リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

日本語指向

2013年10月03日 10時27分26秒 | 日々のこと
某自動車関連番組を見ていますと「かたまり感」ということばをちょくちょく耳にします。自動車雑誌なんかでもよく目にすることばです。「かたまり感」というのは以前なら「マッシブな感じ」という表現で用いられていたような気がするのですが、意味合いとしては「質感がある」「重量感がある」「堂々としている」というような感じで、クルマのデザインなどに対する評価に使われることばです。

新製品の発表会なんかでは「訴求」ということばもよく聞きます。「この新型車は、超高燃費性能を訴求していきたいと思います」とか「今回の新製品の訴求ポイントは○○で・・・」というように使われています。確か少し前は「アピール」ということばが使われていました。

「かたまり感」は多分新語でしょう。「訴求」はどちらかというと古くさくてちょっと堅い感じがすることばです。古くさくてちょっと堅めのことばと言えば、音楽業界、特にポップス系の業界で、曲のことを「楽曲」と言うようになってきています。誰それが誰それという歌手にガッキョクを提供して・・・なんて言い方はよく耳にしませんか?一昔前は単に「曲」と言っていたんですが、それが英語の「ピース」とか「コンポジション」ということばに向かわず、「楽曲」ですからね。

こういう例が他にもまだあるのかどうかわかりませんが、これら3つのテレビや雑誌などでよく見聞きすることばは、英語から日本語、あるいはわかりやすい語からやや形式ばった語へという傾向が見て取れます。

【例文】
今回できあがったフレンチ・バロック・リュートは小さいながらもかたまり感があり、弾きやすさ音の通りやすさを訴求しています。この楽器は特にフランスやヴァイスの初期の楽曲を演奏するのに適していると言えます。