ヨアヒム・パティニール
エレボスとニュクスの息子。黄泉の川ステュクスの渡し守。この川を越えて黄泉に向かう死者を船に乗せて運ぶという。その際、死者に銀貨一枚を要求し、払えない者は二百年もの間、ステュクスの岸辺をさまようという。
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生者の国と死者の国を区切る川の神話はよくあるものらしい。ステュクスは水系の名であり、忘却の川レテはその支流だそうです。死者を黄泉の国タルタロスに運ぶカロンは無愛想この上なく、死者を馬鹿にするという。人間の、死に対する恐怖がつくりあげたイメージでしょう。だが死というものは、それほど怖いものではない。それはこれから、人間が学んでいくことです。