MOONIE'S TEA ROOM

大好きな読書や言葉、料理のコトなど。

『いつもが消えた日 - お蔦さんの神楽坂日記(2)』

2013年12月19日 | BOOKS
『いつもが消えた日 - お蔦さんの神楽坂日記』
西條 奈加(サイジョウ ナカ)
東京創元社


 『無花果の実のなるころに』の続編、「お蔦さんの神楽坂日記」の第2弾です。
 第1弾は短編集でしたが、今回は1冊で1つの物語になっています。
 元芸者のおばあちゃん・お蔦さんと、料理が得意な男子中学生・望くんが、今回は第1弾よりもショッキングな事件に巻き込まれます。
 事情の見えない不可解な事件から起こる噂や報道の無責任な残酷さ、普通の人が引き込まれる借金地獄の恐ろしさ、私たちが普段知らないだけで、身近にあることかもしれません。被害者・容疑者・債務者への偏見や、猜疑心で物事を歪めて見てしまっていないか、少し不安になりました。

 そして、連続テレビ小説「ごちそうさん」を見ていても感じるのですが、やっぱり「食べることは生きること」・「人は誰でも食べなければ生きていけない」のだと、この本を読んで感じました。
 本当に辛いこと、不安なこと、切ないことがあっても、人は食べなくちゃ生きていけませんし、愛していても憎んでいても人々の暮らしには食事が、食卓があります。

 我が家にも主人公・望君と同じ世代の男子が2人いて、あれこれと会話しながら一緒に食卓を囲んでいるのですが、「いつも」が普通にある日常の有難さを、この本を読んで再確認しました。
 食卓を、みんなが笑顔で楽しく囲めることが、人生の最大の幸せなのでしょうね。


 それにしても、お蔦さんは70歳手前ですが、とっても粋ですし、ちょっと古風ですね。やっぱり芸の道の人だからでしょうか。
単行本第1弾の表紙はは白髪の後ろ姿でしたが、文庫や第2弾はだいぶ若くなっています。今の60代だったらこちらのほうが自然ですね。
 そして、可愛い有斗君。最後のシーンの望君の感慨が本当によく伝わって、涙が出ちゃいそうでした。
 西條さんのお話は時代物も現代ものも、人と人とのつながりが魅力ですね。また次も楽しみです。

 

<関連サイト>
今月の本の話題 - 僕のおばあちゃんはもと芸者のお蔦さん 西條奈加『いつもが消えた日』[2013年11月]
コメント
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