リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

幻の楽器,ラウテン・ヴェルク

2005年11月03日 23時20分12秒 | 音楽系
ラウテン・ヴェルクのコンサートが大垣でありました。ラウテン・ヴェルクというのは,バッハが使っていたと言われている幻の楽器です。チェンバロにガット弦を張りリュートの様な音が出るようにした楽器らしいのですが,現物は残っていません。バッハのリュート曲7曲のうち,何曲かは音域こそリュート的ですがテクスチャは明らかに鍵盤楽器です。

演奏者は山田貢先生。先生は20年くらい前に一度あったきりでしたが,3年くらい前先生のラウテン・ヴェルクに関する著書をヤマハで見つけ,ラウテン・ヴェルクの研究をされていることを知りました。バーゼルに居たときも折りを見つけてその本を読んでいまして,ぜひ音を聴いてみたいと思っていました。今年の5月に名古屋でコンサートをされたことを知っていましたが,残念ながら行けませんでしたので,今日のコンサートを楽しみにしていました。

私は以前岐阜県に住んでいましたので,大垣はすぐにいけるという観念が頭にこびりついていたためか,ちょっと油断していまして最初の10分ほど聴き損なってしまいました。大垣は桑名から結構遠いです。まるっと1時間5分もかかりました。

遅刻したお陰で,第1曲目のプレリュード,フーガ,アレグロBWV998は聴けませんでしたが,次のヴァイスからは聴くことができました。いつも弾いている曲が,鍵盤楽器それもリュートの様な音のラウテン・ヴェルクから聞こえてくるのはなんか変な感じがしました。聴いていて思ったのですが,ヴァイスの曲って鍵盤的な装飾をしても結構似合うものですね。惚れ直しましたよ。

コンサートが終わってから楽器を見ることが出来ましたが,いろんな素材の弦が張ってあったので調弦(鍵盤楽器では調律かな?)が大変だろうなと思いました。弦長は思った程は長くなく,一番長いところで,ドイツテオルボのバス弦くらいでした。リュートを模倣しているのだからそれはある意味で当然でしょうね。でも最低音部にはスチール線入りのガットが張られていました。先生に巻き弦を張ったらどうでしょうかと尋ねましたら,巻き弦の音があまり好みではないとのこと。

でも,その巻き弦って多分ピラミッド社のもののような気がするので,今度お会いしたときにキュルシュナーの巻き弦を持っていこうかと思っています。試してみる価値はあるような気がするんですけどね。

コンサート後の打ち上げにも厚かましくも押しかけてしまいましたが,先生からはいろいろな話をお伺いすることができました。リュート奏者として少しでも先生の研究のお役に立てたらうれしいですね。