラガダーン・バスターミナルからダウンタウンに出て、ホテルに帰って昼寝した。

 

 

昼寝したらちょっと体力が回復したので、夕方また出かけて、まず近所の商店で知人に頼まれたものを買う。

 

 

ズッキーニをほじくるための道具。

 

 

この道具で中身を空洞にしたズッキーニは、米やミンチなどの具を詰めてトマト風味で煮る「クーサーマハシー」(كوسا محشي)という料理になる。これが嫌いだという人(日本人含む)を私は知らない。

(ネットで拾った写真)

 

 

アラブの焼き菓子「マアムール」(معمول)の木型もあった。

 

 

マアムールは中にデーツ餡やピスタチオ、胡桃などを詰めた、サクサクしたクッキーで、イード(イスラムの祝祭)の時に欠かせない。これもみんな大好き。

 

 

ヨルダンの高級菓子店「ザラティモ・ブラザーズ」(創業はエルサレム、1860年)のマアムールは、フジツボタイプの仕上がり。

自宅用には高すぎるので、贈答用に買うやつ。(HPから取った写真)

 

 

頼まれた買い物を済ませてから、バスに乗って第6サークル(ロータリー)に出て、その付近にある昔よく通ったカルフールに行った。今も営業しているかどうか確かめたかっただけで、特に目当てがあったわけではなく、一通り見てからキンダーのチョコ菓子だけ買って帰ってきた。

 

 

そのカルフールはショッピングモールの地階に入っている。

 

 

入口付近は野菜コーナー

 

 

アジア食材コーナーで昆布(KONBU)発見。高かったけど。

 

 

 

パスタコーナーではバリッラの箱が目立つ。

 

 

カルフールに通っていた理由は、他のスーパーに比べて割安な商品が多かったことだ。置いている商品のジャンルが広くて品数も豊富。ただし、酒類は置いていない。ヨルダンのスーパーは酒類を扱っていないので、買いたければ酒屋に行くしかない。

 

 

行きのバスもそうだったが、帰りもバスがなかなかつかまらず、ダウンタウンに戻ったらもう9時を過ぎていた。靴屋に猫を見に行くつもりだったが、遅くなったのでやめて、いつもの酒屋でアラクとビールを買い、ホテルのそばの店でシャワルマサンドを買って帰った。

 

 

私のいきつけの酒屋の外観

 

 

この日は、お店の若者にバドワイザーを勧められたのだが、バドワイザーは薄くて美味しくないので(私見です)、ヨルダンのペトラビールにした。

 

 

翌日はヨルダン最終日なので、今まで見そびれていたダウンタウンの看板博物館を見て、あとは街中を少し散歩する程度にするつもりだった。翌々日はトルコに移動なので、体力を温存しなければならない。

 

 

…といいつつ、気が付けば、猫に導かれて階段を上り、猫おじさんの家に招かれたりしたのだが。その話は次回。

 

 

(続く)

 

 

 



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2022年イタリア・ヨルダン・トルコ周遊記(18)~ヨルダン5日目・知人宅の美猫と猫助けの後日談~

2023-09-23 08:00:06 | ヨルダン(猫中心)

 

ヨルダン5日目は、朝10時過ぎに目覚めた。

 

前夜アラクを飲みながら寝落ちして、夜中起きて日記を書いたりして、朝方また寝たせいで遅くなったのだが、どうも日本での昼夜逆転生活に近づいている気がする。旅行中に昼夜逆転すると困るのだが…夜型人間だと言うと、「じゃあ、あちら(中東や欧州)に行ったら朝型になってちょうどいいね!」とよく言われるのだが、別にそんなことはなく、こちらでも数日後には昼夜逆転するのだ。

 

朝食代わりに果物を食べ、洗濯やPC作業などをしていて、気が付いたら午後1時を過ぎていた。旅行者なのに、我ながらのんびりしすぎだろう。

 

1時半頃に出かけて、近くの両替屋で日本円を両替したり、市場付近を歩いて、メロンジュースを飲んだりしてから、ヨルダン人の知人宅に向かった。お茶(コーヒー)の時間にお邪魔する約束だったのだ。

 

 

両替屋は「ウエスタンユニオン」の看板が目印

 

 

ダウンタウンには生絞りのジュース屋さんが多い

 

メロンジュースは牛乳と砂糖入りで、非常に甘かった。メロンが十分甘いので、砂糖はいらないと思うんだが。

 

 

市場の入り口付近のスイカの屋台

 

 

ヒマワリの頭部を売る店

 

 

ごまパンサンドイッチの屋台

 

 

ぷっくりしたごまパンの開きにクリームチーズを塗って、茹で卵やトマトなどを挟んでくれる。井桁のように組まれた細長いパンは買ったことがないが、焼いたごまが香ばしくて美味しいはず。

 

 

知人の家には、ダウンタウンからセルビスに乗り、近くで降りて歩いて行った。彼女は私より年配のヨルダン人の主婦で、かつて私がアンマンに住んでいた頃、スペイン文化センターのスペイン語講座で知り合った。旦那さんはドイツで修業した歯科医で、当時私のアパートの近所に小さな診療所を開いていた。一度、帰国前に歯の詰め物が取れた時、診てもらったことがあるのだが、彼は私が持って行った詰め物を見て、「やっすい材料使ってるな~」と笑いつつ、さくっと応急処置をしてくれた(無料で)。もしかしたら、ヨルダンの方が日本よりも歯科医師のレベルは高いのかもと思った瞬間だった。

 

 

道すがら目が合った猫さん

 

 

旦那さんが歯科医なだけあって、知人のマンションは高級住宅街にあった。玄関を入って、リビングに案内されている途中、台所を覗いたら、旦那さんがじゃがいもの皮を剝いていた。料理をするアラブ人男性は少ないはずなのに、さすがドイツ帰りだ(?)と感心する。知人が10日前に白内障の手術を受けて、まだオーブンを使う料理などは危なくて出来ないから、代わりに料理してくれているのだという。彼女の方は、「ああやってお客さんの前で、自分が家事をやっているところを見せびらかしたいのよね」と不満そうだったが。

 

 

夫婦2人暮らしなのに広々とした空間 

 

 

小テーブルに読みかけの「海辺のカフカ」のアラビア語版を発見

 

 

コーヒーとケーキをいただき、知人と近況を報告し合っているうちに、家事を終えた旦那さんもやってきた。旦那さんは当然、ヨルダンの経済状況のひどさについてひとしきり嘆く(ヨルダンの人は皆やる)。彼は、今は別の場所で診療所をやっているらしい。もうけっこう高齢なはずだが。

 

 

色々スパイスが入った美味しいケーキだった。(市販品)

 

 

おしゃべりしていたら、部屋の向こうから、なにか神々しいオーラを発する生き物が現れた。

 

 

夫婦の飼い猫の白猫さんだ。(名前は失念)

背後のプロパンガスのボンベが引き立て役になっている。

 

 

ふわふわの白い長毛に薄ピンクの耳と鼻先、そこに青い鈴が画竜点睛

 

 

この猫は高貴そうな見かけのわりにフレンドリーな性格で、初対面の私にぐいぐい近寄ってきて撫でさせてくれた。

 

 

フレンドリーすぎて、私用のグラスから水を飲んだくらいだ。

光栄ですわ…

 

 

皆で猫を眺めながらコーヒーを飲んだが、飲み終わってもお代わりが出てくる気配がなかったので、おいとました。知人は余ったケーキを土産に持たせてくれた。

 

 

アラブ人の家に招待された時、それがお愛想で言っているだけなのか、それとも心から誘ってくれているのか、判断が難しい。アラブ人にも本音と建前があるわけだが、それは国や地域、階層などによって違うだろうし、もちろん個人差もある。この知人は元々さほど親しかったわけではないが、私が帰国してからもSNSで繋がっていて、しょっちゅうコメントしてくれていた。それで、今回アンマンに滞在するにあたって連絡してみたら、ぜひにと自宅に招待されたわけだが、もしかしたら義務的に言っていただけかもしれない。あるいは、私の考えすぎかもしれない。この辺のことは、何年アラブ人に関わっていても、よくわからない。まあ、かわいい白猫さんに会えたから、よしとしよう。

 

 

またセルビスでダウンタウンに戻り、アブダリ方面に向かう道沿いの本屋街に出て、何軒かハシゴする。

 

 

アンマンに来た時は必ず行く書店「ダール・シュルーク」

 

 

ダール・シュルークはパレスチナ西岸地区のラーマッラーにも支店があるらしい。HPはこれ(アラビア語)

 

 

店内が広く、文芸書、宗教書、絵本等、各分野の本の数が多い。埃かぶってるけど。

 

 

絵本コーナーで気になった本「くまとねこ」

表紙の絵は熊と小鳥だが。

 

これは外国の絵本のアラビア語版だった。この本に限らず、アラブ諸国の書店で表紙が可愛くて良さそうだと思った絵本は、どれも外国語からの翻訳書なのだった。アラブの絵本作家もがんばってほしいものである。

 

この書店は、以前来ていた時はアラビア語の小説の出版状況等に詳しいベテランの男性がレジにいて頼りになり、本を買うと頼まなくても値引きしてくれたものだが、今回レジにいたのは初めて見る若い男性で、あまり質問できる雰囲気ではなく、本を買っても値引きしてくれなかった。ち…

 

店を出てダウンタウンに戻る途中、初めて見る書店があったので、入ってみた。後で調べたら1985年創業とある。建物の2階に入っていて分かりにくいので、ここに書店があることに今まで気づかなかった。

 

 

アルアフリーヤ書店(Al Ahlia Bookstore  インスタはこれ

 

 

階段を上った先は…

 

 

本の世界であった。

作り付けの木製の書棚や展示台に本がぎっしり並んでいる。

 

 

村上春樹の「1Q84」がヨルダン国王の著書やサダム・フセインを尋問した元CIA職員の回顧録などに囲まれいる。

 

 

ヨルダンの本屋には珍しく、本にビニールフィルムが掛けてあって、汚れていない。働いている人達も、いかにもこの道のプロフェッショナルという感じで、本について質問したら、すぐに答えが返って来る。しかも、本を2冊買ったら頼んでないのに負けてくれた。昔のダール・シュルークのようだ。

 

 

ここで買った本は、「ターキッシュドリーム」(حلم تركي)という題名のモロッコ人の女性作家の小説。

 

題名に惹かれて買ったのだが、帰国してから読んでみたら、わりと無理やり感のあるメロドラマだったので(主観です)、途中で読むのを止めてしまった。題名や表紙でアラビア語の小説を買うと、失敗しがちなのよね…

 

もう1冊は、在仏のレバノン人作家アミーン・マアルーフの小説「光の庭」(حدائق النور)。マニ教の開祖マニの伝記だ。

アミーン・マアルーフはフランス語で執筆するので、この本もアラビア語への翻訳本なのだが、彼の作品にはハズレがないので、ターキッシュドリームの方がハズレである可能性を鑑み、保険として買ったのだ。アラビア語で書くアラブ人作家の作品を買いたいのはやまやまだが、お気に入りの作家が未だ見つけられないでいる。

 

 

ホテルに帰る途中、小さいカルフールの支店を見かけたので、スパイスと猫用パウチを買った。

 

 

スパイスミックス、お土産にいいかも。

 

 

なつかしいインドミーの数々

 

 

カルフールの近くに、トルコアイスの店が出来ていた。

皆写真を撮っていた。新しくできた店のようだった。

 


買い物を済ませてホテルに戻り、ビールを飲んでから昼寝して、夜の外出に備えた。心情的には、夜の外出がこの日のメインイベントだったのだ。

 

 

夜8時、前日出産した猫の様子を見に例の靴屋に行った(前回の話)。「猫の話はまだか~」とやきもきしながらここまで読んで下さった方、お待たせしちゃったわね…

 

 

靴屋は市場周辺にあり、ホテルから徒歩10分以内に着く。外から様子を伺うと、猫が店内にいると怒るという店主らしき人物が見えたので、少し後に戻ることにして、夕食用のサンドイッチを買いに行く。この日は羊のタンのロールサンドにした。前日コシャリを買った安食堂の斜め向かいにある内臓系サンドイッチ専門の小さな店で買う。安食堂の系列店で、いつも男性客で賑わっているところだ。

 

 

爽やかさのない見た目をカバーするためか、ディスプレイに工夫を凝らしてある。

 

 

ロールサンドをテイクアウトして靴屋に戻ったら、店内にお客はいたものの、店主の姿はもうなかった。入って行ったら、店員2が出迎えてくれて(店員1は接客中)、私を屋根裏の猫がいるところに連れて行ってくれた。

 

 

さあ、母猫と子猫の運命はいかに…

 

 

私はそれについて、昨夜からずっと考えていた。あの若い猫は獣医さんに子宮を広げる薬を注射してもらった後、2匹目の子を出産したが、普通なら全身を舐めてあげて、すぐに授乳しながら次の出産に入るはずが(私が昔同居していた猫のふぁーちゃんはそうだった)、多少舐めただけで放置して、すぐに授乳する様子もなかったのだ。最後に見た時、母猫は段ボールの中でだらりと横たわり、その傍らで濡れそぼった赤ちゃん猫が虫のようにうごめいていたのだった。その後、猫たちはどうなったのか。

 

 

私は3つの可能性を考えた:

1) 母猫も子猫も死亡

2)母猫は無事で子猫だけ死亡

3)母猫も子猫も無事

 

 

この3つの中では、2番の可能性が最も高そうに思えたが、お産での体力の消耗と注射の副反応のリスクを考えると、1番もありえなくはない気がした。3番の可能性は低いと思った。もし母猫があのまま授乳せずに放っておいたら、子猫が無事でいられるわけがないからだ。

 

 

そんな不吉な予想が私の頭の中を渦巻いていたが、階段を上って屋根裏の物置に行ってみたら、こんな風景が私を待っていたのでございます。

 

 

 

 

ふかふかのかわいい子猫が!2匹もいる!!生きて動いてる~!!!

 

 

母猫は段ボールの外を巡回していたが、私を見たらすぐに駆け寄ってきて、私の足に体をすりつけた。私のこと(あるいはちゅ~るのこと)を覚えていたらしい。

 

 

撮影失敗

 

 

予想が外れて良かった…

 

 

母猫は前日の夜私が帰った後にもう1匹生んで、ちゃんと授乳していたようだ。第一子は死産だったが、その後生まれた2匹は無事で、悪いところはなさそうに見えた。母猫はサバトラだが、赤ちゃんは2匹とも茶色だ(片方は白が混じってるけど)。もしかしたら、最初にこの靴屋に来た時に見かけた茶トラ猫が父親かもしれない。

 

この猫

 

 

店員2によると、母猫はエサ(生の牛ミンチ)を食べたところだという話だったが、ちゅ~るをあげたら勢いよく舐めていた。ちゅ~るは別腹だもんね。撫でてあげたら、気持ちよさそうにしている。かわいい…

 

店員たちは、母猫をベッラ、子猫をローズとスッカルと名付けたらしい。ローズはアラビア語でアーモンド、スッカルは砂糖のことだ。アーモンドちゃんとシュガーちゃんか。ベッラはイタリア語の「bella」(=美女)だろうか?

 

後ろ髪をひかれつつ、カルフールで買った猫用パウチと手持ちのカリカリを店員2に渡し、夕食らしき焼き魚をほぐして白ご飯にのせたもの(たぶん出前)を食べている店員1に挨拶して、店を後にした。

 

ホテルに戻る前に、前日も行った酒屋で酒を買い足すことにする。またアラクとペトラビールを買おうと思ったが、お店の若者が商品について色々説明してくれたので、「CARAKALE」(たぶん「カラケール」と発音)というブルワリー(参考)のクラフトビール2本とコニャックの小瓶を買う。全部ヨルダン産だ。ヨルダンの醸造所を応援しなければ(使命感)。

 

ダウンタウンの小さな酒屋さん 

もし地震があったら…

 

 

値段が一目でわかる明朗会計の店だ(ヨルダンディナール表記)。

 

 

 

この日の収穫

 

 

ホテルの前の道で焼いたひよこ豆が1パック1JD(約200円)で売られていたので、それも買ってみた。

 

 

お腹が減っていたので、ホテルに帰ったら、さっそく晩御飯にした。

 

 

前日の残りのコシャリ、羊のタンのサンドイッチ、焼きひよこ豆

 

 

羊のタンは茹でてトマトやレモンと共にみじん切りにしてあって、意外に爽やかで美味しかった。ビールに合う。焼いたひよこ豆は悪くはなかったものの、枝豆ほどの風味はなかった。豆はすぐお腹が膨れるので、あまり食べられないし。

 

 

翌日は少し遠出して、ザルカに行くつもりだったので、この日は早めに寝た。

 

 

 

(続く)

 

 

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2022年イタリア・ヨルダン・トルコ周遊記(17)~ヨルダン4日目後編・猫助けの話~

2023-09-13 09:35:26 | ヨルダン(猫中心)

 

 

前回はヨルダン滞在4日目、北部の国境付近の街ラムサとマフラクを訪れ、国境の向こうのシリアを眺めに行った話をした。今回はその続き、夕方にアンマンのラガダーン・バスターミナルに戻って来てからの出来事だ。

 

バスターミナルから近距離バスに乗って、ダウンタウンの中心のフセイニーモスク前の広場で降り、その脇にある青果市場に果物を買いに行った。

 

日本では高級果物のつぶれ桃(蟠桃)がてんこもり

 

 

絵心のあるディスプレイ

 

 

あんずとさくらんぼを少しずつ買った。私は中東を夏に旅したら、ビタミン補給のためにいつもこの2つを買う。どちらも洗っただけで簡単に食べられるからだ。つぶれ桃も皮をむかなくても食べられるし、甘くて瑞々しいから大好きなのだが、一口では食べられないから汁が垂れる可能性が高く、私にとってはやや難易度が高い。(めんどくさがり)

 

 

アンマンのダウンタウンの青果市場には、果物以外の物も色々売られている。

 

 

各種チーズ

 

 

ビニール袋入りのスパイス

 

 

乾物屋さん

 

 

漬物屋さん

真ん中にある瓶詰めは日本人好みのナスのオリーブオイル漬「マクドゥース」(胡桃や赤唐辛子、ニンニクのみじん切り等が挟んである)

 

 

果物を買い終わって、次に夕食用のシャワルマサンドでも買おうと近くの安食堂に向かう途中、通りかかった靴屋の入口で店員の若者(以下店員1)が茶トラの猫に喋りかけているのが目に入った。私が条件反射で写真を撮ろうとしたら、彼が自分は写りたくないから猫だけを撮るように言ったので、そうする。

 

 

この辺の靴屋のディスプレイは暖簾タイプが多い

 

 

モデル猫

 

 

私が靴屋の前で写真を撮っていたら、もう1人の店員の若者(以下店員2)が私を手招きし、店の脇の路地の片隅に置いてある段ボールのところに導いた。その中にはサバトラの猫がじっとうずくまっていた。身体の小さな、まだ若い猫だ。

 

 

 

 

店員2によると、この猫は出産中だが、胎児が途中まで出かかったままの状態で、もう2時間も経っているとのことだった。そう言われてみたら、おしりの辺りに何かそれらしきものがくっついている。猫には産み落とす体力が残ってないようで、いきむ気配はない。まだ1歳半くらいの子猫で、今回が初産だという。

 

彼らはその猫を助けたいが、安月給で獣医の料金が払えないから、何も出来ずに困っているとのことだった。ヨルダンは中東では物価がかなり高い方だが、そのわりに労働者の賃金はありえないほど低いのだ。よし、ここはたまたま通りかかった猫好きの外国人観光客(私)の出番だろう!

 

私が料金を支払うから獣医に連絡を取るように言うと、店員1がスマホで獣医を検索し、店の近くにあるところを見つけた。彼が電話をかけて事情を説明したところ、獣医さんは「子宮を広げるための薬を注射する、料金は8JD(約1600円)かかる」と言ったという。50JDくらいかかったらどうしようと内心ビクビクしていたのだが、意外に安い。問題ないから、その獣医に猫を連れて行こうと彼に伝え、一緒にその獣医に向かった。すぐ近くだったので歩いて行った。店員2は店番があるので残った。

 

 

店員1が段ボールごと猫を運び、私が彼について行った。

 

 

獣医さんはダウンタウンの裏通りの一角にあるしょぼくて狭い店(?)にいた。さすが、安いだけある…「ダウンタウンの動物用医薬品の倉庫」という意味の看板が出ているので、動物病院というよりも、薬の販売がメインなのかもしれない。

 

 

なんとなくうらぶれた外観

 

 

一瞬、「ここ、大丈夫なのか?」と不安になったが、中で私たちを待っていた獣医師は、意外にベテランの雰囲気を漂わせていて、猫を見て手慣れた様子で手袋をはめた。

 

 

まな板の上の猫

 

 

獣医師はまず、出かかっていた胎児を掴んで、ぐいっと引き抜いた。麻酔なしなので猫は痛がったが、暴れる力はなかった。それから彼は、子宮を広げるための薬をブスっと注射した。それで施術は終わり。一瞬の出来事だった。

 

 

「痛いにゃ~!」

 

 

料金を支払うにあたって、店員1が「これは国際的な人道問題だ!」と熱く主張して、なんとか負けてくれと交渉したところ、獣医師があっさり譲歩し、6JDでいいことになった。私が払おうとしたら、店員1が「申し訳ないから、自分も少し払う」と言って1JD札を差し出したので、結局私は5JD(約千円)しか払わなかった。

 

注射した薬の効果は1~2時間で出て、それから残りの胎児の出産が始まるということだった。引き抜かれた胎児は既に死んでいた。2時間も経っていたわけだから、仕方ないだろう。

 

猫をまた段ボールに入れて靴屋に運び(店員1が)、店の片隅に置いて、ちゅ~るを食べさせた。体力がない猫にはちゅ~るが一番だ。よかった、持ち歩いてて…

 

ちゅ~るは世界の猫を元気づける

 

 

猫はちゅ~るを必死に舐めていた。起き上がる力こそないものの、それなりの体力は残っているようだった。やがて、薬の効果が出始めたのか、舐めるのが億劫そうになった。

 

間もなく第2子の出産が始まった。猫はがんばっていたが、なかなか全身が出なかったので、私は猫をさすりながら励ました。その様子を見物する人々が集まってきて、店員2が猫と私について滔々と説明し始め、それを聞いて人々が大いに感心し、こちらを暖かい視線で眺めているのが感じられた。なんか美談になってるみたいだけど、私千円しか払ってないのに、勘弁してくれんかな…

 

ようやく第2子が誕生した。猫は羊膜を舐めて破ろうとしたが、すぐにやめてしまったので、私が破った。赤ちゃん猫を包んでいる羊膜を破るのは初めてで、ドキドキした。母猫は次の出産に気を取られているように見えたが、まだ始まる様子はなかった。

 

店の客が途切れたところで、店員1が今のよりも一回り大きい段ボールを持ってきて、古着のシャツを敷き、猫をそこに移した。店員2がそれを持って階段を上り、屋根裏の物置きスペースに置く。見事な連係プレーである。私もついて行った。

 

そこは他の猫が来なくて安全だから、一晩そこで過ごさせるという。水とエサを置いて、私たちは猫をそこに残した。

 

それ以上私にできることはなさそうだったので、その晩はもう帰って、翌日また様子を見に来ることにした。店員たちは、翌日は夜8時以降に来てほしいと私に頼んだ。それ以前だと店主がいて、猫がいることがバレると怒られるらしい。

 

なお、店員たちは、私に合わせてアラビア語のフスハー(標準語)を話してくれていたのだが、フスハーは普段使われている口語と違って文語的・時代劇的な趣があるので、私には「猫を助けていただいて、かたじけないでござる」「明日(みょうにち)、お目にかかりましょう」などと言っているように聞こえていた。

 

靴屋を出てから、当初行く予定だった安食堂に寄って、コシャリをテイクアウトしてホテルに帰った。コシャリはエジプト料理だが、ヨルダンでも食べることが可能だ。ヨルダンの飲食店の従業員はエジプト人が多いのだ。

 

ホテルに帰り着いたのは、8時半くらいだった。まずビールとワインを飲んで一息つき、シャワーを浴びてからコシャリを食べ、アラクを飲む。なんだかものすごく長い、濃い一日だった。全然違う内容の2本立ての映画を観たような感じだ。

 

 

 

 

コシャリは本場の味そのもので、非常に美味しかったが、量が多くて食べ切れなかったので、残った分は翌日食べることにして冷蔵庫に仕舞った。ホテルの部屋に冷蔵庫があるって、素晴らしい。

 

食べ終わった後もしばらくアラクを飲んでいたが、疲れが出たのか(単に飲みすぎかも)、そのうち眠り込んでしまった。

 

 

(続く)

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