季節は夏を越え、秋になった。サリクはまた、コクリが咲いたことを、アシメックに知らせに来た。一度言われてから、必ずそれを守るようになったのだ。アシメックは、コクリの花を持って、嬉しそうに自分の家を訪れてきたサリクを、今年ばかりは抱きしめたいほどだった。稲刈りだ。新しい稲刈りが始まる。
オロソ沼には稲舟を出し、いつもと同じやり方で稲を刈らせた。それがあらかた終わったあと、アシメックはみんなをタモロの方に導いた。
タモロはオロソよりずっと浅い。舟は使えない。みんなは沼の中に足をつけ、稲を刈っていった。腰に茅袋をつけ、刈った稲の穂先をそれに入れていくのだ。それを考えたのはセムドだった。
舟の上に稲を置くことができないからには、新しい工夫が必要だ。そしてそういうことを考え付くものは必ずいる。
やってみれば、必ず何かが見つかるのだ。
楽師たちの労働歌に合わせながら、みんなはリズムよく稲を刈っていった。その様子を、アシメックは岸に立ちながら満足そうに見ていた。涙がにじんでくるのは、年をとったからなのか。
これでいい。これでいいんだ。おれがいなくても、かならずみんなはなんとかなる。
その年とれた米の収穫量は、去年の倍だった。壺の数が間に合わないほどだ。エルヅは数えながら、半狂乱になるほど喜んでいた。
「これだけあれば、ヤルスベもなんとかなるよ!」
その様子を見ながら、シュコックは稲蔵を増築しなければならない、と嬉しそうに言った。隣にいたアシメックもそれに同意した。