MOONIE'S TEA ROOM

大好きな読書や言葉、料理のコトなど。

『セオの事件簿4 正義の黒幕』

2013年12月05日 | BOOKS
 あれれ?全4巻だと思っていたら、第1巻から続くあの事件が解決していません!

少年弁護士セオの事件簿 4『正義の黒幕』
ジョン・グリシャム 作 石崎洋司 訳


 出版社の特設サイトの一番下には「本シリーズは全4巻です。」って書いてあるのですけれど、ゴルフ場の殺人事件の被告人は行方知れずのまま4巻が終わってしまいました。
 これは、シリーズが続くということでいいのかしら?

 今回は裁判の場面はありませんが、非常にドキドキハラハラする展開です。
 危険な目にあったり、政治の裏側を知ってしまったり、バイパス建設の反対活動や公聴会に参加したり、セオ自身が責められる立場になる場面もあります。
 頭の良い一面だけでなくて、正義と倫理の間で悩んだり人を嫌いになったりする一面もありますから同世代の子が読んでも感情移入できるのではないでしょうか。

 タイトルは『正義の黒幕』ですが、「黒幕」というとなんだか悪いイメージですよね。
 原題は「The Activist」=「活動家」。今回のセオの活躍は、まさに「少年活動家」ですね。
 正しいことをどう伝えるか、汚い方法にどう対抗するか、今回のセオは「ディベート・弁論」で見事に戦います。
 日本の子どもたちにも、身に着けてほしい力ですね。

 さぁ、裁判の行方はどうなるでしょうか?
 5巻が出るのを待ちたいと思います。

<関連記事>
『少年弁護士セオの事件簿』シリーズ - MOONIE'S TEA ROOM
 
<関連サイト>
『少年弁護士セオの事件簿』特設サイト - 岩崎書店
Official website Theodore Boone: Kid Lawyer by John Grisham
 公式ページ(英語)です。

<追記 2015.03.23.>
 『少年弁護士セオの事件簿』シリーズ第5巻がアメリカで出版されるみたいです!
 アメリカのamazon.comの情報ですが、タイトルは「Theodore Boone: the Fugitive」発売日は「May 12, 2015. 」。
 日本語訳すると『逃亡者』になるのかな、発売日は2015年5月12日ですね。
 いよいよ、1巻から続く事件が動き出します。
 翻訳はいつになるでしょうね?楽しみです。

 ※岩崎書店の特設サイトの一番下の「本シリーズは全4巻です。」という言葉もいつの間にか消えていました!

<追記 2015.10.16.>
 2015年11月に5巻の発売が決まったようです。『少年弁護士セオの事件簿5:逃亡者の目』
 1巻の逃亡者がやっと登場!楽しみです。
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『死ぬ気まんまん』

2013年12月05日 | BOOKS
『死ぬ気まんまん』
佐野洋子/著
光文社文庫


 なんてまぁ、素直な人なんでしょう。
 2010年に亡くなったエッセイストであり絵本作家である 佐野洋子さんのエッセー2つと、主治医の先生との対談、そして作家 関川夏央さんの寄稿「『旅先』の人 - 佐野洋子の思い出」を収めた本です。

 『100万回生きたねこ』や『だってだってのおばあさん』『おじさんのかさ』などなど、魅力的な絵本をいくつも作った佐野洋子さん。亡くなってからエッセーを読み始めましたが、好悪も、愛憎も、酸いも甘いも思うがままに書き散らかしているようで、その率直な物言いに何度もハッとします。

 表題の「死ぬ気まんまん」は余命宣告を受けてからのエッセー。
執着や未練のなさ、潔さに驚いてしまいますし、人間観察の面白さに笑ってしまうこともしばしば。
 もう一つのエッセー「知らなかった - 黄金の谷のホスピスで考えたこと」は1998年に婦人公論に掲載されたもので、死と向き合うホスピスでの体験が描かれています。(これを書いたときは、佐野さんはまだ余命宣告をされる前なのですが、「死」というテーマで考えると「死ぬ気まんまん」と一緒に収められていることが自然に思えます。)
ホスピスで過ごす人たちとの会話、いろいろなエピソードは、いつか自分が迎える終末期について考えさせられます。

 「生きていること」が目的になって、ひたすら「がん」や老いと闘い続ける現代の医療・社会への疑問も、さらりと述べられています。「人生の質」という言葉は、まさに長期療養・終末医療の「QOL(クオリティ・オブ・ライフ)」そのものです。
 医療が進歩して「どう死を迎えるか」の選択も多様になりました。呼吸し続けること・細胞が生き続けること・脈を打ち続けること、肉体が死んでいない時間を一刻でも伸ばすための「延命医療」が、本人・家族のためになっているのか、私もときどき恐くなります。
 そんなことを親の介護もまだしていない世代が言うと「不孝」な問題発言になってしまうかもしれませんが、余命宣告を受けていた佐野さんの言葉はスーッと受け止められます。
 好きなものを食べたり、飲んだり、素敵なものを見たり、本を読んだり、好きな人に会って語り合ったり……、少しでも「生きている幸せ」を感じられるのなら長生きしたいですけれど、意識がないような状態だったら「私」としての「人生」は終わってしまっているのじゃないかなぁ。「延命治療を希望しないこと」について、きちんと家族に伝えておかないといけませんね。
 大往生して「ピンピンコロリ」と逝けたらいいのですけれど。
 
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『オバケの長七郎』

2013年12月03日 | BOOKS
『オバケの長七郎』
ななもりさちこ作 /きむらなおよ絵
福音館書店


 可愛い可愛いオバケです。
 飛ぶことも消えることも壁を抜けることも大きくなったり小さくなったりすることもできない半人前のちびっこおばけの長七郎が、お寺のゴミ捨て場で古道具屋のおじいさんに拾ってもらうところから始まります。

 短い8つのお話で、長七郎は少しずつ少しずつ成長していきます。
 「やなぎした商店街」の面々の愉快で温かいエピソードは、懐かしい「人情もの」のようです。
 8つのお話でぐるりと1年間なので、季節の移り変わりも楽しめます。

 なんといっても、きむらなおよさんの絵の可愛いこと!
 どの絵の中の長七郎も、「ゆるキャラ」に負けないぐらい可愛いです。
 10年ちょっと前にNHK「おかあさんといっしょ」で歌われていた「ハオハオ」という歌のおばけのハオハオを思い出してしまいました。あれも、本当に可愛かったのよね。

 英語のタイトルは「The little ghost who wishes to be scary」だそうです。
 直訳すると「こわくなりたい ちいさな おばけ」といったところでしょうか?
 怖くなんてなくっていいのにね。
コメント (1)
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『食堂かたつむり』

2013年12月01日 | BOOKS
『食堂かたつむり』
小川 糸/著
ポプラ社


 ひどい失恋をして、自分のもっている財産をほとんど失って故郷へ戻った主人公が料理を作ることから「命」を見つめなおしていく物語。

 どこか昔話のような現実離れした話なのに、「料理を作る・食べる」という要素が、この物語を私たちのいる世界につなぎとめている感じがします。私が食べたこともないようなメニューばかりなので、なかなかイメージできないのが残念ですが。

 絶望して、誰かのために料理をして、許して、泣いて、食べて、感謝して。

 料理の材料として命を失うものから、そして、この世を去る人たちから、「命」のバトンをもらって生きていくのは、今生きているすべての人たちに共通なのだと思います。

 ラストは朝日が差し込むようにさわやかです。
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