![]() | 随筆 上方落語の四天王――松鶴・米朝・文枝・春団治 |
クリエーター情報なし | |
岩波書店 |
☆☆☆
上方落語の四天王と表紙には、松鶴、米朝、文枝、春団治の順だが、
中身では、最初で一番多くのページを割かれているのが米朝さん。
松鶴さんの本は読む機会も多いので、今日は米朝さんと文枝さんを中心に紹介。
米朝さんでは、大ネタとして、それぞれ「地獄八景亡者戯」、「たちぎれ線香」、「百年目」を
紹介しているが、それに続いて品格と格調という項では、「はてなの茶碗」、「鹿政談」、「天狗裁き」
の三つをあげられている。この三つとも大なり小なり米朝さんが復活された噺とか、
当り前のように上方落語の定番ネタと思いきや、茶金さんや奉行ものがでてきて、
米朝さんならではの品格と格調を備えたものになったんですな。
・・・・さすが、人間国宝でおますな。
一方、皮肉な笑いとして、「算段の平兵衛」、「けんげんしゃ茶屋」など、
辛辣な風刺を利かせた皮肉な笑いも得意にしていたと・・。
そして、戦前戦後の名作新作としては有名な「一文笛」。
そして師匠の米団治作である「代書屋」を今の三代目に伝えたのは米朝とか・・・。
こうした噺が語り継がれるようにストーリー性のある噺へと成熟させるのも
おてのもんなんでしょうな。
そして、意外なのが、米朝十八番としてあがっている「阿弥陀池」、「つぼ算」がある。
仁鶴さんにつけたのも米朝さんとか。ほんま、生で聴いたことがないだけに
どんな噺っぷりなのか興味あるとこですな。
又、米朝さんの落語の特徴としてかぶせるような突っ込み、セリフの呼吸だと筆者はいう。
そのかぶせかたは、つっ込みを入れるときだけではなく、全般に笑いをとる為の強調、
メリハリとしてセリフをかぶせてゆくところ(それも高い声で)にも特徴があったと。
早速、米朝さんCDをひっぱり出して聴いてみよう・・・。
そして、文枝(小文枝)さんについては、謡い調のリズミカル落語だと、
非常にリズミカルに言葉を言い立てていく。言葉の語尾も、ちょっと謡いのように
伸びるのであると・・・「天王寺詣り」の速記が記してあるので、少し紹介すると
「さあ、こっちへ入りィなあ~ッ」
「や~、おおきにィ。あんたァ~、珍しいもの好きやというてなはるやろ~ォ、
珍しいもん見せてあげまひょか~ッ。」
「珍しいもんて、いったいなんえいッ?」
「あんた、あのね、あの、ヒガンていうもん見たことおまっかァ・・・」
「ヒガンッ・・・・ヒガンて、なんえいッ?」
読んでいるいるだけで、ほんまあの鼻にかかった文枝さんの声がリズミカルに蘇る。
そんな、各々の特徴を、演目紹介とともに、的確に分析しつつ解り易く紹介してくれる。
なかなかの力作、それと巻末には志ん朝さんも大阪ゆかりと、TORIIを中心に紹介されている。
落語の随筆を書く方、結構お年を召した方が多い中
著者の戸田学さん、1963年生まれの御年、50才のお若さ。
(米朝さん曰く、落語家も50才~65才が旬で、一番良い時と)
まだまだ、これからも色んな落語本が出版されそうで楽しみでおます。
上方落語のファンの方、必読の本でおますで。
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