外国で一時的個人的無目的に暮らすということは

猫と酒とアルジャジーラな日々

うちの猫の出産(8) 移動編(下)

2013-07-27 22:18:44 | ヨルダン(猫中心)


半開きの扉を前にして、ファーティハはやや落ち着かない様子。
授乳していない時、戸棚の前に座り込んで、見張り番をして過ごすことが多くなった。
どうも、窓から入ってくるよその猫を警戒しているらしい。

普段私が居間にいるときは網戸を閉めておくのだが(ファーティハが出入りしたがった時だけ開けてあげる)、留守にするときや夜寝室にひきあげた後は、自由に出入りできるよう、少し開けた状態にしておく。
そこから近所の野良猫がよく侵入してくるのだ。
入ってきても別に悪さをするわけではなく、ファーティハの食べ残しのキャットフードを食べたり、ゴミ箱をあさったりする程度なのだが、子育て中の猫の目には危険分子に映るのかもしれない。

やはり、戸棚を元のように閉め切ったほうがいいのだろうかと迷い、
「扉、閉めておいたほうがいい?閉めようか?」
とファーティハに何度か質問したのだが、返事は返ってこなかった(当たり前)。
それで、ついそのままにしておいた。

子猫たちはまだハイハイも出来ず、日がな一日じっと眠っているか、お母さんのミルクを飲んでいるだけの状態だった。
そうして、日に日にまるまると太っていった。
人間の10倍くらいのスピードで成長しているような具合である。

うちに帰還してから約1週間後、ファーティハはまた突然行動を起こした。
今度は、子猫たちをテレビ台の下の戸棚から、居間の片隅にあるソファーの下へ移したのだ。

ファーティハが子猫を1匹ずつ口に咥えて、ソファーの下の隙間へたったか運んでいくのを、私は冷静に観察した。
驚くには驚いたのだが、さすがにもう慣れてきたのだ、猫たちのお引越しに。
人間って、どんなことにも慣れるものなのね・・・。
子猫たちはかなり体重が増えていたので、運ぶのに骨が折れそうだったが、今回は距離にして3mほどの室内水平移動なので、さほど問題はなかったようだ。

ソファーの下の空間は大部分が板に覆われていて、中の様子が全然わからない。
しかも、前に置いてある別のソファーが邪魔で、手をつっこんで子猫に触ることもできない。
隠れ家度200%。
以前の住居である戸棚の中よりも、確実に安全である。
こんなところをよく見つけたわね、さすが目ざといわ~。

ソファーの下は大人の猫にはちょっと狭すぎるようで、ファーティハは無理やりもぐり込み、頭やしっぽがはみ出した状態で授乳していた。
子猫たちはあの暗がりの中で、着実に育っていくのだろう。
それにしても、猫は日光不足でクル病になったりしないのだろうか?

子猫たちの様子が気になるが、私にはもう見ることも触ることもできない。
あの子たちは、私の手の届かない世界に行ってしまった。
ああ、こんなに近くにいるのに、こんなに遠い・・・それはまるで、失われた恋のよう(?)。

嘆いていてもしょうがないので、試みにファーティハの留守を狙ってカメラを隙間に突っ込み、盲滅法に写真を撮ってみた。
すると、フラッシュに驚いた子猫たちの姿がちゃんと映っていた。
生存確認、成功。

猫たちが移動したあとの、空っぽの戸棚


移動先はソファーの下の空間


授乳するファーティハの頭がはみ出している


隙を狙って、カメラを突っ込んで無理やり写真を撮ったら・・・

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うちの猫の出産(7) 移動編(上)

2013-07-25 00:06:39 | ヨルダン(猫中心)


うちの猫(ファーティハという名前です。以降名前で呼びます)と5匹の子猫たちは、うちに出戻ってから1週間のあいだ、テレビ台の下の狭い戸棚の中で暮らした。

ファーティハは定期的(2、3時間おき?)に戸棚の中にこもって授乳し、しばらくしたら出てきて、やれやれという感じで廊下にごろりと横たわって休憩していた。
そして時折外出して用を足したり、散歩したり、その他私には伺いしれない用事を済ますのが彼女の日課だった。

ファーティハが留守のあいだにこっそり戸棚の中を覗くと、5匹の赤ちゃんが昆虫のようにウゾウゾとうごめき、時折「みゅう」「みゅう」とかぼそい声をあげながら、重なり合って眠りこけていた。
これが猫の赤ちゃんの本能なのだろうが、必ずだんご状態で眠るのが不思議である。
下の方のヒトが重みでつぶれたり、窒息したりしないのだろうか。

子猫たちはこの1週間でめざましく成長していた。
人間の赤ちゃんでいうと、3ヶ月分は成長した感がある。
プラスチックぽかった手足(いや、全部足か・・・)が毛に覆われ、猫足らしくなっている。
足以外の部分も毛皮がふさふさで、白・黒・ライトブラウンの色分けがくっきり。
やはり全員三毛だ。
まだ目は開いていないし、耳も小さく、鼻もつぶれた状態だが、生後間もない時のエイリアン状態に比較すると、今は明らかに哺乳類の赤ちゃんだと分かる。

戸棚の中にはボロ毛布を折りたたんで敷き、さらにその上に新聞を載せておいたのだが、翌日新聞を取り替えようとして、全然汚れていないのに気がついた。
これは一体どうしたことか。
子猫たちの身体がいくら小さいとはいえ、母乳を飲んでいる以上、多少の排泄物が出るのは必至である。
それなのに、新聞にはシミ一つない。
摩訶不思議な・・・。

しかし、ファーティハが子猫たちのお尻をべろべろ舐めているのを目撃したとき、その謎は解けた。
赤ちゃん猫のおしっこやウンチは、お母さん猫が舐めとってしまうので、後に残らないのだ。
これは衛生上の理由によるものか。
猫のお母さんって、ホントにすごい。
人間にはなかなか真似ができないことである。
まあ、人間にはおむつという手段があるから、真似する必要もなさそうだが・・・。

猫たちが帰還した数日後、うちに遊びに来た友達が、戸棚の扉を少し開けておいたらどうだ、閉め切った状態では通気性が悪いんじゃないか、と提案した。
そう言われてみると、確かにあの狭い空間は空気がこもりそうだし、なにより子猫たちが将来閉所恐怖症に陥ったり、暗闇っぽい性格(どんな性格?)に育ったりする危険性がある。
ファーティハ自身もまた、閉まった扉を頭でぐりぐり押し開けて中に入るのに、毎回苦労しているようだった。
それで、開き戸を半分開けた状態にして、小テーブルで外から固定しておくことにした。
しかしおそらく、それが間違いの元だったに違いない・・・。

生後すぐの状態はこんなだった


1週間後


戸棚の前で、外敵が来ないように見張るファーティハ



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うちの猫の出産(6) 帰還編

2013-07-14 22:42:04 | ヨルダン(猫中心)


出産後ちょうど1週間目の金曜日の夕方、猫はいつものように晩御飯を食べにやってきた。
私も猫食堂の給仕のおばちゃん役をやるのが板についてきて、ほいほいと条件反射でミルクやドライフード、茹でた鶏肉などを用意した。

しかしその日はなぜか、猫は食事の後すぐには出て行かず、居間中をひたひたと入念に歩き回った。
錆び付いた予備寝台(マットレスなし)の下を覗いたり、片隅に転っているダンボールの大きさを確認したり、テレビ台の下の戸棚に顔を突っ込んだりしている。

一体何をやっとるんじゃ、君は?

私は首をかしげながら、その様子を観察していた。
ひととおり歩き回って気が済んだらしい猫は、やがて窓の外へ去っていった。

その数時間後、猫は再び窓のところに姿を現した。
今度はなんと、口に子猫を1匹くわえている。
おお、すると子猫は生きていたのか!
まさか戻ってくるとは思わなんだわい!
子猫の姿を二度と目にすることはないと思い込んでいた私は、事の成り行きに目を見張った。

子連れ猫は窓から入ってきて床に着地し、すかさずテレビ台の下の戸棚に直行した。
夕食後に頭を突っ込んでいた、あの戸棚である。
底面は新聞の片面よりも少し細長いかんじで、高さは50cmくらい。
両開きの木の扉がついていて、中は空っぽの状態だった。

猫はこの扉の合わせ目の前に立ち、頭でぐりぐりと内側に押して隙間を開けた。
そしてその中に子猫をぐいっと押し込んだのだ。
あいや~、さっき部屋を歩き回っていたのは、子猫用の安全な空間を探すためだったのか!
人生は驚きの連続である。

子猫を戸棚に隠したあと、猫はてきぱきと外へ出ていった。
そして2、3分後に次の子を連れて戻ってくると、また戸棚の中に隠す。
非常に無駄のない、迅速な行動である。

何匹連れてくるのだろう?
私はドキドキしながら見守った。
野良猫の赤ちゃんの生存率は低いそうだから、5匹が5匹とも無事に育っているとは考えにくい。
1匹や2匹は外敵にやられて、死んでしまっている確率が高いのだ。
せいぜい3匹か4匹だろうねえ、生き延びたのは…。

そんな私のブラックな予想を裏切り、猫はちゃんと5匹とも連れて戻ってきた。
全員戸棚に仕舞ったあと、自分もよいしょと中に入り込んでしまう。
すると扉が自然に閉まり、外から見ただけでは、内側に猫の母子が隠れているとは絶対分からない状態になった。
まるでアンネの日記みたいだ。
隠れ家度100%

古ぼけた木の扉を眺めながら、私は考えを巡らせた。

今回の引越しの様子から判断するに、この1週間、猫はどこかこの近所で子育てをしながら、うちに通ってきていたのだ。
しかし、その場所が安全ではなくなったので、うちに出戻ってきて、一番安全そうなこの戸棚に子猫たちを避難させたのだろう。
わざわざ出ていって、また戻ってこなくても、出産後そのままずっとここで暮らせば良さそうなものだが、猫はその時点では、この家はあまり子育てに適した安全な場所ではない、と判断したのだろう。
人間の目に不可解に見えても、猫の行動には猫なりの理由・動機があるらしい。
しかし、猫の外敵って誰だろう。
このあたりには犬もカラスもいないのだが。
人間の子供たち?それともよその猫?
もしや、猫は共食いをするのだろうか・・・

生まれたばかりの時は、濡れそぼった毛深いエイリアン・ベイビーにしか見えなかった子猫たちは、短い間にずいぶん成長して(といってもまだ手の平サイズだが)、顔立ちも猫らしくなり、手足の肉球もくっきりしていた。

子供を捨てて、男遊びに精を出しているヤクザなメス猫かもしれない、なんて疑って悪かったわ。
ゴメンね~、そしてお帰りなさい!
お詫びを言おうとして扉を少し開けてみたら、中で授乳していた猫にうなられてしまい、また慌てて閉める。

とにかくこのようにして、猫たちはうちに帰還したのだ。


何の変哲もない、木製のテレビセット



戸棚の中はこんな状態~


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うちの猫の出産(5) 食堂編

2013-07-01 22:59:28 | ヨルダン(猫中心)

翌朝、猫は何事もなかったかのようにやってきて、エサをねだった。
昨夜の興奮した様子はすっかり消え失せていて、完全にいつもの調子だ。
憑いていた狐が降りたのか。

まるで出産・失踪騒ぎなんて、私の妄想だったような気さえする。
ただ、洋梨のように膨らんでいた猫のお腹が、以前のようなマンゴーレベル(つまりやや太り気味程度)に戻ったので、あれが夢ではなかったことがわかる。

ドライフードをとミルクを平らげた猫は、満足そうに口の周りを舐めながら、また窓からひょいと出て行ってしまった。

その後1週間、猫はどこかよそで暮らし、朝夕2回うちに通ってきていた。
以前はうちで長い時間を過ごし、私の膝に座り込んでうたた寝したり、可愛く甘えたりしていたものだった。
しかし出産を機に、エサを食べるためだけにやってきて、食べ終わったらさっさと出て行くようになってしまった。
なにさ、うちは猫食堂なの?

猫がちっとも居着いてくれないので寂しく思う反面、この行動の変化はもしかしたら子育てが原因かもしれない、という期待も私の中で生じた。
新生児たちの世話をしていたら、うちで油を売る時間などないはず。
外敵から守る必要があるだろうし、授乳もしなくてはいけない。
お母さんは大忙しに違いない。

しかし、子猫たちの無事な姿を見るまでは、これは仮説に過ぎなかった。
単に出産後、子供をまとめてどこかに捨てちゃって、身軽になったとたんに男遊びに精を出しているヤクザなメス猫、という可能性もないことはないのだ。
現に、うちの前でさっそくオス猫と戯れている現場も目撃している。
実際のところどうなんだろう。
問いただしてみても、
「みゃあ~」と可愛く鳴くだけで、さっぱり要領を得ない。
猫って、ホントに謎である。

産後1週間目の金曜日の夜、また思いがけない事件が起こった。


話に関係ない近所の猫1


話に関係ない近所の猫2
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