ネオもだんだんとたくましくなっていた。年の割には体が大きい。大人になりたいと強く思う子供は、早く成長するのだ。十七になったら狩人組に入りたいと言っていたが、最近は違うことを考えていた。
「タモロ沼で、稲の仕事をしたいな」
「ふうん、タモロで?」
「うん。ヤテクはオロソ沼でいっぱいだろう。おれ、タモロの稲を見ていたら、あそこで稲の世話をしたくなった。魚釣るのもおもしろいけど」
「うん、ネオがそうしたいんなら、そうしたらいいわ」
モラはいつも、静かな声で、ネオに賛成してくれた。それがいいのだ。そこが好きなのだ。モラのほかの女は、こんな声で、こんなことを言ってくれない。
ひとりの女にこだわることを、今もサリクにからかわれることがある。ほかにもいい女はたくさんいるのに、もったいないぞと。だけどネオは、本当に、モラのほかの女と交渉するのは嫌だった。
「ネオがそうしたいのなら、そうすればいいわ」
ずっと一緒にいたいというと、モラはそう言ってくれる。そういうモラがいい。ほかの女なんて嫌だ。
ネオは、もう自分はこれでいいと思っていた。少しくらいほかと変わっていても、かまわないんだ。オラブみたいにみんなに迷惑かけるわけじゃない。みんながそうしてるからって、おれはやっぱり、モラのほかの女のところにいくことなんて、できない。
こんな自分を、みんなは時々変な目で見るけど、アシメックだけは暖かな目で見てくれる。
「変わった奴だな。だがいいやつだ。おもしろい」
ネオは、アシメックのその声が、心底好きだった。あんな男になりたい。すっごくいいことをして、あんないい男になりたい。