サンドロ・ボッティチェリ
クロノスが切り落としたウラノスの男根が海に落ち、それにまつわりついた泡から生まれたという。生まれた時ヴィーナスはすでに成人した女性だった。金髪の美しい乙女で、その美に魅了された西風ゼフュロスがキプロス島に運び、そこで季節の女神ホーラが彼女を見つけて服を着せ、オリンポスに連れていった。愛と美の女神。一説にはゼウスとディオーネの娘。
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ヴィーナス(アフロディテ)を語る上でこの絵は外せないでしょう。あまりにも美しい。殺害の後の泡から生まれたというのは興味深い。ウラノスは果てしなく大きな男であったが、年経て男権の暗黒面が生じた。それをクロノスという若い秩序が倒した。その殺害の後から愛と美の女神が生まれたというのはおもしろい。自己存在は陰惨な殺害の経験を味わってそこからきしるように愛の発生を見る。あまりにもつらいからだ。ヴィーナスはさまざまな男性と恋に落ちますが、本当はそれは冤罪です。なぜなら、貞節を守れない女性はこれほど美しくなることはできないからです。美しい女神と自由に恋をしたい男が勝手に作った話でしょう。それを別に否定もせずに笑ってくれるのが、女神なのです。