羽虫群 (新鋭短歌シリーズ26) | |
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書肆侃侃房 |
☆☆☆
穂村弘さんの歌集は数冊手元にありますが、
それ以外で、まあ、初めて買った歌集かもしれません。
歌集の批評会というものにも初めて参加、その際に買ったのですが、
本の発売キャンペーン、サイン会というような華やかなものではなく、
一言、難癖を、手放しでは誉めませんで、という、陰険な会。
聞くところによると、今回の「羽虫群」の批評会、
そして虫武一俊には会の雰囲気から温かさが感じられるとか。
(初めての私には、勉強会?文壇への登竜門?小難しいファン?)
素直に誉める、素直に喜ぶ、素直に愉しむ・・・・それってイケないのと?
気にいった歌をあげると、数えると20ありました。
くだり坂ばっかりだったはずなのにのぼってきたみたいにくるしい
新しき年のはじめのめでたさや栗きんとんから栗見つかる
満開のなかを歩いて抜けてきた何も持たない手にも春風
丁寧に電話を終えて親指は蜜柑の尻に穴をひろげる
硬い風に窓の震える日の暮れもバナナの筋は全部取りたい
自己愛で魚が釣れて刺身には醤油がべっとりついている
三十歳職歴なしと告げたとき面接官のはるかな吐息
たぶんこの数分だけの関係で終わるのにおれの長所とか訊くな
本当のことを話せばどうしてもこの日陰からはみ出てしまう
あたりめをいっぽんいっぽん組みあわせてイカに戻るか面接通るか
十割る三がもののはずみで割りきれてしまって 叫び声がきこえる
なりたての切り株はまだみずみずと年輪の線にじませている
雨という命令形に濡れていく桜通りの待ち人として
パインアメは吹いても鳴らず予報では明日この街に初雪が降る
寒くなるほどさびしくなっていきやがるカレンダー薄っぺらな心め
鴨川に一番近い自販機のキリンレモンのきれいな背筋
期待とはこわれるまでの道すがら白いふくろをふわふわと踏む
ラブホテルの隣に葬儀場ができ明るいほうがひとのいる場所
迷うよねしたくないことしかなくてドトールのある街はいい街
夜の深い駅から出れば特急も普通も光る箱、光る猫
10首ぐらいに、絞ろうと思っていたのですが、
絞りきれないのが現状です。
正直言って、なぜ気に入ったのか、他の歌と何が違うのか、
私自身が、まるっきりの素人で、批評性も選んだ基準も何もありません。
でも、何か心に、あるある、と、ひっかったものだけ、あげているようです。
一年後、読み直すと、また違った歌に感動したりして、
まさに、読み手の成長具合で、変わるようですな・・・・
何か短歌のおもしろさに、奥深く引きこまれていきそうです。
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