アシメックが引いた線を基準に、男たちは一心に掘っていった。風が起こす風紋のように、それは美しい文様だった。人間が、同じ心に従ってみなで働いている。それはまるで、不思議な風が地面に描いた不思議な文様のように見えるのだ。
みんなのために、いいことをするのだ。男というものは、そういうものだ。それがカシワナカの教えだった。カシワナ族の男たちは、その神の教えに従って働いているのだ。みんなで力を寄せ合い、働いている。それは実に美しい。アシメックはみなと一緒に働きながら、神が今自分たちを見ていると感じていた。村の危機を救うために働いている男たちを、今、カシワナカが見ている。
もちろん穴は一日では堀り終わらなかった。夏の太陽が照りつけ、汗ばんだ男たちが疲れを見せ始めるころ、アシメックは仕事を終わらせた。
「よし、今日はここまででいい。後は明日またやろう」
みんながほっとして、アシメックの顔を見た。族長の顔が、日差しを照り返して一段と立派に見える。彼は嬉しそうに、地面に掘られた穴を見下ろしていた。みんなも穴を見た。思ったよりも深い穴が、思ったよりも広く空いている。男たちは汗をぬぐいながら、それに自分で感動を覚えていた。これは、すごいことができるかもしれない。
トカムも、その感動を共にしていた。鍬の柄を握りしめながら、自分が掘ったところをじっと見降ろしていた。人間の腰あたりまでが埋まる深い穴が、自分の下に空いている。それを自分はやったのだ。そう思うと、トカムは何か、これに似たことを経験したことがある、と思った。何だったか。そうだ、子供のころ、山でうまく鳥を捕まえたことがあったのだ。飛んでいる鳥を、手を伸ばしてうまく捕まえた。あのときのうれしさと、これは似ている。
捕まえた鳥を見せた時の、母の嬉しそうな顔がよみがえった。