あなたと読む恋の歌百首 (文春文庫) | |
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文藝春秋 |
☆☆
短歌の、奥の深さを思い知らされる本。
恋の歌を百首、選んでいるのを、よんでいると、俵万智さんの解説に感心も得心。
この歌には、こんな背景があり、この一言に、こんな意味が含むまれているなんて。
ひとつの歌を、何回も読み返すごとに、新しい発見がある。
短歌の愉しみ方を、ご教授いただいた様な気分である。
でも、私にとって一番はわかりやすくであり、お気に入りは、久松洋一さんの作品で
新妻の笑顔に送られ出でくれば 中より鍵を掛ける音する
微笑ましい、ありふれた日常に、心の機微を感じる。
玄関でのいってらっしゃいの声に送られ
真っ直ぐバス停に向かっているようだが、
気持ちは何度も妻の顔を振り返っているのが、毎日の私の朝である。
他に紹介されているのも書くと
林檎から始まる君の尻取りに 我は今宵もゴリラで返す
製造日を確認のことと書いてある 妻のメモ持ちスーパーへ行く
我が妻が作りし七草粥には 今年は三草しか入っておらず
作者の歌集に「ビジネス・ダイアリー」があるらしい、探さなければ・・・。
そのほか、私が気にいった他の人の作品をあげると、
赦せよと請うことなかれ赦すとはひまわりの花の枯れるさびしさ・・・松美啓子
いつかふたりになるためのひとりやがてひとりになるためのふたり・・・浅井和代
一度にわれを咲かせるようにくちづけるベンチに厚き本を落として・・・梅内美華子
たとふれば心は君に寄りながらわらはは西へでは左様なら・・・紀野恵
観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日我には一生・・・栗木京子
一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております・・・山崎方代
体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ・・・穂村弘
「たった今全部すててもいいけれどわたしぼっちの女でも好き?」・・・渡邉志保
暖かき春の河原の石しきて背中あわせに君と語りぬ・・・馬場あき子
君がふと冷たくないかと取りてより絡ませやすき指と指なり・・・角倉羊子
こうして見ると、いかに女流作家の作品に偏っているのか・・・・
私の恋に関する、奥底が見えるようで恥ずかしい感じがするが、
百の恋愛の歌をじっくり、味わうのもよろしおますで・・・。
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