おどろくな きみよ
きみの すんでいる
きみの いえが
ほんの 五分のうちに
くずれさっても
おどろくな きみよ
なぜならそれは
さいしょから
きみのものではなかったからだ
きみよ どうかこのことを
しっかりと忘れないで
胸にきざんでいておくれ
きみのすむ その家は
ほんとうは ちがう人の家なのだ
きみのために
蜂の翅をもつプーカが
宝石の中に折りたたんで
盗んできたのだ
だからそれは いずれ本当の持ち主に
返さなければならない
きみよ おどろくな
なぜならきみはそれを 今は知らないから
そのきみの たいせつなたから
すべて きえてゆくことを
いつかそれを 知らなければならないときが
くるときのために 言っておく
きみよ すべてが
夢と消えても 驚くな
それは 最初からなかったものだから
本当の幸せは その中には
かけらもないのだ
きみよ きみよ
おぼえていておくれ
すべてをうしなったとき
これだけは言わないように
つらいと くるしいと いわないように
憎まず 涙を飲んで 耐えるように
ああそれでも 憎いときみがいうとき
きみを静かに 照らしてくれる月を
せめて その愛を
あたりまえと 思うな
きみのために 涙を落してくれる空の
風にこめた愛のささやきにさえ
気付かずに 何もかもを見捨てて
ひきとめる風を千切って 逃げるな