えぬ日和

日々雑記。第二、第四土曜更新を守っているつもり。コラムを書き散らしています。

祭りの五日:知らない歌に

2010年02月27日 | 雑記
フラフラとビュッフェのにおいに誘われて、舞浜はシェラトンホテルまで
ごはんを食べに行ってまいりました。
シェラトンの一階、結婚式用のチャペルとお庭を前にして席につくと、
なんだかジャカジャカしたBGMがステレオを超越して聞こえてきました。
耳をそばだてることもなく、陽気に叩くボンゴに合わせて聞こえてきたのは
『キサス・キサス・キサス』のナンバーでした。

スペイン語で「多分、多分、多分」という意味です。
一生懸命な男の人に、いつも返事が「多分」な女の人をうたった歌です。
ぴったり息の合った「キサス・キサス・キサス」を聴かせてもらいました。

この歌、ナット・コールもスペイン語で歌っているのが有名で、私もこちらを
聞いていたのですが、こんな歌も彼は歌っています。

『GET OUT AND GET UNDER THE MOON』

第二次大戦前夜のアメリカでひそかに信仰されていた十五夜祭りを讃える歌です。嘘です。
演奏も歌もナット・コールのものは星がつま先で飛び跳ねてゆくようにはずんでいて
たいそう可愛らしいのですが、これをさらに日本語に訳した題がまたよいのです。

『月光値千金』

蘇軾をひらめいた瞬間の訳者のガッツポーズが目に見えるようです。
高校の古文の教科書で見覚えのある方もいらっしゃると思いますが、「春夜」という詩の
「春宵一刻値千金 花有清香月有陰」
この冒頭から「値千金」を、春の宵の月下から「月光」をいただいてつくりあげたのが
『月光値千金』の一曲です。1969年に日本でリリースされました。これで単に好きな曲を
紹介しただけだと過去の私が怒り出しますが、長々と書いたのもまたこれが吉田日出子の
当たり曲の一つだからです。
彼女のために(劇のために、でもどっちでもよいのですが)訳しおろされた歌詞は



月白く 輝き 青空高く
梢の あおいを 我に 寄せて
寂しそう その人 心に消えて
楽しく ときめく 胸の 思い

OH! OH! あなたと私は
我が心に かたる
うるわしの 夜よ

青空に輝く 月の光は 楽しき 思いを 我に寄せる 

♪(聞き書きなので一部あやふやです……)

「青空」は聞き間違いじゃなく、確かにこう歌っています。
雲ひとつ無い真っ青な空色ではなく、空気が思い切り透明な夏の夜空、明かりの無い
星空をきっと見上げると、夜の黒の底に沈む紺色を見つめることができます。
月が白く明るければ、よりいっそう暗い青が光り輝いて、手足が青くなる時間、
澄んだ夜の間を歩く涼しさを、吉田日出子は歌います。
でも、歌われるのは暗いジャズクラブの中。それでもスポットライトを月のように浴びて、
余貴美子とチャイナドレスに身をつつみ、半月のような扇子のはじを両手で持って
斜めに顔を隠し、歌が始まると扇子がすーっと脇に下がって華やかな顔がマイクに
向かいました。丸くて愛らしい笑顔が白歯をちらりと見せて歌いだします。

やっぱり画面の前でぽーっとなってしまいました。
声も顔も色っぽいのに、配役のせいかもしれませんが可愛げがものすごくて反則でした。

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