90年代だったでしょうか、通勤路の近くに新しい書店ができ、しばしば立ち寄るようになりました。店主はまだ若い人で、お店もきれいで、好感を持ちました。なんといっても、パソコン関係の棚が、魅力的でした。当時は、月刊アスキーやOh!FM-TOWNS、あるいは季刊Networkerなどの雑誌も購読しておりましたし、MS-DOSやパソコン通信、あるいは市販ソフトウェアの活用書などが人気があるらしく充実しており、単価は安くなかったにもかかわらず、ずいぶん購入しました。たしか、奥村晴彦さんの『LaTeX美文書作成入門』の初版第1刷を見つけて購入し、FM-TOWNSで高橋忠志版 TeX/LaTeX を使い始めたのも、この頃、この店がきっかけです。世代が近いことをいいことに、店主とよく話をしました。コンピュータ関係の棚の品揃えが、魅力的ですね、と言うと、店主はその秘密を教えてくれました。
一般の書店は、書籍を一冊一冊注文して揃えるのではないのだそうです。取次店が、店舗の位置や周辺の事業所の種類、客層などを想定して、それぞれ何種類かのセットを用意しており、店側は、そのセットを選択する形で書籍の品揃えを決めるのだそうです。そのお店は、いわば松竹梅のうち「竹」を選んでいるのだ、とのことでした。言われてみれば、さほど遠くない場所に工業団地があるためか、技術系の客も多いのだそうで、単価の高いコンピュータ関係書籍は、旅行雑誌とともに、当時の代表的な売れ筋だったようです。
たしかに、MS-DOS から Windows3.1/95/98 と移行する時期、ナツメ社の「ハンディマニュアル」シリーズが全部揃い、「一太郎」「Lotus1-2-3」「Word/Excel」「InternetExplorer」「Netscape」などの解説書に加えて「Windows」や「Mac」、はては「TheUnixSuperText」など「Unix」まで網羅するさまは圧倒的で、小さな書店とは思えない棚の魅力に、つい足はその店に向かうのでした。
ところが、森首相が「アイテー」を政策に打ち出すあたりの時期に、転勤で通勤経路が変わり、しばらく足が遠のいた時期がありました。この頃、郊外型の大規模書店が相次いで進出しており、客層も変わってしまったのでしょうか、しばらくぶりに顔を出したお店の棚は、すっかり様変わりしておりました。「500円でできる○○」などの安直なシリーズ本が幅を利かせ、かつて魅力的だった、中級以上のコンピュータ書籍がすっかり姿を消し、ああ、松竹梅の「梅」になったんだな、と感じました。
CDショップも同じです。クラシックコーナーに、「○○○100曲」のようなオムニバスものが幅をきかせているお店は、残念ながら魅力を感じません。ベーシックな1000円盤などに加えて、きちんと新譜がディスプレイされているお店は、店員さんの見識を感じます。そして、そういう知識を持った店員をきちんと遇している経営者の力も、感じます。地方都市での経営環境は決して楽ではないと思いますが、棚の魅力を維持しようとする努力に、一人の客として応えてあげたいものだと思います。
一般の書店は、書籍を一冊一冊注文して揃えるのではないのだそうです。取次店が、店舗の位置や周辺の事業所の種類、客層などを想定して、それぞれ何種類かのセットを用意しており、店側は、そのセットを選択する形で書籍の品揃えを決めるのだそうです。そのお店は、いわば松竹梅のうち「竹」を選んでいるのだ、とのことでした。言われてみれば、さほど遠くない場所に工業団地があるためか、技術系の客も多いのだそうで、単価の高いコンピュータ関係書籍は、旅行雑誌とともに、当時の代表的な売れ筋だったようです。
たしかに、MS-DOS から Windows3.1/95/98 と移行する時期、ナツメ社の「ハンディマニュアル」シリーズが全部揃い、「一太郎」「Lotus1-2-3」「Word/Excel」「InternetExplorer」「Netscape」などの解説書に加えて「Windows」や「Mac」、はては「TheUnixSuperText」など「Unix」まで網羅するさまは圧倒的で、小さな書店とは思えない棚の魅力に、つい足はその店に向かうのでした。
ところが、森首相が「アイテー」を政策に打ち出すあたりの時期に、転勤で通勤経路が変わり、しばらく足が遠のいた時期がありました。この頃、郊外型の大規模書店が相次いで進出しており、客層も変わってしまったのでしょうか、しばらくぶりに顔を出したお店の棚は、すっかり様変わりしておりました。「500円でできる○○」などの安直なシリーズ本が幅を利かせ、かつて魅力的だった、中級以上のコンピュータ書籍がすっかり姿を消し、ああ、松竹梅の「梅」になったんだな、と感じました。
CDショップも同じです。クラシックコーナーに、「○○○100曲」のようなオムニバスものが幅をきかせているお店は、残念ながら魅力を感じません。ベーシックな1000円盤などに加えて、きちんと新譜がディスプレイされているお店は、店員さんの見識を感じます。そして、そういう知識を持った店員をきちんと遇している経営者の力も、感じます。地方都市での経営環境は決して楽ではないと思いますが、棚の魅力を維持しようとする努力に、一人の客として応えてあげたいものだと思います。