世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

くすのき

2012-10-07 12:46:41 | 有為のしらべ

今日、犬の散歩をしていたら、友達のくすのきが、とうとう伐られてしまっているのを、見た。きれいだった緑の樹冠がなくなって、丸坊主になっていた。

ひとつ、発見したこと。人は、悲しいことに出会うと、何かが固まって、感情が動かなくなってしまうことがあるのだと、言うこと。

ずっと、あそこにいてくれて、一緒に生きてくれるのだと、思いこんでいたものだから。あの木が、なくなってしまうことなんて、ほんとは思ってはいなかったものだから。

初めて、あの光景をみたとき、なぜだかわたしは平静で、まるで他人事のように、ああ、いってしまうのか。いいよ、いってしまっても。ありがとう、と、落ち着き払って、あの木にあいさつしたのだ。とくに悲しみを感じることなんて、なかった。だけれど。

犬の散歩を終えて、カメラを持って外に出て、花の写真など撮っていたら、しんみりと、静かに悲しみがあふれ出てきて、それが石のように胸をふさいでしまった。頭から冷たく、何かがかぶってきて、わたしは人形みたいに動けなくなって、涙が出てきた。

蝶々が二匹、まるでわたしをなぐさめるように、頭の上を通っていった。露草が、日に透けて、静かに笑ってくれた。竹やぶの笹が、風に踊って、何かをわたしに語ってくれた。

仕方のないことなんだよねえ。わかってる。木は、人間を恨むことなんてしないよ。愛しているから。わかっているから。

でも、木が一本、いなくなっただけで、この世界から、愛が一つ、消えたのだ。それはとても微妙で、繊細で、ひなたに浮かんで見える、ホコリ一つの重さもないような、変化だけれど。

一番つらかったとき、一番助けてくれた、美しい木だった。愛してる。本当に愛してる。
ありがとうと、いうことばも、陳腐になるほど、苦しくて、言える言葉がない。

どうすればいい。どういえばいい。

ありがとう。



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びじん

2012-10-07 06:52:48 | 詩集・貝の琴

さて 今の自分はどんなやつかというと
まあ おんなで
あたまが そこそこよくて
かなり かわいい
うそじゃなく うぬぼれてるわけでもなく
ほんとにかわいいんだ
だって神様がそういうから


こういう状況で 何ができるかと
いうことを考えてみる
女で ほんとにあたまのいいやつは
自分のために ずるいことなんかしないよ
ひっそりとね 自分を影に沈めて
だまって そばにいてあげるんだ
それだけで 人を幸せにできるんだよ
ほんとにあたまのいい女の子は
そういうことができるんだ

きれいだということを
一番よいことのために使うんだ
やさしくほほえんであげるんだ
風のようによりそってあげるんだ
馬鹿なふりして 気がつかないふりをして
痛むところに そっと薬を塗ってあげるんだよ
だいぶ忍耐は必要だけど
そういうことができるのが 
ほんとにかわいい女ってものだから

ほんとのほんとに かわいい子は
ずっとこんなことを やっているよ
馬鹿なふりをして 頭の悪いふりをして
いいよ いいよって言って
どんなつらいときでも
ああ いいよって言って
全てを背負うのさ
それができるのが ほんとのびじんてものなんだよ



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