今年も、上野の東京展に書の作品を出す時期が
やって来ました。
今回は、「創」を初めて大筆で書くことにしました。
今まで、小さい筆で書いてきたので、大筆でも
書けると思ったのです。
書いても、書いても、私の思う「創」からどんどん
離れていくのです。
創(つくる)は、亡くなった息子の名前なので
思いが余りにも強すぎて、全く書けなくなって
しまいました。
もう、書けないのではという不安と、
書かなくては息子に申し訳ないという思いを
抱えながら、書いた「創」は酷いものでした。
先生に「最後の1画は、始まりも終わりもない
そんな線にしたい」と言うと、「思いが強すぎる
最後の1画をそんなに思わずに書いてみなさい」と
言われ、頭が真っ白になりました。
「創」の最後の一画は、私と息子を繋ぐ線だと
思っていたので、この一画を書く為にすべてを
かけていたので…
どうしていいか分からなく途方にくれていると
創の笑顔が浮かんできたのです。
あの子は、明るく楽しいことが大好きだったなと
思ったら、楽しい気持ちで書こうと、気持ちが
切り替わったのです。
こだわった最後の一画は、自分の意思とは
関係なく、思ってもいない短さで筆が
上がったのです。
筆に書かせてもらうとは、聞いていましたが
最後の一画は、筆の意思で短くなった感じ
でした。
出来上がった「創」は、天国の息子と私を
繋ぐ線は書けなかったけれど、
充分過ぎるくらい、創と向き合えました。
「書」をやりだして、こんなに苦しかったのは
初めてです。
それも、私と息子との時間でした。
ちょっとコミカルな「創」は、あの子の笑顔の
ようです。