リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

またバーゼルの風(2)

2005年11月19日 23時07分51秒 | 音楽系
やっとバーゼルに到着しました。名古屋・シンガポール6時間,チャンギ空港の待ち時間8時間,シンガポール・チューリヒ13時間,チューリヒ・バーゼル1時間の合計28時間です。ふぅー。毎度同じルートで行っているとは言え,やはりくたびれます。
列車がバーゼルSBB駅に到着したとき,不思議と懐かしいという感じがしませんでした。何か,どっか長い旅をしていて久しぶりにバーゼルに戻ってきたような・・・そのくらいさりげなくしかし親密にバーゼルは私を迎え入れてくれました。単なる私の思い過ごしかもしれませんが。(笑)

いつもと変わらぬ近所の景色ですが,よく見るとやはり4ヶ月たっているんですねぇ,ちょこちょこと変わっていることがありました。例によって遅々として進んでいるようには見えなかった駅の改修工事が一気に進んだ感じ。(笑)
家の(って本当はもう「家の」じゃないんですが)前のネコおじさんの隣の家,きれいにペイントされていました。鳩の糞だらけだった屋根瓦もきれいに新しいのに取り替えられていました。

下宿のピンポンを押すと,クレアが出てきてくれました。大家さんからは11時に来ると伝えられていたらしく,早い時間(8時過ぎ)に着いたので驚いていました。大家さんには空港に7時過ぎに着くと言ったので,それを取り違えたのかな。2階の部屋でクレアとアナがお茶を入れてくれて,しばし歓談。そのあとシャワーして近所をブラブラ。夕方はレオンハルト教会の金曜オルガンコンサートに行きました。今日の演奏はあのブルージュのコンクールで優勝したベンジャミンです。教会には日本人のWさんも聴きに来ていました。ベンジャミンの演奏はさすがでした。日本に戻る直前にも一度演奏を聴きましたが,今日のドイツものを中心としたプログラム(バッハ,ラインケン,ブックステフーデ)も素晴らしかったです。このレベルの演奏が無料でしかも家から歩いていけるところで聴けるのはやはりバーゼルならではです。

またバーゼルの風(1)

2005年11月18日 13時12分12秒 | 音楽系
たった今バーゼルから家にたどり着きました。帰りのシンガポール航空はホントくたびれます。シンガポールのトランジットが何と18時間です。
まだ時差ぼけ真っ最中ですが,11月10日からの分をお届けします。
では,どうぞ。

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朝早くおきまして,マイカルの空港バス乗り場に。マイカルの駐車場に車を止めてそこから空港行きバスに乗れます。これは便利なもんです。海外に行くときは荷物が多いので,「ラスト1マイル」が滅茶苦茶大変です。まぁ,今回は比較的に持つが少ないんですけど,この方法を取ることにしました。駐車場代が1000円取られますが,圧倒的に楽なのでまぁいいか。

例の足乗せ,早速使ってみました。中に雑誌などを丸めて芯にした方がよい,とマニュアルにありましたので,先週買った週刊アスキーをその大役にあてることにしました。で,いざ足を乗せてみたんですが,なんか元々ついているフットレストと同じくらいの高さしか行きません。キミィ~,だめじゃーん。それにいくら週刊アスキーを芯にしたところで,鉄芯でも入れない限り(ま,竹筒でもいいでしょうが)くにゃっとなってしまいます。
いろいろやってみましたが,どうもこれは足を乗せるのにはあまり向いていないということがわかりました。うーん,設計ミスか・・・と思いましたが,腿とか関節の部分を乗せてみたら結構快適だと言うことが分かりました。そうならそうとマニュアルに書いて置いてくれたらいいのに。ということでまず乗り換え地シンガポールまでそれなりに快適に(ファーストクラス並とは行きませんが)使うことが出来ました。

そうこうしているうちにシンガポールのチャンギ空港の滑走路が見えるところまで下降してきまして,やっとついたなと思った瞬間,飛行機は急に機首を上げて上昇し始めました。ひょっとして失速か!!と思いましたが,1000メートルくらいまで上昇したとき機長から説明があって,空港付近の気流状態が急に悪くなったので管制塔の指示で上空待機とのこと。なら,早く言ってくればいいのに。どきっとしました。

チャンギ空港では7時間くらい待ち時間があります。これがシンガポール航空利用時の問題点なのですが,チャンギ空港は大変設備が行き届いた空港で,トランジット・ホテルもあるしインターネットも無料,電源付きの(もちろん電気はただ)PCテーブルまであります。もちろん食事するところや無料休憩場は至る所にあります。同じアジアの格安航空券でもマレーシア航空だとこうはいきません。トランジットのクアラルンプール空港はだだっ広いだけで何もありません。今はその無料PCテーブルで持ってきたノートパソコンを開いてこれを書いています。あと,シンガポール航空にしたのはマイレッジが欲しいからです。確か今回もシンガポール航空を使うと,ヨーロッパ往復がタダになるはずなんで,もう選択の余地はありません。しかし,まだ5時間以上あります。どうやって時間を過ごそうかな。(笑)

明日からまたバーゼル

2005年11月09日 23時53分01秒 | 日々のこと
明日はバーゼルに出発です。
ネットショップに頼んであった足のせは無事届きましたが,圧縮袋はついに届きませんでした。で,仕方がないので近所のアピタで買いました。ネットショップのと較べるとえらい高価でしたが,まぁ仕方ないですね。使ってみましたら,ほんとにぺったんこになるので驚きました。でもユニクロのダウンジャケットぺったんこのままだったらどうしよう・・・バーゼルはすでに寒いから。

バーゼルでは前の下宿にまた転がり込みます。家主のドヨンさんに連絡を取りましたら,私が滞在する期間は,バーゼルにはいなくてイタリアに行っているとのこと。バーゼルは寒くなってきて,心臓にこたえるので暖かいところにいくそうです。ですので,部屋が空くのでそれを使って下さいということでした。ラッキーですね。私が使っていた部屋は確かもう誰か入っているらしいので,ホテルに滞在しなければならないと思っていましたから。

スコラの知り合いによるとまだペータース広場で秋のメッセをやっているそうです。ひょっとしたら今週で最後くらいだったかな。日本はやっと秋が深まってきたという感じですが,バーゼルは桑名的にはもう冬です。一昨年は確か今頃雪が降りましたから。

という訳で,このブログの更新はしばらくお休みです。(バーゼルにネットカフェはありますが,たぶん日本語環境はないと思いますので)18日の夜頃に再会するつもりです。「またバーゼルの風」をお届けしますのでお楽しみに。

ネットショッピング

2005年11月06日 23時08分57秒 | 日々のこと
今週の金曜日,10日からまた短期間ですけどバーゼルに戻ります。(18日に帰ってきます)一番の目的はあと一台楽器を今村さんのところにあずけてあるので,それを取りに行くことです。

週間アスキーを見ていましたら,「旅行・出張トラベルグッズ」という特集がありました。ほー,グッドタイミング,何かいいのないかな,なんて思って見ていましたら,ありましたねぇ,いいのが。(笑)

まずトラベル用圧縮袋でわずか105円です。ネット店の100円ショップ,ひゃくえもん楽天店で売っています。この手のものはもうとっくに使ってらっしゃる方も多いのでは思います。今バーゼルは日本で言う冬の状態ですので,分厚いコートが必要です。確か2年前は今頃初雪が降りました。でもさすがにそんな分厚いのを来て空港に行くわけには行かないので,バッグがかさばるでイヤだなぁと思っていました。さっそくこれはゲットです。3つも買ってしまいましたが送料が高かったので,ひょっとして近所で同様のモノを買った方が安かったかも。(笑)

次はフットハンガーです。これはヤフーの旅の雑貨店にあります。足元のせまいエコノミークラスしか乗れない私は,エコノミー症候群を避けるため,足を食事テーブルの付け根あたりに足の親指だけひっかけて,できるだけ足を高くするように心掛けています。こうすると足がすごく楽になるのはいいのですが,何せひっかけているのが親指だけですので,いくら強靱な親指を誇る私でも途中で疲れてきて足を下に置かざるをえません。でもこのフットハンガーは「飛行機内の前席ランチテーブルに取付け、足を休めるラクラクフットです。機内での足のむくみを解消します」と説明にあるように,私がいつもやっていることを強力にサポートしてくれそうです。これはすばらしい!即ゲットです。

10日出発ですので,多分届くとは思いますが若干心配ではあります。もし届かなかったらお笑いですが・・・

近所でコンサート

2005年11月05日 23時47分13秒 | ローカルネタ
今日はめずらしく近所で古楽の演奏会がありました。うちのすぐ近くにあるカトリック教会で,リコーダーの花岡和生さんの演奏会です。花岡さんとはもう10年くらいあっていませんので,のこのこ出かけて行きました。

このカトリック教会のすぐ隣には八幡神社,立正佼成会の教会もあり,まさに桑名市では最も聖なる場所です。(たぶん)20年以上前にここでギターの酒井康雄さんのコンサートがありましたが,クラシックの演奏会ってひょっとしてそれ以来でしょうか。

会場まで歩いて行けるというのはいいことですね。ものの5分も歩かないうちについてしまいました。

プログラムは全て無伴奏曲で,ブラウン,テレマン,クヴァンツ,ブラヴェの作品でした。コンサートの中での解説で,ドレスデンのヴァイスの曲がなんたらかんたらとおっしゃっていましたので,打ち上げのときに詳しく話しを聞こうと思っていましたが,うっかり聞き忘れてしまいました。たぶんヴァイスのニ短調クーラントをクヴァンツが無伴奏ソロ用に編曲した話だとは思いますが・・・

会場は残響がたっぷりでリコーダーソロにはぴったりの場所で,無伴奏の世界をたっぷり楽しむことができました。それにしても,こんな近くでいい場所があったんですね。というか,知ってはいましたが,貸してくれないと思っていたんです。あとで担当の方に聞いたらコンサートに使えるそうです。最近桑名在住で古楽を演奏する人が何人か出てきたので,(三重県内ではダントツだと思います。たぶん)桑名古楽協会(笑)でも作って,みんなでここでコンサートをしようかな。

いいホール

2005年11月04日 23時01分12秒 | 音楽系
昨日のコンサート会場の,スイトピア音楽堂,なかなかいいホールでした。300席ちょっとで大きさも手頃だし音もよく響きました。終演後持っていったドイツ・テオルボをステージでちょっと弾いてみたんですが,すごくいい音でよく響きました。

この200から300席くらいのいいホールというのが名古屋市内にはないんですよね。名古屋の周辺部には実はいくつかありまして,この大垣のスイトピア音楽堂もそうですし,岐阜のクララザールなんかもほんとにすばらしいホールです。クララザールレベルだとヨーロッパでもそうはないレベルと言っていいと思います。

あと,碧南のエメラルドホール,これはたぶん400席以上あると思いますが,音が大変すばらしいです。四日市の第一楽器カイエンホールもまずまずです。これは確か200席くらいはあると思いますが,無理して200席にしてあるので,もう少し席数を減らしたら良かったと思います。ちょっと残念賞ですね。

名古屋周辺には小振りのいいホールがあるのに,市内だと電気文化会館が400席弱,熱田文化小劇場が400強,しらかわホールは700席なんですよね。何で,200席くらいでいいのがないんでしょ?(笑)

100席レベルだとジミアとかルンデがあるんですが,もう少し広いとなぁっておっしゃる方も多いのでは。もし市内の便利なところにその200から300席くらいの大きさのホールがあれば結構需要はあると思うんですけど,どなたか資産家の方,地域文化の発展に貢献していただけませんか。

幻の楽器,ラウテン・ヴェルク

2005年11月03日 23時20分12秒 | 音楽系
ラウテン・ヴェルクのコンサートが大垣でありました。ラウテン・ヴェルクというのは,バッハが使っていたと言われている幻の楽器です。チェンバロにガット弦を張りリュートの様な音が出るようにした楽器らしいのですが,現物は残っていません。バッハのリュート曲7曲のうち,何曲かは音域こそリュート的ですがテクスチャは明らかに鍵盤楽器です。

演奏者は山田貢先生。先生は20年くらい前に一度あったきりでしたが,3年くらい前先生のラウテン・ヴェルクに関する著書をヤマハで見つけ,ラウテン・ヴェルクの研究をされていることを知りました。バーゼルに居たときも折りを見つけてその本を読んでいまして,ぜひ音を聴いてみたいと思っていました。今年の5月に名古屋でコンサートをされたことを知っていましたが,残念ながら行けませんでしたので,今日のコンサートを楽しみにしていました。

私は以前岐阜県に住んでいましたので,大垣はすぐにいけるという観念が頭にこびりついていたためか,ちょっと油断していまして最初の10分ほど聴き損なってしまいました。大垣は桑名から結構遠いです。まるっと1時間5分もかかりました。

遅刻したお陰で,第1曲目のプレリュード,フーガ,アレグロBWV998は聴けませんでしたが,次のヴァイスからは聴くことができました。いつも弾いている曲が,鍵盤楽器それもリュートの様な音のラウテン・ヴェルクから聞こえてくるのはなんか変な感じがしました。聴いていて思ったのですが,ヴァイスの曲って鍵盤的な装飾をしても結構似合うものですね。惚れ直しましたよ。

コンサートが終わってから楽器を見ることが出来ましたが,いろんな素材の弦が張ってあったので調弦(鍵盤楽器では調律かな?)が大変だろうなと思いました。弦長は思った程は長くなく,一番長いところで,ドイツテオルボのバス弦くらいでした。リュートを模倣しているのだからそれはある意味で当然でしょうね。でも最低音部にはスチール線入りのガットが張られていました。先生に巻き弦を張ったらどうでしょうかと尋ねましたら,巻き弦の音があまり好みではないとのこと。

でも,その巻き弦って多分ピラミッド社のもののような気がするので,今度お会いしたときにキュルシュナーの巻き弦を持っていこうかと思っています。試してみる価値はあるような気がするんですけどね。

コンサート後の打ち上げにも厚かましくも押しかけてしまいましたが,先生からはいろいろな話をお伺いすることができました。リュート奏者として少しでも先生の研究のお役に立てたらうれしいですね。

ドイツ・テオルボ

2005年11月02日 20時16分22秒 | 音楽系
九州のリュート製作家,松尾淳さんにお願いしてありました,ドイツ・テオルボの修理が完了し,宅急便で送られてきました。このドイツ・テオルボはマティアス・デュルビー1979年作のもので,20年くらい前にリュート奏者の今村さんから譲ってもらいました。いまでも彼に会うと,「あれは売らなきゃよかった」なんて言ってますけどね。(笑)
大変明るい音が出る楽器で,モーリスの楽器とは全然正確が異なります。対照的な性格といってもいいかもしれません。モーリスの楽器を「雅」と表現したならば,デュルビーのは「華」と言えるかな。バロックリュートしてはかなりの間メインで使っていましたが,ここ何年かはネックが持ち上がってきたため弦高が高くなり弾きづらくなってきていました。

去年の9月に一時帰国して,久しぶりに弦を張ってみましたら,スワンネックの途中の継ぎがはがれてきました。これはまずいと思いすぐに弦を緩めまして,すぐ松尾さんに修理を依頼しました。この際だから弦高も下げてもらおうと思いましたので,作業は相当大がかりなものになりそうでした。ネックはたぶん作り替えた方がいいだろうし,弦高を下げるためには表面板を開ける必要もあるでしょう。普通弦高の調節はまずネックの指盤を削るのですが,デュルビーの楽器は指盤が薄すぎて削る余地がありません。ということで表面板を開けて,リブの上端を削り,高さを調整しながらまた表面板をくっつけるという,製作者泣かせの作業をしなければなりません。松尾さんとはネックも作り替えることも検討しましたが,結局彼にお任せにしました。

松尾さんにはスワンネックの部分の新調・交換してもらい,また弦高を12フレット位置で4ミリにしてもらいました。弦高に関しては前は7ミリ!ありましたから驚異的に狭くなったわけです。これはやりぞこなうと弦がびびりまくりになりますから,よくぞここまでやったって感じです。3ミリというのはたぶん物理的に不可能でしょうから。お陰で格段に弾きやすくなりました。すっぽりすげ替えたネックも全く違和感ありませんし,こんな面倒な修理を引き受けて下さり,いい仕事をして頂いた松尾さんに感謝です。

あ,この際に超重量級のケースをラソオマケースに替えまして,ずいぶんコンパクトかつ軽量になりました。