株式会社が運営する認証保育所にこどもを通わせている方から、9月半ばに今年度末で廃園の通知があって困っていると連絡をいただきました。
これまでの認証保育所の廃園であれば、受け入れ枠の大きくなる3歳児のタイミングで期限に余裕をもって廃園してきましたが、今回の廃園は非常に唐突です。
(10月29日の記事ご参照)
待機児童数にカウントしないのに、認証保育所が廃園の時の入園先は自己責任の大田区 ご都合主義の待機児童対策
https://blog.goo.ne.jp/nasrie/e/4b8ee50d65fade23601f6eae04125856
その後、他自治体でも同様の廃園の予定があると知り、調査をしていて、問題の根底に、事業者のより大きな利益追求があることが見えてきました。
その事業者は都内で6園の廃園を予定していたそうですが、現時点でこの事業者は、4園の廃園を考えているようです。
新宿区 3園→2園
品川区 1園→0
豊島区 1園→1園
大田区 1園→1園
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4園
理由は経営が厳しいから。
品川区では、認可並みの保育士配置基準でしたが、正規を非正規にするなどして運営することが認められ、廃園をとどまったと聞きました。
保育士の低賃金を犠牲に、廃園が見送られたということです。
今回、私は、大田区だけでなく、東京都、新宿区、品川区、豊島区、のすべての自治体担当者とお話ししましたが、どなたも、急な廃園によるこどもの受け入れ先について心配していました。
一方、認証保育所の廃園には、自治体の意見書が必要で、自治体は、こどもたちの保育の受け入れ先の有無を重視して意見書を書くと聞きました。
だったら、こうした廃園を許さなければよいと思うのですが、一方で、こうした事例があることを教えていただきました。
突然の保育園の「閉園」 完全な「違法状態」でも止められない理由とは?
https://news.yahoo.co.jp/byline/konnoharuki/20201030-00205560/
認めていなくても事業者が強制的に保育を廃業してしまっている事例です。
まさか、私が今かかわっている事例で、このような強硬手段に出ることは無いと思いますが、
保育所事業者が賃貸借契約を破棄し、事業撤退されないか、心配している方もいました。
事業者が、保育で利益が出ないからやめたいと申し入れていることからも
社会保障の担い手として、何があってもこどもの保育を守り抜くという
自治体の姿勢と違うことは明らかで、心配です。
今回の大田区の急な廃園の事例で、保護者のみなさんは、認可保育園の
申し込みをして、それでも受け入れ先が見つからない場合には、
自分で受け入れ先を探せと事業者からは言われているようです。
受け入れ先を確保しなければ、大田区に意見書を書いてもらい廃園することが
できない事業者の言うこととは思えません。こういう事業者が認可保育園も
担っているとしたら、さらに心配です。
都内でも、保育園は、認可保育園への株式会社参入による定員増や
認証保育所の増設、幼稚園の預かり保育などで、待機児状況が
「緩和」されてきています。
そのため、利益率の低い認証保育所から、認可保育園への転園や
認証保育所の廃園が始まっています。
認証保育所の廃園問題は、営利企業に社会保障分野に参入させたことによる問題で
今回の関係自治体にとどまらず、今後広がる恐れもあります。
また、保育に限らない、福祉、教育、医療分野をだれが担うべきか、営利
企業に参入させて良いのか、根本的な問題が問われていると思います。
大田区の廃園してしまう認証保育施設というのは、業界最大手の法人が運営する雪が谷大塚の施設だと思います。
この施設のすぐ近くに、同じ法人が運営する認可保育園が昨年開園しました。
また、この法人が運営する大田区内の認証保育園2施設が、来年4月に認可施設へ移行する予定です。
「不採算なら閉める」…これはまさに事業の選択と集中になりますが、株主向けの経営計画にもそのものズバリが書かれています。
認可施設をつくる事を認め、認証を閉める事を容認、さらに既存の認証園を認可園に移行させる大田区の方針にはとても違和感を感じます。
社会福祉事業における法人都合の事業の組み換えを、自治体が容認している様に思ってしまいます。