リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ホ短調組曲 BWV996

2013年12月28日 21時31分12秒 | 音楽系
ギターでは結構よく演奏される曲です。でもギター編曲の大半は、大胆に和音を減らしたり、バッサリと必要な声部や装飾をカットしています。まぁそこまで割り切ればコトは簡単なんですが。

リュートの場合はもちろんバロック・リュートを使います。ルネサンス・リュートとかアーチ・リュートは論外。テオルボでもあかんでしょう。

この曲はまず間違いなくラウテン・ヴェルク(チェンバロにガット弦を張ってリュートっぽい音が鳴るようにした楽器)のためでしょう。バロック・リュートの標準のニ短調調弦でこの曲を弾くととてもじゃないですけど弾けたもんではありません。大体このホ短調という調性がバロック・リュートがとても苦手とする調です。演奏技術的な問題から、バロック・リュートはシャープ3つの嬰ヘ短調の曲は結構あるのに、シャープ2つ、1つのロ短調、ホ短調の曲はとても少ないのです。

そこで現代のリュート奏者たちは昔からこの曲をいろんな調に移して格闘してきました。ホプキンソン・スミスはへ短調、今村泰典はト短調、ニ短調という人もいましたねぇ。中には強引にホ短調で録音した人もいました。

何調にしてもこの曲はとても難しく、プレイアビリティという点で行けば危なくて本番ではできるような代物ではないです。某有名リュート奏者は、「録音はしたけどライブではほとんどやったことがない」とおっしゃっています。

そんな中、ヤコブ・リンドべルイは彼のCDのライナーノートで、ロイスナーが使ったスコルダトゥーラに言及していて、スコルダトゥーラを使って、ホ短調で録音したようです。どんなスコルダトゥーラかというと、1コースを半音下げてミ、2コースを全音下げてドにするだけです。(もちろんバス弦はホ短調に合わせます)

ホ短調組曲の最低音はCで11コースのバロックリュートの最低音と同じであることも注目すべきことです。もっともこれはフレンチのチェンバロの最低音でもありますが・・・音域的には11コースの楽器にとてもうまい具合に当てはまっています。ですから移調するとしんどいところがいっぱい出てきます。ホ短調が一番いいところを使っているわけです。でも弾きにくい。それがこのスコルダトゥーラで解決されるのか。答えは、たぶんイエス!リンドべルイがやってるのでもうとっくに答えは出てるんですけどね。

自分で「追試験」をやってみた結果では、とりあえずプレリュードだけですが、1か所だけ11コースの楽器では不可能なところがありました。13小節目冒頭のバスが、音域的には11コース内の音ですが、レ♯の開放弦がないと弾けません。でもこれは13コースの楽器を使えば簡単に解決できます。つまり12か13コースをレ♯にしておけばいいのです。この曲はドより下の音は出てきませんから。

ジグの冒頭の難所(何調で弾いてもアクロバットみたいなことをしないと弾けないところです)もこの調弦で実用的に弾けるのはすでに確認しました。もちろん簡単な曲ではないのでそれ相応の技術は必要ですが、ライブでの演奏も行けそう!?






極寒散歩

2013年12月28日 21時06分09秒 | 日々のこと
今日の散歩は少し暖かかったです。暖かいといってもマイナス2度くらいですが。(笑)昨日散歩した時はマイナス14度の世界でしたからかなりマシです。マイナス14度だと道が完全に凍てついて白っぽくなっていました。もちろんどれだけ太陽が当たっても雪は全く融けません。今日は道が少し黒っぽいです。



昨年もこちらに来ていましたが、昨年は例年の寒さだったらしく、雪にはおおわれていませんでした。庭にはカモが毎朝来ていましたが、今年は雪に覆われているせいか、カモは全然来ません。

まぁあまり外に出ないで家の中で孫の守りをしているのが正しいようで。



孫が寝ている間を見計らって、リュートを練習したり楽譜を書いています。去年も同じようなことをしていましたが、雑用がとても少ないというかほとんどないので結構はかどります。今年はバッハのホ短調組曲BWV996(ギターの世界ではいまだにリュート組曲1番と言っているアレです)をスコルダトゥーラ(変調弦)でタブにしています。

スコルダトゥーラといっても独自にこねくり回したのではなく、歴史的に使用例があるものを使うべきというのが私の考えです。実はいいのがあります。五線譜でさっと弾いてみた感じでは、この曲の難所はなんとか弾けます。(後半部は明日に続く)