「下水道施設の運営におけるPPP/PFIの活用に関する検討会」を傍聴しました。
・水ビジネスという言葉が聞こえるようになってきたこと。
・それ以前に、東京都が、自治体の事務である水道事業を、東京都の水道事業に一本化しようとしてきていること。
・水道事業の民営化が松山市など導入され始めていること
・国家戦略特区の有識者等ヒアリングにおける提案に「水道事業に関する民間参入の推進(公共施設等運営権者が事業認可を受ける際の各種手続の整備、地方自治体と同一水準の支援策の付与、官民の役割分担など) 」という項目があったこと。
・単なる民営化ではなく、PPP/PFIという負担の先送りという手法を使おうとしていること。
などに関心があったからです。
配布された資料は、要領よくまとめられており、下水道施設運営における問題意識への理解が深まりました。
しかし、この問題意識が、自治体財政上の問題と下水道事業を一ビジネスという側面が極端に大きく、これまで、下水道事業を行政が、しかも企業会計により行ってきたことの意義や、民営化による影響評価が不十分であることに違和感を覚えました。
検討会は、すでに5回開催された6回目で、しかも、過去の議事録を読み込んでいない中での傍聴でしたが、この違和感は、私が10年間大田区議会において審議に関ってきた民営化や民間委託、あるいは、国がここにきて、加速度的に進めようとしているTPPや国家戦略特区における規制緩和の根底に流れる違和感に通じるものがありました。
一方で、総務省は、平成19年8月24日に、行政機関が行う政策の評価に関する法律に基づき、「規制の事前評価の実施に関するガイドライン」を作成しています。
総務省が、作成したこの行政評価は、私が傍聴した「下水道施設の運営におけるPPP/PFIの活用に関する検討会」や、私が10年間大田区議会において審議に関ってきた民営化や民間委託、あるいは、国がここにきて、加速度的に進めようとしているTPPや国家戦略特区における規制緩和の根底に流れる違和感に、こたえを与えてくれるものです。
先日、~TPP・国家戦略特区にみる~規制緩和と政治の役割について報告しましたが、この間行われてきた一連の民営化や規制緩和に欠けていたのも、この「規制の事前評価の実施に関するガイドライン」の考え方です。
このガイドラインは、国あるいは自治体が公権力により国民生活に制限をかけることの根本的な意義に言及し、それを評価することで、規制の厳しくし、あるいは緩和することによる国民生活への影響を見えるようにして合意形成をはかろうとしています。
規制を、
社会秩序の維持、生命の安全、環境の保全、消費者の保護等の行政目的のため、国民の権利や自由を制限し、又は国民に義務を課すもの
と位置づけ
規制の事前評価を行い、その結果を公表することによって
規制の質の向上を図るとともに、利害関係者のみならず、規制について広く国民の理解を得ること
を目的としています。
実際には、
規制によって発生する効果や負担を予測し、それを評価することで、
規制を厳しくしたり、緩和したりすることへの影響をデータや情報が収集することで見えるようにすることが求められています。
しかし、一方でこのガイドラインは、非常に重要な視点ですが、実際の評価は、この主旨にかなったものなっているでしょうか。
たとえば、国において、公共施設運営にあたり、民間資金を活用するPFI方式などを拡大させるための評価が行われています。
しかし、この評価もPFI等を導入することによる民間事業規模の拡大(5兆円程度から10兆円規模へ)が前提となっているため、負担の先送りによる財政への影響や、民間とのリスク分担の考え方、そもそも、民間資金導入による経営効率化が達成できるか等の視点での評価はみられず、PFI導入によるサービスの向上と公的施設運営による公平性、公共性の確保などの検討も行われていません。
PFIの課題に言及すると長くなってしまいますが、これまでの大田区の事例からは、必ずしもPFIを採用すれば、公共施設の整備運営は、経費が削減され、住民サービスが向上するとは言い難い状況でした。⇒伊豆高原学園整備運営など
加速度的に進む規制制度の緩和は、言ってみれば、行政が、自身のこれまでの役割を否定する自己矛盾でもあります。
官僚批判を全て否定するつもりもありませんが、一方で、こうした「規制の評価」という極めてまともな制度を作れるのは、官僚の存在があるからこそです。
官業の民間開放によりマーケット拡大を狙う一連の動きは、公的分野の肥大化・硬直化につながるとともに、サービスの基本である公共性を損ないかねません。
長い間公が担ってきた意義を明確にするとともに、劣化した制度が、担い手を公から民にシフトすれば全て解決できるという短絡的な思考ではない議論が求められます。
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