本当に何年かぶりにママ友だった方からメールが来た。
なんとご主人が突然お亡くなりになったそうで、お通夜と告別式の日時の連絡だった。
これを読んでしばし悩んだ、、行くべきか行かざるべきか。
ママ友とは、長男が幼稚園の頃だから、かれこれ27年くらい前のことだが、その当時住んでいた家が近かったこともあって、よく子ども同士を遊ばせた。
お亡くなりになったご主人も何度か会ったことはあるが、奥さんと違って、それほど親しく話をしたことはない。
ただこうしてわざわざ連絡を頂いたので、やはりお通夜に参列することにした。
お通夜は20名ほどの少ない参列者で、その中に4人ほど昔住んでいた町内の方がいて、お通夜のあと少しだけ久しぶりに話をしてきた。
「この様な日にこんなことを言うのはちょっと気が引けるのだけど。でも正直言って、ここに来ている町内の人は、みんな自分が呼ばれたことに驚いているの」と、一人の方が言った。
どのような選び方をされたのかわからないが、お通夜に来ている町内の方々は、皆さん直接来てほしいと言われ、それ以外の人には回覧板で知らせてほしいということだったそうだ。
中には呼ばれたけれど来なかった人もいるそうで、「実は彼女は今、町内でも浮いている存在になっていて敬遠されている」のだという。
亡くなったご主人は大学教授、奥さまは元CA、そして息子の友だちだった一人息子さんは弁護士というまるで絵に描いたようなエリート一家だが、奥さんがとても正義感の強い人で、間違っていることは断固として正さなければ気が済まないタイプ。
これは昔からずっと変わっていない。
ただ普段は気取ることなく、ざっくばらんで話しやすい人なのだけど、正義感の強さが出ると、ゴミの出し方や除雪のことで苦情を言われた人も多く、彼女に対してよく思わない人が多くいる。
そしてある日、決定的なことが起こったそうだ。
その町内は車2台持ちの人が多く住み、駐禁では無いので路上駐車が多い地区だった。
でも通行に不便はなく、緊急車両も問題なく入れる道だったので、誰もそのことについて問題視する住民はいなかったのだが、ついに彼女が警察に通報してしまったのだという。
それによって警察が動き、一斉摘発されて路駐をしていた住民たちは数万円の罰金をとられたのだそうだ。
お通夜に出席していた方も罰金を払ったという。
「これがあってから、ますます町内の人からは恨まれて敬遠されたと思う」と教えてくれた。
ただ呼ばれて来た人たちはみんな優しいので、それはそうとしても礼儀は尽くさなければいけないと考えて参列したそうだ。
彼女は正しいことを言っているのに、なぜこんなに周りから嫌われたり避けられたりするのか、、、
まさにそこが問題で、正論を言っているだけに誰も反論できない。
誰もがモヤモヤとした気持ちになり口をつぐんだまま彼女から離れていく。面倒なことに巻き込まれたくないと。
もしも彼女が自分の正義を振りかざすだけじゃなくて、もう少し周りの人の気持ちを考えることができたら、周囲の人の態度も変わっていたのではないかと思う。
彼女の正義感の強さは、長所でもあると思う。そして、そんな彼女はいざという時にはとても頼りになった。
可哀想なくらい憔悴した彼女を、孤立してしまった町で一人で暮らしていくことを、亡くなったご主人はどんな想いで見ていらっしゃるだろうと思いながら、哀しい気持ちで帰ってきた。