2016.07/26 (Tue)
「月刊Hanada」8月号掲載の、論文、
「決して急ぐな!対露領土交渉」 (元防衛大学校教授) 瀧澤一郎
からの転載の続きです。
次回は「常識」ということについて転載します、と前回に書いてました。
で、標題に書いた通り、「常識≒早合点?」。
例によって独りよがりな題名ですが。
確かに常「識」、と書くくらいですから、理解はしてなくても、取り敢えずは「覚えていれば(知っていれば)」それでその場はおさまる、ってのが「常識」。「その場」、ってのがミソです。別にそれを用いて考えを深めることまでは、その場の人は望んでない。
だったら、早合点でも似たようなもんじゃないか。「オッケー、分かった」。「どう分かったんだ、説明してみろ」、なんて意地の悪いことは言わないのが普通です。
でも、ホントは「常識」があるなら、普段にそれを生かしていて当たり前、考える術にしていて当たり前だと世間は思ってる。
「合点」なら良いけれど、「早合点」で良い、なんて思ってない。いずれきっと迷惑を蒙ることになるから。
なのに、自分はとなると、よくやってます、「思い込み」。そこからの「知ったかぶり」。
また底なし沼にハマりそうだから、転載開始。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ロシアの三大業病」
(略)
動きは多少鈍くとも勤勉であったロシア人は、七十年間の共産主義支配の下で、親方赤旗の懶惰(らんだ)な生活に慣れきってしまった。共産主義は働くよりも奪うことを教える。働くことの喜びを忘れてしまった。
ソ連末期のアンドロポフ政権は「節酒運動」を展開、職場には「立って入れ」と号令した。朝からウォトカに痺れ、這って職場の門をくぐる輩があまりにも多かったからである。
ところが同僚に抱きかかえられて門をくぐるものが続出し、運動は失敗した。
(略)
六十六歳という男性の平均寿命、障害児の増大、少子化などもプーチンの悩みの種であり、ロシアは亡国に向かう坂を転げ落ちている。
だが、いますぐどうなるというものでもない。常識で考えてみれば分かることだが、国際法を破り、欧米から厳しい制裁を受けながら、クリミアを武力併合し、さらにウクライナ東部へ侵攻しつつあるロシアが、日本の領土返還要求に応ずるはずがない。これが常識というものだ。
首脳同士の個人関係を強めれば領土交渉に有利な情況が生まれるなどと、俗耳に受けやすい浮世床政談を言い回る宣伝工作団のお歴々がいるが、だまされてはいけない。
相敵対する国々のトップ間の個人的友情が領土紛争を解決に導いたなどという甘っちょろい話は、古今東西なかった。
国際間の切った張ったの大問題解決に情の入る隙間はなく、、結局力関係がすべてを決する。
核保有国ロシアは、憲法九条で縛られた日本の弱点を見透かしており、こちらが国際法や歴史的事実によって返還要求の正当性を主張して相手を論破していくと、とどのつまり、「もう一度やろうか」とくる。もちろん、もう一度戦争をやろうか、という意味なのである。
であるから、相手に見くびられることのないように、黙々と国力の充実に相務めることが迂遠に見えるが実は領土問題解決の最短路なのだ。
早い話が、日本がもし仮に核武装に踏みきるということになれば、ロシアはいまよりずっと真剣に北方領土返還の具体策を検討するようになるだろう。いまは返還の「へ」の字も彼らの頭のなかにはない。
日本がロシアの北方領土疑似餌作戦に引っかからず、孜々営々(ししえいえい)と奮励するうちに、数十年はすぐ過ぎる。早ければ、あと二十年か三十年もすると、ロシアはにっちもさっちも行かなくなる。
共産主義体制の負の遺産である〈働かない病〉は治らない、アル中・エイズ・麻薬の三大業病にも対処できない、少子化は止まらない、ロシア極東の人口希薄化も止まらない、モノを作らない、〈タケノコ生活〉も止まらない・・・・とないないづくしで、必ず行き詰まる。
北方領土は熨斗をつけて返すから助けてくれ、と泣きついてくる。
(略)
「日本人はお人好しだから」
その他日露中の「三角関係」で、日露が接近すれば対中牽制になるという俗耳に受けやすい政治宣伝もぶち上げられた。産経新聞にもそういう論説が出た。
しかしそんなパワープレイは日本にはできない。なぜなら日本には核がなく、露中は核保有国。少なくともいま両国は同舟関係にあり、日本のためにその関係を犠牲する気はない。
(略)
モスクワではスシが大人気。六○年代末に一号店ができたが、いまは何百店あるやら。
だが当たり前のことだが、スシを食べると親日になり、領土返還に反対しなくなるのか。風が吹くと桶屋が儲かる、より根拠がない。
グルジア元大統領のサーカシビリは大の寿司ファンだが、日本のためにどう貢献したということはない。
ロシア人はよく、支那大陸や半島の人より日本人が好きだという。
その心は、大陸半島系はこすっからいが日本人はお人好しで騙しやすい、である。
ロシアは、北方領土返還を国益とみていない。日本が北の大陸にのめり込むとき、必ず国運は傾く。
同盟関係を損ねてまで猪突猛進するな。
(転載了)
~「決して急ぐな!対露領土交渉」(「月刊Hanada」8月号掲載)から~
・・・・・・・・・・・・・・・・・
>共産主義は働くよりも奪うことを教える。働くことの喜びを忘れてしまった。
そう言われればそうだよな、と思うんですが、では「何故、そうなるんだ?」と多くの人は考えない。
そうして、ただ「共産主義は危険だ」とだけ覚えてしまう。
で、何かの拍子に
「そんなことないですよ。搾取する資本家から利益を取り戻すだけですよ。人間は平等なんだから、同じなら国が仕切って再分配する方がいいでしょう?」
、みたいな説明をされると、
「そうか、奪うったって、悪いことじゃないんだな」
と簡単に「早合点」してしまう。
これを繰り返されると、「考え方」だと思い込んだ「早合点」の方が身に沁み込んでいく。
じゃあ、騙されないようになれるか。猜疑心の目でいくら見たって駄目。そんな実力はつかない。
ならば、立ち止まって、または深呼吸して、素直に、欲心を封じようと思いながら、正面から見つめることを繰り返せばどうだろうか。
>相手に見くびられることのないように、黙々と国力の充実に相務めることが迂遠に見えるが実は領土問題解決の最短路なのだ。
これは以前に書いた、福沢諭吉の「痩せ我慢の説」や、氏の居合の稽古と同じ理屈です。
~~~~
「まずは、確実に、こつこつと正しい取り組みをしよう。そうすれば、分からないことも少しずつ分かるようになり、できなかったことも、少しずつ、できるようになる。」
・「できないことがあっても、焦っていても、決して外には見せず、ひたすら努力し続ける。」
「月刊Hanada」8月号掲載の、論文、
「決して急ぐな!対露領土交渉」 (元防衛大学校教授) 瀧澤一郎
からの転載の続きです。
次回は「常識」ということについて転載します、と前回に書いてました。
で、標題に書いた通り、「常識≒早合点?」。
例によって独りよがりな題名ですが。
確かに常「識」、と書くくらいですから、理解はしてなくても、取り敢えずは「覚えていれば(知っていれば)」それでその場はおさまる、ってのが「常識」。「その場」、ってのがミソです。別にそれを用いて考えを深めることまでは、その場の人は望んでない。
だったら、早合点でも似たようなもんじゃないか。「オッケー、分かった」。「どう分かったんだ、説明してみろ」、なんて意地の悪いことは言わないのが普通です。
でも、ホントは「常識」があるなら、普段にそれを生かしていて当たり前、考える術にしていて当たり前だと世間は思ってる。
「合点」なら良いけれど、「早合点」で良い、なんて思ってない。いずれきっと迷惑を蒙ることになるから。
なのに、自分はとなると、よくやってます、「思い込み」。そこからの「知ったかぶり」。
また底なし沼にハマりそうだから、転載開始。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ロシアの三大業病」
(略)
動きは多少鈍くとも勤勉であったロシア人は、七十年間の共産主義支配の下で、親方赤旗の懶惰(らんだ)な生活に慣れきってしまった。共産主義は働くよりも奪うことを教える。働くことの喜びを忘れてしまった。
ソ連末期のアンドロポフ政権は「節酒運動」を展開、職場には「立って入れ」と号令した。朝からウォトカに痺れ、這って職場の門をくぐる輩があまりにも多かったからである。
ところが同僚に抱きかかえられて門をくぐるものが続出し、運動は失敗した。
(略)
六十六歳という男性の平均寿命、障害児の増大、少子化などもプーチンの悩みの種であり、ロシアは亡国に向かう坂を転げ落ちている。
だが、いますぐどうなるというものでもない。常識で考えてみれば分かることだが、国際法を破り、欧米から厳しい制裁を受けながら、クリミアを武力併合し、さらにウクライナ東部へ侵攻しつつあるロシアが、日本の領土返還要求に応ずるはずがない。これが常識というものだ。
首脳同士の個人関係を強めれば領土交渉に有利な情況が生まれるなどと、俗耳に受けやすい浮世床政談を言い回る宣伝工作団のお歴々がいるが、だまされてはいけない。
相敵対する国々のトップ間の個人的友情が領土紛争を解決に導いたなどという甘っちょろい話は、古今東西なかった。
国際間の切った張ったの大問題解決に情の入る隙間はなく、、結局力関係がすべてを決する。
核保有国ロシアは、憲法九条で縛られた日本の弱点を見透かしており、こちらが国際法や歴史的事実によって返還要求の正当性を主張して相手を論破していくと、とどのつまり、「もう一度やろうか」とくる。もちろん、もう一度戦争をやろうか、という意味なのである。
であるから、相手に見くびられることのないように、黙々と国力の充実に相務めることが迂遠に見えるが実は領土問題解決の最短路なのだ。
早い話が、日本がもし仮に核武装に踏みきるということになれば、ロシアはいまよりずっと真剣に北方領土返還の具体策を検討するようになるだろう。いまは返還の「へ」の字も彼らの頭のなかにはない。
日本がロシアの北方領土疑似餌作戦に引っかからず、孜々営々(ししえいえい)と奮励するうちに、数十年はすぐ過ぎる。早ければ、あと二十年か三十年もすると、ロシアはにっちもさっちも行かなくなる。
共産主義体制の負の遺産である〈働かない病〉は治らない、アル中・エイズ・麻薬の三大業病にも対処できない、少子化は止まらない、ロシア極東の人口希薄化も止まらない、モノを作らない、〈タケノコ生活〉も止まらない・・・・とないないづくしで、必ず行き詰まる。
北方領土は熨斗をつけて返すから助けてくれ、と泣きついてくる。
(略)
「日本人はお人好しだから」
その他日露中の「三角関係」で、日露が接近すれば対中牽制になるという俗耳に受けやすい政治宣伝もぶち上げられた。産経新聞にもそういう論説が出た。
しかしそんなパワープレイは日本にはできない。なぜなら日本には核がなく、露中は核保有国。少なくともいま両国は同舟関係にあり、日本のためにその関係を犠牲する気はない。
(略)
モスクワではスシが大人気。六○年代末に一号店ができたが、いまは何百店あるやら。
だが当たり前のことだが、スシを食べると親日になり、領土返還に反対しなくなるのか。風が吹くと桶屋が儲かる、より根拠がない。
グルジア元大統領のサーカシビリは大の寿司ファンだが、日本のためにどう貢献したということはない。
ロシア人はよく、支那大陸や半島の人より日本人が好きだという。
その心は、大陸半島系はこすっからいが日本人はお人好しで騙しやすい、である。
ロシアは、北方領土返還を国益とみていない。日本が北の大陸にのめり込むとき、必ず国運は傾く。
同盟関係を損ねてまで猪突猛進するな。
(転載了)
~「決して急ぐな!対露領土交渉」(「月刊Hanada」8月号掲載)から~
・・・・・・・・・・・・・・・・・
>共産主義は働くよりも奪うことを教える。働くことの喜びを忘れてしまった。
そう言われればそうだよな、と思うんですが、では「何故、そうなるんだ?」と多くの人は考えない。
そうして、ただ「共産主義は危険だ」とだけ覚えてしまう。
で、何かの拍子に
「そんなことないですよ。搾取する資本家から利益を取り戻すだけですよ。人間は平等なんだから、同じなら国が仕切って再分配する方がいいでしょう?」
、みたいな説明をされると、
「そうか、奪うったって、悪いことじゃないんだな」
と簡単に「早合点」してしまう。
これを繰り返されると、「考え方」だと思い込んだ「早合点」の方が身に沁み込んでいく。
じゃあ、騙されないようになれるか。猜疑心の目でいくら見たって駄目。そんな実力はつかない。
ならば、立ち止まって、または深呼吸して、素直に、欲心を封じようと思いながら、正面から見つめることを繰り返せばどうだろうか。
>相手に見くびられることのないように、黙々と国力の充実に相務めることが迂遠に見えるが実は領土問題解決の最短路なのだ。
これは以前に書いた、福沢諭吉の「痩せ我慢の説」や、氏の居合の稽古と同じ理屈です。
~~~~
「まずは、確実に、こつこつと正しい取り組みをしよう。そうすれば、分からないことも少しずつ分かるようになり、できなかったことも、少しずつ、できるようになる。」
・「できないことがあっても、焦っていても、決して外には見せず、ひたすら努力し続ける。」
常識は生かせて当たり前。しかし実力の裏付けがなければ 生かすことはできない。実力(武力)は、時間をかけて作らなければ。焦っていることを外に見せず、こつこつとひたすら努力し続けなければ。