『マリアンヌの夢』(「MARIANNE DREAMS」)
キャサリン・ストー(Catherine Storr ) 作
猪熊 葉子 訳
岩波書店<岩波少年文庫>
『海の休暇』(「MARIANNE AND MARK」)
キャサリン・ストール 作
新谷 行 訳
学研<ジュニア世界の文学 12>(1971年)
『思い出のマーニー』を読んでいて、ふと気になったのが『マリアンヌの夢』と続編である『海の休暇』。
イギリスの女の子が夢と現実の狭間のような場所で友人ができるというストーリーも、「マリアンヌ」という名前も、ロンドンから海辺へ保養に行くという設定も、『思い出のマーニー』から連想されて、2冊合わせて読んでみました。
(『思い出のマーニー』と『マリアンヌの夢』は同じ岩波少年文庫から出ています)
『マリアンヌの夢』は、10歳の女の子・マリアンヌが主人公の物語。
病気が原因で長期療養しているマリアンヌが、夢の中の世界と現実が密接につながっているような不思議な体験をするのですが、小学生ぐらいの女の子の純粋な子どもらしさと、子どもの未熟さゆえの残酷な部分や心の中に抱える恐怖が、子どもの目線でまざまざと描かれていて、子ども時代の自分の心の中を恐る恐るのぞき見ているようなそんな気分になります。
心の中にある善ではないもの、どこからか沸き起こる妬みや寂しさ・いら立ち、大人でも説明しきれないような感情の揺れ。子ども時代を過ぎたら忘れてしまうような不安定な心理状態をファンタジーの形で描いているからこそ受け入れられるのかもしれません。著者のキャサリン・ストーは精神分析医でもあり、この本は子どもの心理を描いた本としても非常に貴重であると思います。
『海の休暇』は、『マリアンヌの夢』の5年後を描いた物語。
原書のタイトルは『マリアンヌとマーク』(「MARIANNE AND MARK」)と、非常にシンプルです。
前作で、夢の中だけの友人だった二人がやっと出会うのですが、それは物語が3分の2も過ぎてから。
物語の前半は、少し成長した14歳(もうすぐ15歳)のマリアンヌの思春期の少女らしい悩み・見栄・愚かな行動に、かつて少女だった多くの女性が「あぁ、分かる」と内心反省しながら読むのじゃないでしょうか。(私も反省・赤面しながら、過去のあれこれを思い出しました)
好きでもない男の子でも「女性」として扱われると嬉しかったこと、「普通でない」と言われると不安だったこと、「私たち」というグループの中に入れないことに劣等感と妬みを感じたこと、「ボーイフレンド」のいる優越感や、占いや超常現象を信じてしまうような「何かにすがりたい」と思う心理……。どれもこれも、今の女の子たちにもありそうなことですよね。
しかし、この『海の休暇』の何よりも素晴らしいところは、マークの成長ぶり。理性的で、聞き上手で説明上手。女の子の保護者に対しても臆せずにきっちり話せるところなんて、非常に魅力的な好男子です。前作のマークの駄々っ子ぶりを思うと、この5年間の成長に感激してしまいます。この時期の男子の成長は目覚ましいものがありますからねぇ。
『海の休暇』は今では希少本のようで、京都府の図書館で「府内1冊本」でした。
「ジュニア世界の文学」シリーズなので、学校図書館にはあるかもしれませんね。
学研(学習研究社)からの出版が1971年ということですから、もう45年も前です。
そのため、「すてばち」のように懐かしい言葉も出てくるので、今の中学生には難しいかもしれませんが、教育関係に進む学生さんには是非読んでもらいたいと思う2冊です。
ちなみに、『マリアンヌの夢』(「MARIANNE DREAMS」)は1958年の作品。続編の『海の休暇』(「MARIANNE AND MARK」)は1960年。
『思い出のマーニー』(「When Marnie was there」)は、1967年に出版されています。
イギリスで出版された、同じ世代の女性作家による、同じようにファンタジー色の強い物語ですけれど、『思い出のマーニー』が「優しい不思議」だとすれば、『マリアンヌの夢』は「ちょっと怖い不思議」ですし、ファンタジーではない『海の休暇』は「思春期の悩みと出会い」といった感じ。
映画の原作として『思い出のマーニー』に興味を持ったかたは、こちらの2冊もいかがでしょう?
キャサリン・ストー(Catherine Storr ) 作
猪熊 葉子 訳
岩波書店<岩波少年文庫>
『海の休暇』(「MARIANNE AND MARK」)
キャサリン・ストール 作
新谷 行 訳
学研<ジュニア世界の文学 12>(1971年)
『思い出のマーニー』を読んでいて、ふと気になったのが『マリアンヌの夢』と続編である『海の休暇』。
イギリスの女の子が夢と現実の狭間のような場所で友人ができるというストーリーも、「マリアンヌ」という名前も、ロンドンから海辺へ保養に行くという設定も、『思い出のマーニー』から連想されて、2冊合わせて読んでみました。
(『思い出のマーニー』と『マリアンヌの夢』は同じ岩波少年文庫から出ています)
『マリアンヌの夢』は、10歳の女の子・マリアンヌが主人公の物語。
病気が原因で長期療養しているマリアンヌが、夢の中の世界と現実が密接につながっているような不思議な体験をするのですが、小学生ぐらいの女の子の純粋な子どもらしさと、子どもの未熟さゆえの残酷な部分や心の中に抱える恐怖が、子どもの目線でまざまざと描かれていて、子ども時代の自分の心の中を恐る恐るのぞき見ているようなそんな気分になります。
心の中にある善ではないもの、どこからか沸き起こる妬みや寂しさ・いら立ち、大人でも説明しきれないような感情の揺れ。子ども時代を過ぎたら忘れてしまうような不安定な心理状態をファンタジーの形で描いているからこそ受け入れられるのかもしれません。著者のキャサリン・ストーは精神分析医でもあり、この本は子どもの心理を描いた本としても非常に貴重であると思います。
『海の休暇』は、『マリアンヌの夢』の5年後を描いた物語。
原書のタイトルは『マリアンヌとマーク』(「MARIANNE AND MARK」)と、非常にシンプルです。
前作で、夢の中だけの友人だった二人がやっと出会うのですが、それは物語が3分の2も過ぎてから。
物語の前半は、少し成長した14歳(もうすぐ15歳)のマリアンヌの思春期の少女らしい悩み・見栄・愚かな行動に、かつて少女だった多くの女性が「あぁ、分かる」と内心反省しながら読むのじゃないでしょうか。(私も反省・赤面しながら、過去のあれこれを思い出しました)
好きでもない男の子でも「女性」として扱われると嬉しかったこと、「普通でない」と言われると不安だったこと、「私たち」というグループの中に入れないことに劣等感と妬みを感じたこと、「ボーイフレンド」のいる優越感や、占いや超常現象を信じてしまうような「何かにすがりたい」と思う心理……。どれもこれも、今の女の子たちにもありそうなことですよね。
しかし、この『海の休暇』の何よりも素晴らしいところは、マークの成長ぶり。理性的で、聞き上手で説明上手。女の子の保護者に対しても臆せずにきっちり話せるところなんて、非常に魅力的な好男子です。前作のマークの駄々っ子ぶりを思うと、この5年間の成長に感激してしまいます。この時期の男子の成長は目覚ましいものがありますからねぇ。
『海の休暇』は今では希少本のようで、京都府の図書館で「府内1冊本」でした。
「ジュニア世界の文学」シリーズなので、学校図書館にはあるかもしれませんね。
学研(学習研究社)からの出版が1971年ということですから、もう45年も前です。
そのため、「すてばち」のように懐かしい言葉も出てくるので、今の中学生には難しいかもしれませんが、教育関係に進む学生さんには是非読んでもらいたいと思う2冊です。
ちなみに、『マリアンヌの夢』(「MARIANNE DREAMS」)は1958年の作品。続編の『海の休暇』(「MARIANNE AND MARK」)は1960年。
『思い出のマーニー』(「When Marnie was there」)は、1967年に出版されています。
イギリスで出版された、同じ世代の女性作家による、同じようにファンタジー色の強い物語ですけれど、『思い出のマーニー』が「優しい不思議」だとすれば、『マリアンヌの夢』は「ちょっと怖い不思議」ですし、ファンタジーではない『海の休暇』は「思春期の悩みと出会い」といった感じ。
映画の原作として『思い出のマーニー』に興味を持ったかたは、こちらの2冊もいかがでしょう?