![]() | ふたりをつなぐもの |
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角川書店 |
☆☆☆
作者が、大学一年から五年間、「月刊カドカワ」(1992年12月号~1996年2月号)に
掲載されたものをまとめた歌集。
解りやすい歌でありながら、なぜか尖がる若さがみえる。
青春ともいえる、斜に構えたみずみずしさがある。
気になった歌は、
幸せをかたっぱしから追いかけるあしあとも明日への接続詞
幸せは目に見えなくて目に見えてオムレツの上のケチャップの顔
他の誰かじゃわからないものひとつずつ増やしてゆこう僕らのパエリア
どんなに小さな約束も呼吸していることを気づいてほしい土曜日があり
一度離れたらもう二度と木には戻れない葉っぱは空のどこを見ている
あかりのついた向かいのビルの部屋見れば東京の星座、空のみならず
せつなさに耐えきれなくてアクセルを踏めばせつなさも加速しており
ギリギリまで予定を入れずあけていた土曜日 具のなきシチューと思う
客が一人でも五十人でも同じリズムで廻る観覧車を眺めておりぬ
消しゴムは哀しからずやいつの日も消すことだけが役目だなんて
行く場所より大事なものがあることを言わずにそっと拾ったどんぐり
メニューの少なさが優しく思える夜もありマスターが出す塩の焼き鳥
大切なこの一日のしっぽゆえ捨てずにしまおうライブの半券
朝が来てベットを出てもまだ二つのまくら仲良くくっついており