昨年、定額減税の陰で【こども保険】ができました。
税で負担してきた児童手当等を、医療保険料に上乗せ徴収するしくみをつくったのです。
減税なしの上乗せ徴収ですから、実質の増税ですが、
増税と言わないどころか、こども保険の新設とさえ言わなかったのは、
国民の反感を買わず、政権を維持するためだったのでしょう。
不思議だったのは、マスコミや野党からも増税とも、こども保険新設とも、聞こえてこなかったことです。
こども保険の新設で、年金、医療、介護、子育てという、日本の主な社会保障が、社会保険の仕組みに組み込まれました。
今回のこども保険の創出で、
【1】多くの区民は医療保険料の負担が増え、
【2】被用者保険加入者は所得が減り、
【3】中小企業等が廃業する一方、
【4】自治体は、隠し財源を捻出できる
こんな風に、私は、みています。
税から、社会保険への移行を見ると、使えば使うほど、負担が増える仕組みですから、社会保障の市場経済化と言っても良いかもしれません。
ズーッと考えている、税と社会保険の違いや影響について、ご報告したいと思います。
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1.区民は社会保険料負担増=増税
こども保険ができたことで、私たちは、社会保険料負担総額が大きくなります。
税で負担した分、減税になるわけではありませんから、実質の増税です。
2.やとわれて働く人が所得を減らすリスク
社会保険加入者の大半は、組合健保や協会健保など、企業の被用者保険に加入しています。
被用者保険の場合、
一部、税金負担分はあるものの、それ以外の費用を、雇われて働く人と、雇う事業主が半々(労使折半)で保険料を負担しています。
一部の大企業などの業績は好調な一方で、中小企業等の倒産や廃業が後を絶ちません。
赤字になる健康保険組合も急増し、被保険者2700万人を抱える健保組合の5割を超す組合が存続の危機だという指摘もあります。
保険者が負担する社会保険料は、所得に料率をかけて算出するので、経営状態が良くない保険者(企業)や利益を減らしたくない保険者は、所得を減らすことで、負担すべき社会保険料を抑制するかもしれませんし、
3.企業廃業等のリスク
最悪の場合、負担に耐えられない企業は、廃業や倒産を余儀なくされるかもしれません。
4.大田区は、自由に使える34億円=隠し財産を確保
ところが、大田区は、税金で負担してきた子育て支援費を、社会保険料で負担することになるので、
令和10年度までの3年半で、約34億円も、
子育て支援に使ってきた税金を、浮かせることができます。
国が、新たにこども保険を作ったことで、大田区は、34億円も、自由に使える財源を手にするのです。
今回、何度も国の資料を読み直し、この制度で、34億円もの財源を大田区が捻出できることを
質問して引き出しましたが、知らなければ、区の隠し財源になっていたかもしれません。
大田区民の社会保障に使っていた34億円の税金が、激増する箱モノ等に使われることは無いでしょうか。
定額減税の陰でコッソリ決めた実質増税は
単なる負担増にとどまらない、
賃金の抑制や
企業の廃業や
自治体などの隠し財源確保
につながる、大きな問題だと思います。
そして、これは、
2000年の介護保険導入以降、私たちに起きてきたこと
でもあります。
それまで、税で負担してきた高齢福祉を医療保険料に上乗せ徴収したのが
介護保険です。
保険料の全国平均月額保険料は
導入の2000年に 2911円 が、
直近で2022年で6014円
2倍以上に増えています。
このほかに、私たちは、利用者負担を強いられています。
利用者負担の割合は、当初の7.7%が、現在は、7.4%。
一見、負担が減ったように見えますが、
上の図を見ると
利用総額が、3.6兆円から13.3兆円ですから、
利用者負担は、
3.6兆円×7.7%=2.77兆円
13.3兆円×7.4%=9.84兆円
利用者負担総額は
3.55倍に増えています。
日本の税負担率が低いから増税すべきと言ったのは、矢野康治元財務次官ですが、社会保険料も本人負担も無いデンマーク等と単純に比較するのはおかしいと思います。
介護保険にかかる費用のうち、税金で負担しているのは、全体の半分に過ぎず、残りは、私たちの医療保険料で賄い、2~3割の自己負担です。
一人当たりの保険料負担はこの20年で2倍。利用者負担は、総額ですが、3.55倍です。
税から社会保険に変えることは、
こうした、税負担率にも、国民負担率にも出てこない、隠れた数字があって、
誰かさんに都合がいいから、ということも言えると思います。