外国で一時的個人的無目的に暮らすということは

猫と酒とアルジャジーラな日々

アンマンの安ホテル

2017-02-18 07:57:10 | ヨルダン(猫中心)

最近やけに暖かかくて、ベンチ飲み日和でしたね。
先日は夕方出かけて、ペットボトルに詰めたワインと八丁味噌を擦り付けたおにぎりを持参して、近所の広場のベンチでくつろいだ。
黄昏時には赤ワインがよく似合う。


さて、12月の旅行の話の続きですが。
前回からずいぶん日が経って、すでに去年の旅行のことなど脳みそのすみっこの沼地にずぶずぶ沈みつつあるが、
なんとか救出して書いてみようと思う。

今回はアンマンで滞在した安ホテルの話です。

その宿の名前は「Baghdad Grand Hotel」、ダウンタウンの安宿が集中した地域にある。



賑やかな大通りから路地に入って、サンドイッチ屋の脇の階段を2、3階分登ったところにある。

入り口の正面に受付があり、その両側に廊下が伸びて、客室がいくつか(いくつあるのかはナゾ)並んでいる。
左右の廊下には1台ずつベッドが置かれており、そのうちの1台では、昼間ずっと受付係のオマルさんが寝ている。
彼以外の人が受付をやっているのを、私は見たことがない。

オマルさんはおそらくパレスチナ人。(アンマンで会う地元の人の大半がパレスチナ人)「くたびれた薄幸の中年男性」というイメージを体現したかのような人物で、独特の弱々しいオーラを全身から出している。いつも日の当たらない職場(ホテル)にいるせいか、サナトリウムの結核患者のように青白い顔をしているが、顔の造作は非常に整っており、若い頃はかなりモテただろうと推測される。人柄も温厚で、押し付けがましくない程度に親切。英語も上手だ。

経営者はハリールという名前の小柄で陽気なおっちゃんで、英語以外に少しトルコ語が話せるので、私は彼と時々トルコ語会話の練習をしていた。今回彼は「大学生の息子がいて、何かと金がかかるんだ」とこぼしていた。シリア内戦の影響を受けて、ヨルダンに来る観光客も激減しているので、経営が大変なのかもしれない…と一瞬思ったが、考えてみたら、ここは観光客が泊まるようなホテルではなかった。

私はあのホテルで自分以外の非アラブ人の客を見たことがない。
しかも、自分以外の女性を見たことがない。

私の見たところ、お客の大半はアンマンに出稼ぎに来たり、家を借りるお金がなくて安宿住まいをしているアラブ人(パレスチナ人?)の男たちだ。そして、掃除を受け持っているのは、従業員だかお客だかよくわからないおっちゃんたち。女性の姿は一切ない。しかし、彼らは非常に真剣な面持ちで廊下を掃いたり、消臭スプレーをあたりにシャーシャーかけまくっている。その姿からは、自分たちのホテルを清潔に保とうという気概が見て取れる。そのおかげで、あのホテルは「びんぼーくさいけれども、不潔で退廃的な場所とは一線を画した空間」となっていると言えるだろう。

私がいつも泊まるのは、このホテルのスイートルームとも言うべきツインルームだ。(シングルは存在しない)
シャワー・トイレ、テレビ、冷蔵庫、Wi-Fi付きで、10JD(現在のルートで1600円弱)。長期滞在するときは、値切れば少し負けてくれる。
寒かったので、暖かいガスストーブも入れてくれた。本体の外側にちょろっと炎が出ているタイプなので、簡単に火事になりそうで怖かったが、寝る前に消せば大丈夫。この設備でこの値段の宿は、アンマンではなかなか見つからないと思う。全体にうらぶれてて、毛布は多少犬っぽい匂いがしたが、不潔というほどではない。あくまで私見だが。

シャワーもトイレも水圧がごく低く、トイレは便座やフタ部分がないので、シャワーを浴びる前にうっかり大きい方をしてしまうと、流しそこねたブツを眺めながらシャワーを浴びるハメになるので、注意が必要だ。もちろんペーパーは流さず、備え付けのカゴに入れる。お湯はスイッチを入れてから、沸くのをしばらく待つタイプ。

テレビを見ようとしたら映らなかったので、オマルさんに調整を頼んでから出かけたら、帰ってきた時には映るようになっていた。っていうか、彼が私の顔を見て、「あなたのところにはCNNがあるよ!」と嬉しそうに告げたので、よくわからないまま礼を言ってドアを開けたら、テレビでCNNが流れていたのだ。周波数を調整したついでに、気を利かせてCNNを流したままにしてくれたようだ。アンマンの安ホテルでCNNにお出迎えされるとは思わなかったわい…と感慨にふけりながら、リモコンを手にとり、すかさずチャンネルをアルジャジーラに変えた。ちなみに、その翌日にはテレビ本体を新しいフラットなタイプに変えてくれた。なんなの、このおもてなしは…

そんなわけで、バグダッド・グランドホテルは非常に良いホテルなのだ。バグダッドとは何の関係もないけど。
廊下を猫が横切っていったり、客だか従業員だか出入りの業者だかよくわからない有象無象の男たちがどこからともなく湧いてきたりするけど、それがまたいい味を出している。つぶれないでがんばって続けて欲しいものだ。私のためにも。



入り口のところにある内臓系のサンドイッチ屋さん。私はここの羊の脳みそサンドが好きだ。レモンがたくさん載せてあって爽やか。0・65JD(百円程度)



サンドイッチ屋さんでレバーを少し買って、猫におすそ分けした。アンマンでは猫を餌付けしても、誰にも文句を言われない








コメント
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