MOONIE'S TEA ROOM

大好きな読書や言葉、料理のコトなど。

『ふたつの家のちえ子』

2013年12月30日 | BOOKS
『ふたつの家のちえ子』
今村 葦子(イマムラ アシコ) 著・絵 
評論社 (1986年1月)


 お孫さんから「おばあちゃんの子どもの頃って、どんな生活だった?」と聞かれたら、団塊の世代の皆さんはどんな子供時代を思い出すでしょう?
 この本は、まさに団塊の世代・1947年生まれの著者 今村葦子さんの描く一人の少女の幼少期の物語です。
 1950年代前半、映画『となりのトトロ』とほぼ同じ時代ですね。
 私の両親は著者よりも少し下の世代ですが、母や父から聞いた子どものころの想い出と重なるところが多くて、この物語の世界に幼い頃の両親がいるような気がしてきます。

 主人公のちえ子は、祖父母の家で暮らす女の子。
 赤ちゃんの頃にやむを得ない事情で祖父母に預けられたので、両親を知らずに、祖父母の愛情に包まれて暮らしています。
 前半では、「祖父母の家」で暮らす、春から始まる1年間が描かれます。
 後半は「ふたつの家」の二つ目の家である「山の上の家」での、母・姉兄妹との賑やかな生活を描いています。
第一次ベビーブーム時代の子だくさん家庭で、ちえ子には兄2人(双子)・姉と妹がいます。
 お父さんはちえ子が生まれてすぐから闘病中で、お母さんが働き、兄と姉が家事を手伝って暮らしを支えているのです。
 祖父母の愛情の深さとはまた違う、母や兄弟姉妹の愛情の強さと生き生きとした毎日の生活が様々なエピソードから伝わってきます。
小学校へ通うことになった7歳のちえ子と、個性豊かな兄2人、しっかりものの姉、可愛い妹のやりとりの、なんとも微笑ましいこと。兄弟姉妹のいる素晴らしさを感じます。

 花まつり、お盆、「ふたつの家」それぞれのお正月。
 もらい湯やお下がり、お手製の洋服、ヤギのミルク、ガキ大将、自転車の三角乗り、家族で食べる運動会のお弁当。
 懐かしくて優しくたくましい昭和の香りが届いてくるような物語です。
 生や死が今よりももっと身近で、家族がもっと助け合って暮らしていたころ。
 今の子どもたちにも、この家族の良さが伝わるでしょうか?

 後半は3月からお正月までを描いているのですが、物語の最後に訪れる家族の幸せの温かさに胸の奥がきゅーっとなります。
児童書コーナーにありますが、団塊の世代の皆さんにも是非読んでいただきたい名作です。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする