久しぶりに、髷を結っている什さんです。いや間違えた。これは、什さんが地上に生きている間に、天の国で王様をやっている、幻の王様です。
幻の王様も、魂の奥で、什さんとつながっていますから、本体である什さんの変化を感じて、苦悩しています。
こういう高度な分身の魔法の原理も、お話作家としては考えているんです。どうやってできるか。こういう細かい設定をつくるのも、作家の楽しみというもので。でも、煩瑣になるので書きませんが。まあ、同一人物に、限りなく近いですが、基本、違う人です。でも、全く同じ人とも、言える。
苦悩しているのはたぶん、本当の王様ではなく、王様のために存在を提供しているある存在です。王様自身は、ほとんどなんでもないことなのだ。けれども困るのは、天の国に住んでいる人たち。そして、什さんをそこまで追い詰めた人間たち。
什さんは人間じゃありませんから、地球で自分の仕事を見事に果たして帰ってくる。でもそのとき初めて、人間たちにわかってしまう。王様の正体が。
それは人間たちにとっても、もう、今までと同じではいられないという、現実にもなってくるのです。
天人楽は、人間たちの希望を描いて、終わりました。きっといつか、人間たちは、大切なことに気づいて、新しい道を歩いていく。けれども、それからが苦難の道。この王様は多分、それを考えている。
それがなんなのかは、もう書きません。けれども、人類の未来は、明るい。
なにもかもはこれからです。
月の世の物語、これにて。