土曜日の夜、父がお世話になっている高齢者住宅の看護師さんから電話があった。
父の脈拍数が急に下がり始め、38~40程度しかないとのことだった。(ふつうは一分間に60~70回くらいある)
しかし、それ以外はふだんと変わることなく過ごしているので様子を見ますとのことだった。
あいにく土曜日の夜で、高齢者住宅に隣接する病院は翌日の日曜日まで休みになっている。
「万一の時は、ほかの病院に救急搬送するので電話連絡いたします」とのことだった。
それからはいつ電話が来るかと落ち着かずにいたが、結局土日に電話が来ることはなかった。
月曜日、父の様子を聞くために高齢者住宅に電話をしようと思っていたら、ちょうど連絡が来た。
「今朝は脈拍数が30代になり意識が朦朧としてきているようなので、急遽入院させます。たぶんペースメーカーをいれることになると思いますが、ご家族の同意をもらえますか」と言われた。
「入れないと亡くなってしまいますか?」
一瞬そう聞きそうになったが、緊迫した様子の看護師さんの話し方から、それは聞くまでもないことだと分かった。
「お願いします」と言って電話を切ってから大急ぎで父の入院した病院に向かうために準備をした。
そうそう、妹にも連絡をしなくては・・・ところが妹に電話をするも、妹はなかなか電話に出ない。
そうだ、たしか今日は用事がある日だったかもしれない。
いくら電話をしてもつながらない!と焦っている夢を何度か見たことがあるが、まさにそんな感じだった。
妹にはあとで連絡をすることにして、とりあえず急いで病院に向かったのだが、月曜日は気温が下がったので、それまでの溶けた雪が凍って道はつるつるだった。
運転していても滑りそうで怖い。
一刻も早く病院に着きたいが、焦ってはいかん、いかん・・・
いろいろなことを考えながら病院までの道を運転したが、時間が経つにつれ全て大丈夫だなという気持ちになって落ち着くことができた。
第一父にすぐ死が迫っているようにはどうしても思えなかった。母の時のようなお知らせが何もない。
しかしたとえ万が一そうなってしまっても、それはもう寿命なのだから仕方がないと思えた。
悲しいけれど、父はじゅうぶん生き切ったと思える。
まして肉体は無くなっても魂は生き続けるのだし、いずれは誰もがみんなに訪れる「死」なのだ。
あの暖かい光があふれる世界にいつか行くのだ。
とはいえ、これが長い人生を生きた父ではなく、子どもや若い人たちなら・・・と思うと、たまらなく怖くなる。
この世で会えなくなることが怖い。
その恐怖や悲しみを受け止められる自信がない。
魂は生き続けると信じていても、自分の愛する人たちを失った悲しみは、胸が張り裂けそうになるのだろうと思う。
そんなことを考えながら運転していたら、やっと病院に着いた。
急いで父の元に駆けつけると、父は蝋人形のような顔色で眠っていた。
診察して下さった医師のお話によると「すぐにペースメーカーを入れなければ、このままでは死を待つばかりです。ペースメーカーを入れると元気になる人が多いので、入れないで死ぬのはもったいないです」とのことだった。
もちろんペースメーカーは入れてくださいとお願いする気でいたので、即、同意書にサインをした。
ペースメーカーの説明を受けていたら、眠っていた父の顔色がますます悪くなり、脈拍数はついに30回になってしまった。
それを見たお医者さんが慌てはじめ「これはすぐにペースメーカーをつけなければ!これからすぐに手術します」とおっしゃって、急遽ペースメーカーを付けるために父は運ばれていった。
手術は30分程度で終わり、戻ってきた父の脈拍は70まで上がっていた。
そしてしばらくすると、蒼白だった父の頬に赤みがさしてきた。
それを見て、すでに駆けつけていた妹とふたりで「よかった」と言いながら安堵した。
「これでお元気になると思いますよ。血流が良くなって、脳の状態が良くなる場合がありますし、脳震盪も起こさなくなると思います」とお医者さんのお話しだった。
実は父は最近たまに失神することがあり、その原因は担当の先生もなかなかわからなかった。
父の心臓が悪いというのは今まで聞いたことがなく、一年前に調べたときは大丈夫だったので、まさか心臓のせいで気を失うとは思ってもいなかった。
「老化現象で心臓の動きも悪くなっていたのでしょう」とのことだった。
たぶん一昔前なら亡くなっていてもおかしくなかったと思うが、これもまた延命治療なのかもしれない。
もう85歳で男性の平均寿命は越えたのだが、「延命治療をしても生きたい」と元気なころに話していた父の為にできる限りのことはやってあげたいと思う。
父の脈拍数が急に下がり始め、38~40程度しかないとのことだった。(ふつうは一分間に60~70回くらいある)
しかし、それ以外はふだんと変わることなく過ごしているので様子を見ますとのことだった。
あいにく土曜日の夜で、高齢者住宅に隣接する病院は翌日の日曜日まで休みになっている。
「万一の時は、ほかの病院に救急搬送するので電話連絡いたします」とのことだった。
それからはいつ電話が来るかと落ち着かずにいたが、結局土日に電話が来ることはなかった。
月曜日、父の様子を聞くために高齢者住宅に電話をしようと思っていたら、ちょうど連絡が来た。
「今朝は脈拍数が30代になり意識が朦朧としてきているようなので、急遽入院させます。たぶんペースメーカーをいれることになると思いますが、ご家族の同意をもらえますか」と言われた。
「入れないと亡くなってしまいますか?」
一瞬そう聞きそうになったが、緊迫した様子の看護師さんの話し方から、それは聞くまでもないことだと分かった。
「お願いします」と言って電話を切ってから大急ぎで父の入院した病院に向かうために準備をした。
そうそう、妹にも連絡をしなくては・・・ところが妹に電話をするも、妹はなかなか電話に出ない。
そうだ、たしか今日は用事がある日だったかもしれない。
いくら電話をしてもつながらない!と焦っている夢を何度か見たことがあるが、まさにそんな感じだった。
妹にはあとで連絡をすることにして、とりあえず急いで病院に向かったのだが、月曜日は気温が下がったので、それまでの溶けた雪が凍って道はつるつるだった。
運転していても滑りそうで怖い。
一刻も早く病院に着きたいが、焦ってはいかん、いかん・・・
いろいろなことを考えながら病院までの道を運転したが、時間が経つにつれ全て大丈夫だなという気持ちになって落ち着くことができた。
第一父にすぐ死が迫っているようにはどうしても思えなかった。母の時のようなお知らせが何もない。
しかしたとえ万が一そうなってしまっても、それはもう寿命なのだから仕方がないと思えた。
悲しいけれど、父はじゅうぶん生き切ったと思える。
まして肉体は無くなっても魂は生き続けるのだし、いずれは誰もがみんなに訪れる「死」なのだ。
あの暖かい光があふれる世界にいつか行くのだ。
とはいえ、これが長い人生を生きた父ではなく、子どもや若い人たちなら・・・と思うと、たまらなく怖くなる。
この世で会えなくなることが怖い。
その恐怖や悲しみを受け止められる自信がない。
魂は生き続けると信じていても、自分の愛する人たちを失った悲しみは、胸が張り裂けそうになるのだろうと思う。
そんなことを考えながら運転していたら、やっと病院に着いた。
急いで父の元に駆けつけると、父は蝋人形のような顔色で眠っていた。
診察して下さった医師のお話によると「すぐにペースメーカーを入れなければ、このままでは死を待つばかりです。ペースメーカーを入れると元気になる人が多いので、入れないで死ぬのはもったいないです」とのことだった。
もちろんペースメーカーは入れてくださいとお願いする気でいたので、即、同意書にサインをした。
ペースメーカーの説明を受けていたら、眠っていた父の顔色がますます悪くなり、脈拍数はついに30回になってしまった。
それを見たお医者さんが慌てはじめ「これはすぐにペースメーカーをつけなければ!これからすぐに手術します」とおっしゃって、急遽ペースメーカーを付けるために父は運ばれていった。
手術は30分程度で終わり、戻ってきた父の脈拍は70まで上がっていた。
そしてしばらくすると、蒼白だった父の頬に赤みがさしてきた。
それを見て、すでに駆けつけていた妹とふたりで「よかった」と言いながら安堵した。
「これでお元気になると思いますよ。血流が良くなって、脳の状態が良くなる場合がありますし、脳震盪も起こさなくなると思います」とお医者さんのお話しだった。
実は父は最近たまに失神することがあり、その原因は担当の先生もなかなかわからなかった。
父の心臓が悪いというのは今まで聞いたことがなく、一年前に調べたときは大丈夫だったので、まさか心臓のせいで気を失うとは思ってもいなかった。
「老化現象で心臓の動きも悪くなっていたのでしょう」とのことだった。
たぶん一昔前なら亡くなっていてもおかしくなかったと思うが、これもまた延命治療なのかもしれない。
もう85歳で男性の平均寿命は越えたのだが、「延命治療をしても生きたい」と元気なころに話していた父の為にできる限りのことはやってあげたいと思う。